ユネスコ世界文化遺産にも指定された慶州一の観光名所 韓国南東部の歴史都市・慶州(キョンジュ)。「仏国寺(プルグッサ)」は、霊山として信仰を集めてきた山の西麓に広がる仏教寺院で、春は桜、秋は紅葉が美しく見事です。「三国遺事」によれば、751年に新羅時代の宰相、金大城(キム・デソン)が建立したというのが有力な創建説です。境内には新羅仏教芸術の傑作と称えられる7つの国宝が現存し、韓国の名勝・史跡第1号にも指定されているほか、1995年には「石窟庵(ソックラム)」とあわせて、ユネスコ世界文化遺産に登録されました。「仏国寺」への行き方は慶州市内中心部から循環している10番バスまたは11番バスに乗車して訪問するのが便利なアクセスです。
※動画提供:国家遺産振興院「国家遺産チャンネル(K-HERITAGE CHANNEL)」
新羅仏教芸術が一堂に会す、韓国随一の仏教古刹

紅葉の時期が特に美しい
街全体が「屋根のない博物館」と言われるほど、貴重な文化財が数多く残る
慶州(キョンジュ)。市内中心部にある「
慶州高速バスターミナル」から市内バスで約50分の郊外に位置する仏国寺(プルグッサ)は、霊山として信仰を集めてきた「吐含山(トハムサン)」西麓に広がる仏教寺院です。
創建年度には諸説がありますが、「三国遺事」という史料には751年に時の宰相、金大城(キム・デソン)が現世の両親のために建立したという記録が残っています。
仏国寺には新羅仏教芸術の傑作と称えられる7つもの国宝が現存。1995年には「
ユネスコ世界文化遺産」に登録され、韓国の名勝・史跡第1号にも指定されています。
統一新羅と仏教、そして仏国寺
「仏国寺」という名が表すように、その創建と深い関係にあるのが統一新羅時代に公認された仏教です。7世紀後半に高句麗・百済を滅ぼし朝鮮半島統一を果たした新羅。
誕生初期の統一新羅において、人々の心をまとめるために重要な役割を果たしたのが他ならぬ仏教でした。
仏国寺は釈迦の世界である「仏国土(彼岸)」、つまり「極楽浄土」を現世に具現したものとされ、最盛期には現在の10倍近い広さを誇っていたと言われています。
新羅仏教を代表する寺院であった「仏国寺」ですが、16世紀の文禄・慶長の役で木造建築の大部分が焼失。朝鮮時代後期には廃仏政策によって深刻な破損を被るなど、度々悲運に遭ってきました。その後、再建と補改修は繰り返され、1973年に復元工事が終了、現在に至っています。
石造建築物に込められた新羅人の念願
寺院を支える基壇、石橋に石塔・・・。「仏国寺」の壮麗な景観をさらに際立たせているのが、新羅仏教芸術の特徴でもある石造建築です。石という素材ゆえに、災禍では幸いにも火の手を免れ、中には創建当時の材料が残っているものもあります。
「仏国寺」を築き上げた新羅人は、石ひとつひとつに自らの救済、両親の冥福、国家と民族の安寧、釈迦の加護に対する切実な思いを込めたと言われています。そうした「念願」が結集した「仏国寺」は、まさに新羅人にとっての理想郷であり、仏教信仰の拠り所でもありました。
観覧ポイント
入口
入口は東の正門、西の裏門と2箇所あり、どちらからでも入ることができます。境内は広く自然豊か。「仏国寺」の本殿「大雄殿(テウンジョン)」内には2つの石塔があり、また入口にある石橋2つの計4点が国の国宝に指定されています。広大な寺院内を見学する際、まずは「大雄殿」を目指しましょう。

東の正門

天王門(チョナンムン)
青雲橋(チョンウンギョ)・白雲橋(ペグンギョ) ※国宝第23号

紫霞門と青雲橋・白雲橋
「大雄殿」に通じる「紫霞門(チャハムン)」前にある2段形式の階段が「青雲橋(チョンウンギョ)」(下段)と「白雲橋(ペグンギョ)」(上段)です。国宝に指定され、通行は禁止されています。
創建時より存在していたとされ、橋下の俗世と橋の上にある彼岸世界を繋ぐ役割を果たしています。上段16段、下段17段の計33段からなりますが、33という数字は仏教において「未だ釈迦の境地に達していない」ことを意味。橋は悟りへ達しようとする「希望」の象徴と伝えられています。
蓮華橋(ヨナギョ)・七宝橋(チルボギョ) ※国宝第22号

安養門と蓮華橋・七宝橋
極楽殿に通じる安養門(アニャンムン)前の階段が「蓮華橋(ヨナギョ)」(下段)と「七宝橋(チルボギョ)」(上段)です。極楽世界への悟りを開いた者だけが利用できる橋と伝えられ、優雅な印象を与えるアーチ型の橋、それらに施された繊細な彫刻は一見の価値があります。
同じく国宝に指定され、通行は禁止されています。
橋の下にはかつて池があったと言われ、その名残が現在も残っています。それが青雲橋・白雲橋の左側にある石垣から突き出た石樋。当時はここから下の池に水を流していたと考えられています。
現在4つの橋はすべて通行が禁止されているため、紫霞門・安養門より奥に進む場合は紫霞門右側にある坂道を利用します。

