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  • 友達が仕事休む時に出勤した私に「気付き」…新型コロナが韓国人を変えた

  • 社会・文化 2022年11月29日 12:02
  • ソウルに住むIT企業入社2年目の会社員のソさん(28)は週3~4回ピラテス講師に「変身」する。昨年1月から退社後や週末を利用して趣味活動を生業にした。数万ウォンの稼ぎになる座談会・討論会、謝恩品中古売買にも慣れている。ソさんはコロナ禍後に自身が変わったと話す。ソさんは「以前は残業をいつも避けていた。ワークライフバランスが重要だったためだ。その時間に人気の店に通ったり運動でストレスを解消する『消費型人間』だったが、いまは稼ぐことが優先だ」と話した。コロナ禍以降「危機に備えなければならないという考えを持つようになった」と変身の理由を説明した。

    ◇変わる職業観…「ワークライフバランス」よりお金

    世界を襲ったコロナ禍が韓国人の職業観にも変化を呼び起こしている。中央日報が単独入手した韓国職業能力研究院の「2022年韓国人の職業意識と職業倫理」調査結果にそうした傾向が現れていた。

    「もっと稼げるならば現在より労働時間を増やす意向があるか」という質問に「ある」と答えた割合は57.5%だった。2010~2018年の同じ調査では30%前後だった。専門家らは現代社会の職業観を代表する「ワークライフバランス」がコロナ禍と経済危機状況で「マネーファースト」に変わる傾向を見せているという分析を慎重に出している。職業能力研究院は1998年から4年ごとに韓国人の職業意識を調査しており、今年の調査には満15~69歳の国民4501人が参加した。

    ◇国民の半数以上「経済的補償あればもっと働く」

    小学校3年生と2年生の姉妹を育てるハンさん(44)は「小商工人など所得が低い人たちが経済的にさらに困窮する姿を見て危機感を覚えた。家族を守るにはもっと働いてでも資産を確保すべきとの思いが強くなった」とこの数年を振り返った。

    仕事の価値を問う質問では「金を稼ぐため」が5点満点の3.88点で最も高かった。「仕事そのものが好きで」という回答は2.99点、「自己実現のため」は3.47点だった。今回の研究の責任者である職業能力研究院のイ・ジヨン選任研究委員は「コロナ禍を経験し韓国社会が仕事の価値を認めるより経済的補償に対する欲求だけ大きくなったようで残念だ。学歴・職種別賃金格差など構造的な差別を解決して職業意識を高めるための全社会的な努力が必要な時期」と分析した。

    職業に関連したさまざまな要素のうち最も不満なこともお金と調査された。仕事の領域別満足度を尋ねたところ、対人関係が65.5点、労働時間が60.4点、作業環境が61点となったのに対し、経済的補償は57.3点で満足度が最も低かった。研究陣は「経済が良ければ仕事自体に対する肯定認識が高いが、厳しい時は否定認識が多い」と分析した。

    ◇暮らしの満足度・幸福度大きく落ちる

    韓国銀行によると、2020年の経済成長率はマイナス0.7%だったが、韓国経済がマイナス成長を記録したのは第2次オイルショックがあった1980年のマイナス1.6%と通貨危機に苦しめられた1998年のマイナス5.1%の2回だけだった。現実で体験した経済危機とマイナスで現れる経済成長率に国民の暮らしが厳しくなった形だ。

    お金は個人の安全を担保する手段と考えられている。イさん(52)は会社で在宅勤務が認められず地下鉄で通勤しながら経済力の重要性を悟ったと話した。彼は「コロナ禍で感染の恐怖を感じながらも生きるために働いた。だが経済的に余裕のある友達は仕事を休んでいた。その時『お金があってこそ健康も守れる』と思った」と話した。

    こうした現象を反映するように、暮らしに対する満足度と幸福度は調査開始以降で最低を記録した。2006年の66.8点から2010年が67.9点、2014年が73.5点と上昇したが、全般的な暮らしの満足度は2018年に72.2点に下がり、今年は60.0点まで大きく下落した。幸福度は2014年の73.9点、2018年の73.3点から今年は60.6点に落ちた。

    ◇「お金さえあれば仕事なくてもかまわない」という回答が増加

    経済状況の変化は仕事の価値に対する考えにも影響を及ぼした。暗号資産や株式投資で不労所得を得ることに対する羨望も大きくなったことがわかった。「働かないで金をもらうのは恥ずかしいこと」と考える人は2006年の3.70点(5点満点)から2022年には3.26点に減った。また「経済的余裕があるなら仕事をせず趣味生活をして過ごしたい」という人は同じ期間に3.64点から3.77点に増加した。漢城(ハンソン)大学のパク・ヨンボム名誉教授(経済学)は、「過去より職場の不安定性が大きくなり、不動産急騰で富を創出するのが難しくなった状況を反映したようだ。社会的危機が大きくなり限定された月給の中で財産増殖に向け一攫千金に没頭する人が多くなった」と分析した。

    2018年に導入された「週52時間勤務制」に対する個人の評価にも大きな変化が起きたという分析もある。成均館(ソンギュングァン)大学社会学科のユ・ホンジュン教授は「特に生産職の労働者は超過勤務の有無により収入に大きな違いが生じるが、週52時間で『時間はあるが金がない生活を送らなければならない』という不満が少なくなかった。週52時間勤務制は企業の規模や職種に合う方向に改編すべき」と話した。

    労働研究院のチャン・ホングン選任研究委員は「経済が成長し所得水準が高まるにつれ物質万能主義の価値観が弱まっていたが、コロナ禍を基点に180度変わった調査結果が出た」と話した。続けて「物質を優先視する傾向を弱めるには経済安定化が必要だ。このため良質の雇用創出が何より重要なだけに政府と国の役割が重要だ」と話した。職業能力研究院は来月1日に研究結果に基づいてセミナーを開催し、12月末に研究報告書をまとめる。

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