2022年5月に市民に開放された韓国の旧・大統領府 ソウル都心部の古宮「景福宮(キョンボックン)」の北側に位置する韓国の大統領官邸「青瓦台(チョンワデ)」。コバルトブルーの瓦屋根が印象的な建物です。大韓民国の成立後、初代大統領・李承晩(イ・スンマン)が「景武台(キョンムデ)」と命名したのち、1960年に青瓦台へと改称されました。1968年に朝鮮民主主義人民共和国(通称:北朝鮮)の特殊部隊がソウルに入り、青瓦台の裏山「北岳山(プガッサン)」にて銃撃戦の末、侵入を阻止した「青瓦台襲撃未遂事件」以降、北岳山・青瓦台一帯の警備が強化。その後、2017年には周辺道路が24時間通行できるなど段階的に警備が緩和され、2022年5月、大統領府の龍山(ヨンサン)移転を受け、「青瓦台」は「旧・大統領府」として一般市民に開放されました。
青瓦台とは
「青瓦台(せいがだい)」は、大韓民国が成立した1948年に韓国の大統領府として建てられた政府機関の建物で、
歴代大統領が利用した執務室、官邸や国賓を招き入れる迎賓館などが敷地内にあります。
韓国語では「청와대」と書いて「チョンワデ」と発音し、青色の瓦屋根の建物という意味から、欧米のメディアではアメリカのホワイトハウスに倣って英語で「ブルーハウス」と呼ばれています。
青瓦台の歴史
ソウルを代表する観光名所の古宮「
景福宮(キョンボックン)」のすぐ北側に位置している「青瓦台」。もともとこの敷地は、朝鮮時代に「景福宮」の離宮があった場所で、高官たちが山の麓の自然豊かな場所で風流を楽しんだと伝えられています。
日本の植民地時代になると、景福宮など市内中心部が見下ろせる高台である立地を活かして、朝鮮総督府の総督官邸が建てられました。
本館入口
大韓民国成立後、李承晩(イ・スンマン)初代大統領が、それまでの総督官邸を「景武台(キョンムデ)」という名称に変えて大統領執務室として使用を開始。
第4代・尹潽善(ユン・ボソン)大統領の時代に「青瓦台」へと名称だけが変わり、 現在の本館は、盧泰愚(ノ・テウ)大統領の時代の1991年に完成したものです。
2017年には正門前の道路が開放
1968年、朴正熙(パク・ジョンヒ)大統領ら要人の暗殺を試みた北朝鮮の特殊部隊のスパイが、「青瓦台」の裏山「
北岳山(プガッサン)」まで侵入したものの、銃撃戦の末、これを撃退。
この事件は「青瓦台襲撃未遂事件」と呼ばれ、以降「青瓦台」の周辺や「北岳山」、「
仁王山(イナンサン)」などは軍事統制地域として民間人の立ち入りが禁止されるなど、厳重な警備体制が敷かれるようになりました。
その後、後方の山では登山できるようになったりと段階的に警備が緩和されていき、専用ホームページを通じた「青瓦台内部見学ツアー」もスタート。日本をはじめとした海外からの観光客にも好評を博しました。
また、2017年の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の時代に、「
青瓦台前の通り」が市民に開放され、正門前で写真が撮影できるようになったりもしました。
青瓦台開放(2022年5月から)
2022年5月に就任した尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、大統領選挙時から「青瓦台は帝王的な大統領のイメージを象徴するものであり、大統領はより市民に近い場所で働くべき」と、執務室の移転を主張。
移転の発表から実行まで約2か月の短期間のうちに行われ、十分な検討・準備が行われなかったという批判の声も少なくない中、大統領就任と同時に青瓦台が担った大統領府の機能は「
龍山(ヨンサン)公園」近くの国防省の建物へと移転。
「青瓦台」もすぐさま一般市民に開放され、大統領府としての役割が終わり「旧・大統領府」となりました。
こうして、2022年5月から一般開放された「青瓦台」の見学は、下記の韓国語ホームページを通じて、事前予約のうえ訪問できます。予約には、韓国の住民登録番号・外国人登録番号、韓国の電話番号などが必要で、韓国在住の日本国籍、その他の国籍の方も予約できます。
観覧時期・抽選など詳細は、専用ページにてご確認ください。
日本からの観光客の観覧について
予約サイトから観覧予約ができない外国人観光客、65歳以上の方、障がいをお持ちの方などは、現地の「正門(中央)」または「37門(東門・春秋門)」の総合案内にて当日受付できます。