パンフレットでよく使われる構図
写真撮影をするならココ!
「青雲橋(チョンウンギョ)・白雲橋(ペグンギョ)」と、「蓮華橋(ヨナギョ)・七宝橋(チルボギョ)」の左側に移動すれば、観光パンフレットなどで良く使われている写真と同じ角度から記念写真を撮ることができるので、試してみましょう!
大雄殿(テウンジョン)
仏国寺の本殿、大雄殿では東側に多宝塔(国宝第20号)、西側に三層石塔(国宝第21号)という対照的な姿をした2つの塔を目にすることができます。
多宝塔 ※国宝第20号

多宝塔
四方に石段が設けられた多宝塔は、四角・八角・円形と形の違う塔身石をひとつの塔に盛り込むなど、韓国の石塔としては特殊なデザインが特徴。自由で斬新な発想が表れた作品と言えます。
寺の創建時に建てられたとみられる貴重な文化財ですが、日本植民地時代の1920年代中頃に日本によって解体・補修され、その過程で内部の遺物が行方不明になってしまいました。
また石段部分には4匹の石獅子がありましたが、同時代に3匹が奪われ、未だに見つかっていません。
三層石塔 ※国宝第21号

三層石塔
一方、「釈迦塔」とも呼ばれる三層石塔は、2段の基壇上に3層の塔身石を設けた典型的な新羅仏塔です。シンプルな造りですが、安定感と優雅さを兼ね備えた作品だと言えます。
こちらも寺の創建時に建てられたと推測されますが、1966年に盗掘被害に遭いました。
しかし同年、復元中の塔から仏舎利を納めていたとされる空間を発見。様々な遺物とともに世界最古レベルの木版印刷物「無垢浄光大陀羅尼経(国宝第126号)」が見つかりました。現在は国立慶州博物館に保管されています。
極楽殿(クンナッチョン)
「大雄殿」の隣には、極楽浄土を開いた阿弥陀如来を奉る「極楽殿」があります。木造建築の「極楽殿」は文禄・慶長の役で焼失し、1750年に再建されました。
現在目にできるのは、1925年にもう一度建て直された建物で、国宝第27号に指定されている「金銅阿弥陀如来坐像」が奉安されています。
毘盧殿(ピロジョン)
「大雄殿」の背後にある「無説殿(ムソルジョン、妙法蓮華経の講義が行われていた場所)」を過ぎ、さらに奥へ進むと「毘盧殿」が見えてきます。「毘盧殿」も寺の創建時に建立され、その後幾度となく修復が重ねられてきました。
現在の建物は、1973年に元々あった基壇と礎石を残す形で復元されたものです。こちらには8世紀頃の作品と見られる「毘盧舎那仏坐像(国宝第26号)」が奉安されています。
舎利塔 ※宝物61号
「毘盧殿」と合わせて見学したいのが、すぐ側にある保護壁に囲まれた「舎利塔(宝物61号)」です。高麗時代前期の作品と推測されますが、華やかで繊細な彫刻は統一新羅時代の様式を継承しています。1906年に日本に持ち出されましたが、1933年に返還され元々あった場所に安置されました。
行き方・アクセス
慶州観光は市内バスが各観光名所を通過するようになっているので便利です。新慶州(シンキョンジュ)駅から「仏国寺」までは700番バスで1本。また、慶州高速バスターミナルなど市内中心部からは同じく700番バスに加え、10番バス、11番バスが「仏国寺」まで行くので覚えておきましょう。
観覧後、市内中心部へ戻る際は、観光案内所近くにあるバス停を利用し、11番バスと700番バスが「
普門(ポムン)リゾート」を経て市内中心部へ。10番バスは仏国寺駅を経て市内中心部へと戻ることができます。タクシー乗り場もあります。また「仏国寺」前には食堂街やお土産店もあるので、時間があれば立ち寄ってみるのも良いでしょう。

駐車場前にあるバス停留所

駐車場内にある観光案内所
仏国寺から石窟庵へ

観光案内所前の停留所
「仏国寺」見学の際、合わせて訪問したいのが同じく世界文化遺産に指定されている「
石窟庵(ソックラム)」です。仏国寺前から石窟庵行きの12番バスが、1時間に1本程度運行していて、バスは山道をさらにあがっていきます。
仏国寺前の停留所は、観光案内所前(
位置)と旧 仏国寺チケット売り場前(
位置)の2箇所です。停留所に出発時間が記載されているので参考にしながら効率よく移動してみましょう。
韓国の仏教文化を肌で感じて
自然に囲まれた「仏国寺」は、紅葉が美しいことでも知られています。秋に慶州を訪れるなら、「仏国寺」で歴史の息吹を感じながら、しっとり紅葉狩りというのも風情がありそうです。
国宝指定の遺物や寺内の主要施設には日本語での説明文もあるので歴史好きの人は必見です。日本人にも馴染み深い仏教が、お隣・韓国ではどのような発展を遂げたのか、韓国随一の仏教古刹でその違いや共通点を探してみるのも面白いでしょう。
掲載日:21.11.13 最終更新日:23.05.04
更新履歴を見る
・観覧料を更新しました(20230504)
・営業時間を更新しました(20221028)
・営業時間を更新しました(20220629)
(2021年以前の更新履歴を省略)
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