韓国HOTニュース
  • サウジ海外歌手初めてのスタジアム公演の主人公は防弾少年団

  • 芸能 2019年10月14日 11:08
  • ◆文化マーケティンググループ「マッシュルーム」キム・ヨンミ代表の防弾少年団「LOVE YOURSELF:SPEAK YOURSELF」サウジアラビア公演観覧記

    「僕は今 世界の扉の前にいて/ステージに上がる時に聞こえる歓声」

    11日午後7時30分(現地時間)、サウジアラビアの首都リヤドのキング・ファハド国際スタジアムで防弾少年団(BTS)の『Dionysus』が響くと、観客約3万人がいっせいに歓呼した。今年6月、韓国歌手として初めて英国ロンドン・ウェンブリーなどで公演した時と同じオープニング曲だったが、公演会場の雰囲気は明らかに違った。

    女性観客のうち70%以上が頭部にニカブやヒジャブ、チャドルなどを巻き、首から足首まで覆う黒のアバヤ姿だったからだ。アーミーボム(応援棒)を片手に握ったサウジアーミー(ファンクラブ)軍団との出会いは、BTSワールドツアー「LOVE YOURSELF:SPEAK YOURSELF」が海外歌手として初めてサウジのスタジアムに入ったことを実感させた。

    約2カ月間の長期休暇を終えてステージに上がったメンバーはエネルギーにあふれていた。「皆さんが遠方から私たちに送ってくれる愛の大きいことを知っている。今日は長い間BTSを心待ちにしてくれたアーミーのための祭り」というRMの挨拶の言葉と同時に本当の祭りがスタートした。『Boy With Luv』『FAKE LOVE』『IDOL』などアルバム別タイトル曲はもちろん、メンバー別のソロ曲が出てきても大合唱が続いた。

    普段とは違い、腹筋の露出などを自制し、『ぺップセ』など一部の振付けが純化されたりしたが、一緒に歌って踊るには全く支障がなかった。2年前だけでも公共場所で踊ることがダブー視されていたというのが信じられないほどだった。メンバーは「アへッブキ(愛している)」「アル・アブタル(最高)」「シュクラン(ありがとう)」などアラビア語でファンと疎通した。13日が誕生日のジミンのために、アラビア語で「サナヘルワ・ヤ・ガミール(誕生日おめでとう)」の歌を歌ったりもした。

    サウジアーミーといってもここを訪れるのが初めてという場合が大部分だった。この競技場は2017年9月に行われた建国記念日祭で初めて女性の入場を許可したことに続き、昨年1月から競技場内での女性のサッカー観覧が可能になったためだ。大学生のアリヤ・アル・ラシディさん(23)は「アラビア語は最も学ぶのが難しい言語の一つなのに、初めての公演でアラビア語の挨拶の言葉を準備してくれて、アラブアーミーへの特別なプレゼントになった」と話した。ノラ・アル・ラシディさん(25)は「家族はもちろん、いとこもみんなBTSファン」としながら「いつか韓国公演にもぜひ行ってみたい」と話した。

    現地ファンに対する細心の配慮はあちこちで際立っていた。一日5回、メッカに向かって祈るイスラム信徒のためのカーペットが用意され、4回目の礼拝時間である5時31分になると音響リハーサルも中断された。公演開始も礼拝時間に合わせて進められた。最後の7時1分の礼拝を終えて公演を楽しめるように7時30分から始めたのだ。韓国の女性スタッフもアバヤを着て現地文化を尊重する姿を示した。

    現地ファンの韓国語の実力も相当だった。BTSがきっかけで韓国語を学んだというペドゥール・アハメドさん(25)は「韓国の名前はチョ・アライで、韓国の年齢で26歳」と片言ながらもはっきりと話した。5万人余りがフォローしている「アラブRM」ツイッターを運営中のハーンさん(23)は「『Spring Day』の歌詞に感銘を受けてファンになった」とし「おかげで本当の自分の姿に見つけることができた」と話した。韓国人という理由だけであたたかい挨拶を交わして写真を撮ろうと提案するアラブファンに会い、こちらに来る前にあった漠然とした恐れは少しずつ消えていった。

    マハ・アル・ナセルさん(27)は「今回の公演がちゃんと行われるかどうかみんなかなり心配したが、順調に進んでよかった」としながら「中東地域に対する先入観が少しでも消えるように願う」と話した。公演会場で会ったファンはみな「アバヤはもう強制着用ではない。今日ここに着て来たのは自分が決めたこと」と話した。

    今回の公演は外国人観光客にとっても新たな歴史だった。やっとサウジ公演のチケット購入に成功しても心配が先だったのは事実だった。韓国からの直航便がないだけでなく、現地で発行された招待状がなければビザさえ発給されない場所だからだ。今年8月、ソウルで3日間「BTSインサイトフォーラム」を開催したプランナーであり、来年1月4~5日に英国で開かれる「BTSカンファレンス」基調演説者として必ず見たい公演だったが、越えなければならない山が少なくなかった。

    幸い、サウジ政府は先月27日から韓国など49カ国を対象に観光ビザの発行を決定した。BTS公演を半月後に控えて外国人観光客に門戸を大きく開いたのだ。初めて施行される電子ビザは申請から3分で発行され、不足していた現地情報はアーミー最大の武器である「連帯」を通じて解決した。「女一人では危険すぎる。行くな」という周囲の人々の反対を押し切って、ツイッターで悩みを共有した結果、私と同じような境遇に置かれたアーミーに出会うことができた。

    各種SNSを通じて「現地消息筋」となる、サウジで勤める韓国人アーミーまで12人が集まると、その後は一瀉千里に物事が進んだ。サウジに24年間暮らしている貿易業者のイム・テウォンさん(56)は「公演会場まで行く公共交通が全くなくて不便だろう」と言って30人乗りのリムジンバスを手配してファンに提供した。イムさんは「10年前だけでも韓国といって思い浮かぶイメージはサムスン携帯電話、現代自動車がすべてだったが、BTSのおかげで若者層の間のイメージが一層良くなった」と話した。

    2時間40分間余りにわたって繰り広げられた24曲の公演はあっという間に終わった。サウジ初の大型公演なので深刻な交通混雑が起きて、ホテルに戻るにも同じように時間がかかった。だが、イライラを表に出すような人は一人もおらずさまざまな言語の対話が行き来した。私たちがひとつになって「つながった」ことを実感できる、互いへの愛と尊重があふれた夜だった。26日から3日間、ソウル蚕室(チャムシル)オリンピック(五輪)主競技場で繰り広げられる今回のツアーの千秋楽公演ではどのような話を交わすことになるだろうか。「SPEAK YOURSELF」の瞬間に今から期待が高まるばかりだ。

  • BT21キャラクターマスクを着用した現地ファンと韓国の文化マーケティンググループ「マッシュルーム」のキム・ヨンミ代表(右)。[写真 Big Hitエンターテインメント]