なお、受付の際、身分証(パスポートまたは外国人登録証)が必要です。観覧の際は忘れずにご持参ください。
・9時、10時30分、12時、13時30分、15時、16時30分
・先着2,000名まで
※従来の「9時、13時30分(1日2回限定)、先着1,000名」から上記内容に変更となりました。
見学・見どころ
コネスト韓国地図
出入口は「正門」と「37門(東門・春秋門)」の2か所あり、2か所どちらからでも入場・退場できます。
全ての建物を見て回ると、1時間から1時間30分ほどかかり、本館や迎賓館などの建物内部の見学も含めると2時間程度の見学時間を見ておきましょう。敷地内の道は整備されていますが、一部の施設は、自然豊かなトレッキングコースにあるので、歩きやすい靴で訪問するのがおすすめです。
<観覧にあたっての注意事項>
・写真・動画は敷地内・館内で自由に撮影できますが、ドローン撮影は禁じられています。
・車いす、ベビーカーでも入場できますが、石畳・階段が多い場所は観覧できません。
・コインロッカー、手荷物を預けられる施設はありません。
・敷地内・館内は禁煙で、喫煙ブースはありません。
・カフェ・売店はありません。クレジットカード決済専用の自動販売機が敷地内にあります。
・屋外のベンチ等で、持参した軽食を食べられます。
・お手洗いは敷地内に簡易トイレがあります。
・記念品ショップはありません。敷地外の展示館「
青瓦台サランチェ」で購入できます。
・雨天時、館内の観覧ができない場合があり、台風・豪雨などの警報が発令されている場合は、観覧が中止となる場合があります。
入場・受付
正門
在住者で事前予約をした方は、スマートフォンの予約画面に表示されるコードをスキャンすれば入場でき、スマートフォンの予約画面を提示できない方は、身分証や携帯電話番号をスタッフに提示することで入場できます。
入場後は自由観覧となり、写真もすべての箇所で自由に撮影できますが、敷地内には広く、すべて回ると2時間程度の所要時間です。
スマートフォンで入場チェック
警備員との撮影も可
とても広い敷地
観覧にあたり、車いす、ベビーカーが借りられます。正門近くの「総合案内所」へお問い合わせください。
迎賓館(ヨンビングァン) ※1階が観覧可
迎賓館
迎賓館1階
1978年に完成した「迎賓館」は名前の通り、来賓を招待したり各国首脳との会談といった公式行事が行われてきた場所です。
建物全体は18本の石柱によって支えられています。また、迎賓館へと続く中央の道は君主が通る道という意味から「古宮」や「
朝鮮王陵」と同様に、「御道(オド)」と呼ばれています。
1階はロビーと公演空間、2階は食事会場となっており、1階が見学できます。遠くから眺めていても気品ある雰囲気が伝わってくるような建物です。
本館(ポングァン) ※1~2階が観覧可
本館
ニュースや報道番組でもお馴染みの建物が「青瓦台」の本館で、名称の由来にもなっている青い瓦は、約15万枚が使用され、すぐ後ろにそびえる「北岳山(プガッサン)」の自然と調和した、美しい青色を演出しています。
1991年に建てられた2階建ての建物で、1階には大統領夫人の執務室や会議室などが、2階には大統領の執務室があります。2階へとあがる階段など、館内はすべて見ごたえがあります。
※車椅子、ベビーカーを利用の方のみ専用エレベーターで1階と2階を行き来できます。近くのスタッフにお申し出ください。
2階へあがる階段
大統領執務室(2階)
接見室(2階)
大統領夫人の無窮花(ムグンファ)室(1階)
守宮址(スグント・旧・本館址)
記念碑
初代大統領らが使用してきた旧本館は1993年に撤去され、現在はその跡地に記念碑が残されています。本館と官邸を行き来する途中にあります。
大統領官邸
官邸入口の仁寿門(インスムン)
大統領とその家族が暮らしてきた大統領官邸で、本館からやや離れた坂道の上にあります。
建物全体が韓国の伝統家屋・
韓屋(ハノッ)の様式で、本館同様に青色の瓦屋根が特徴。内部は、韓屋特有のL字型の構造で、リビングスペースとレセプションスペースに分かれています。
見学の際は石畳になっている建物の外をぐるりと回り、窓の外から寝室、ドレスルーム、美容室などの内部を見学しながら進みます。
巨大な韓屋の建物
L字型になっているのも確認できる
常春斎(サンチュンジェ)
常春斎
木製の伝統家屋で、海外からの来客との接見や、非公式会議の場所などに使われた建物です。
緑地苑(ノッチウォン)
樹齢150年を超える松の木
1968年に造成された美しい景色を誇る庭園で、約120種類の木々に囲まれた静かな緑地苑は、歴代の大統領夫妻も頻繁に散策に訪れたりもしました。
特に、中央にある大きな松の木は、樹齢150年を超えるものだと伝えられている人気の撮影スポット。
防弾少年団(BTS)のメンバーが2020年に大統領の招待を受けて訪問した際も、この松の木で記念撮影されました。
春秋館(チュンチュグァン)
春秋館
春秋館前のヘリポートはテント型の休憩スポットに変身
「青瓦台」のプレスセンターだった建物で、1階に国内外の記者たちの記事送稿室とブリーフィングルーム、2階に大統領の記者会見場などがありました。
敷地内の文化財
また、「青瓦台」の敷地内には、約60の文化財が存在していると伝えられており、以下の3か所が観覧客の注目を集めています。「大統領 官邸」付近から石階段を登ったトレッキングコース内にあるので、スニーカーなど歩きやすい靴で。
「慶州(キョンジュ) 方形台座 石造如来坐像」
9世紀の統一新羅の時代に作られたとされる石像で、凛々しい表現から別名「美男仏」とも呼ばれています。日本の植民地時代に慶州の南山からソウルへと運ばれました。
「五雲亭(オウンジョン)」
朝鮮時代末期、興宣大院君が景福宮を再建する際にに建てられた東屋で、漢字で書かれた扁額は、初代大統領、李承晩の直筆です。
「枕流閣(チムニュガッ)」
「青瓦台」が建てられる以前から敷地内にあった由緒ある建物で、朝鮮時代の高官たちが風流を楽しんだ場所と伝えられています。
敷地内から見える景色
景福宮(手前)と、光化門広場(中央)と高層ビル群
敷地内からは「景福宮」はもちろん、ビジネス街・
光化門(クァンファムン)の高層ビル群、「
光化門広場」、遠くには「冠岳山(クァナッサン)」まで確認できます。
かつて「光化門広場」で開かれた
デモ・大規模集会なども「青瓦台」からよく見えていたことが伺い知れます。
「青瓦台」へのアクセス
01番循環バス
01番循環バス「ヘチ・ラッピングバージョン」
地下鉄を利用する場合、地下鉄3号線の景福宮駅または安国(アングッ)駅から訪問できますが、やや距離があります。
ソウル都心部を循環する「01番循環バス」に乗車すれば、各地下鉄駅や「
Nソウルタワー」も訪問でき、移動が便利です。
01番循環バス 路線図
・運行:6:30~23:00(7~13分間隔)
・経路(抜粋):
Nソウルタワー
→市庁駅(1・2号線)
→光化門駅(5号線)
→景福宮駅(3号線)
→青瓦台
→仁寺洞・安国駅(3号線)
→タプコル公園
→明洞聖堂
→忠武路駅(3・4号線)
→東大入口駅(3号線)
→Nソウルタワー
※週末は青瓦台前の道路が歩行者天国になるため、青瓦台停留所に停車後、折り返し運転を行い、三清洞方面へは行きません。
「青瓦台」周辺観光
景福宮の北門・神武門
「景福宮」の北門「神武門(シンムムン)」を出たすぐの所にあるので、「景福宮」とあわせて観覧できるほか、西側の噴水広場付近には、7名の側室の位牌を祀る「
七宮(チルグン)」や、展示館「
青瓦台サランチェ」があります。
広大な「青瓦台」の敷地内を2時間程度ひとまわりして退場したら、足は疲れ、きっと一休みしたくなることでしょう。
「青瓦台」の西側は、昔ながらの韓屋をリフォームしたレストランやカフェが多く残る
西村(ソチョン)と呼ばれるエリアで、人気の在来市場「
通仁市場(トンインシジャン)」などが。
西村エリアの通仁市場
三清洞メインストリート
東側へ行けば、銀杏並木が美しいおしゃれスポット・
三清洞(サムチョンドン)があり、同じくレストランやカフェで休憩して、十分に回復したら「
国立現代美術館」など近くの美術館に足を運んでみるのも良いでしょう。
西村観光または三清洞観光もセットで、観光コースの計画を立ててみてはいかがですか?
最終更新日:24.04.11
更新履歴を見る
・再撮影し、記事全体を更新しました(20240411)
・記事全体を更新しました(20230828)
・記事全体を更新しました(20230228)
・営業時間を更新しました(20221102)
・記事全体を更新しました(20220613)
(2021年以前の更新履歴を省略)
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