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  • 韓国の引退後の暮らし、日本と比較すると…

  • 社会・文化 2019年06月10日 12:03
  • 最近、韓国では65歳以上の高齢人口が増え、経済が徐々に弱まっていくという危機意識が広まっている。高齢者が増えると同時に生産可能人口が速いペースで減少し、生産と消費は以前に及ばないという見方のためだ。韓国より高齢化が約15年ほど早く進んできた日本はどうだろうか。日本の過去15年が韓国が迎える今後15年の姿になり得るのだろうか。

    日本は1991年以降、長期的な不振を経験した。最近は人手不足になるほど就職事情が良くなったというが、ほとんど15年以上も2%前後の経済成長率が続いている。日本の長期的な不況に対する日本内部の解釈はさまざまだ。

    ◆高齢化が日本の「失われた20年」を招いたのか

    一方では人口変動、特に高齢人口の急増と生産可能人口の減少が「失われた20年」の根本的な原因だと主張する。経済成長率の低下は人口変動と重なって発生した。また、労働生産性も悪化したが、これは生産可能人口が減少したためであり、結局、日本の経済沈滞の原因は人口の高齢化という論理だ。

    別の一方では「失われた20年」と人口変動はそれほど関係がないと主張する。この主張は家計の金融資産が2000年代に入って増加したが、不動産貸出など負債比率は減少してきたことを根拠とする。「失われた」という表現も適切でないとみる。日本が先進国に到達する前の経済成長率を基準にすると2%は低い水準だが、他の先進国と比較すると2%は普遍的な水準であるからだ。

    マクロ経済学的な側面でこのように日本の過去20年に対する評価は分かれるが、平凡な一般市民の暮らしはどうか。最近、日本には空き家が増えているという報道があるが、実際に日本を旅行してみると「失われた」という表現が合わないほど生活の質は悪くないと感じる人が多い。むしろ暮らしやすい国という印象を受けるのが事実だ。

    ◆韓国の高齢化の波紋、日本より大きい

    では、韓国も今後、理由が高齢化であれ何であれ経済成長率が低下しても、過去15年の日本のように個人の生活の質が持続的に良くなり、特に引退後の暮らしが潤うのだろうか。残念ながら日本の高齢者の暮らしが韓国の高齢者にも同じように当てはまる可能性は大きくないようだ。あえて複雑なマクロ経済学的分析をしなくても、人口学的な観点から見て、韓国の高齢化は日本の高齢化と質的に大きく異なるしかない。

    まず、高齢化の速度と高齢者の規模など韓国の高齢人口による社会の波紋は日本に比べてはるかに大きい。日本で高齢化を進めた世代は韓国のベビーブーマーのような「団塊の世代」だ。1947年から49年までの間、毎年200万人以上がベビーブーマーとして生まれた。団塊の世代直後の出生児は25%ほど少なかった。このわずか3年間にしかならない団塊の世代が日本の高齢社会をつくった。

    韓国のベビーブーマーは55年生まれから63年生まれと見なされるが、この時期は出生率が非常に高かった。出生数だけで見ると58年から74年までが毎年95万-100万人ずつ生まれた実質的なベビーブーマーだ。今後、韓国の高齢化は17年間も続いたベビーブーマーがつくるが、日本の過去15年間の高齢化は3年間にしかならない団塊の世代がつくったのだ。韓国の高齢化が社会に起こす波紋は日本よりはるかに大きくなるしかない。当然、今後15年間、高齢者に対する社会福祉恩恵も日本の場合と比較して大きく分散するしかないというのが韓国の現実だ。

    ◆日本の半分以下の韓国国民年金

    引退後に経済活動ができない時、社会が準備した公的年金制度は老後を保障する最も基本的な手段となる。引退した直後は退職金もあり、まだ年齢もそれほど高くないため、経済活動も可能であり、経済的な問題に直面しないケースが多い。しかし時間が経過して75歳を過ぎる頃から状況が急変するのが一般的だ。この時期になると、国の老後保障制度が重要になる。

    韓国の代表的な公的年金は国民年金だ。国民年金が所得の代わりにならないレベルということはよく知られている。また、持続可能性も問題が多い。現在、国民年金の平均受領額は52万ウォン(約4万7600円)。今後年金を受領するベビーブーマーは加入期間が長いためこれより多く受けるだろうが、それでも25年間ほどの老後を頼るにはかなり少ない。

    日本の場合、基礎年金と厚生年金があるが、普通、会社員生活をして引退した人はこの2つを同時に受ける。勤労期間で差があり、男女間の平均受領額は異なる。現在、男性は18万-19万円、女性は9万-10万円ほど受けている。日本の1人あたりの所得は韓国より高いが、現在、韓国の生活物価の方が高い点を考慮すると、日本の公的年金は超高齢者の老後を保障する機能を十分に果たすが、韓国の国民年金はその機能を果たすのが難しい。韓国の今後15年が日本の過去15年と同じでないもう一つの理由だ。
    ◆負債ない日本の高齢者、負債多い韓国の高齢者

    韓国の引退年齢は満60歳だが、実際の引退時期はこれよりも早く、50代半ばを超えるとすでに引退または引退準備中だ。この年齢の経済状態は国民年金に頼れないため、長期の老後準備のために非常に重要となる。2017年の家計金融福祉調査によると、家計の貯蓄額が最も高い時期が50代だ。しかし家計の負債も少なくないため貯蓄と負債の差がほとんどない。60代も貯蓄と負債は差はほとんどなく、金額は50代に比べてかなり少ない。

    とはいえ不動産資産があり、その価値が上昇すれば状況はそれほど悪いとは言えない。しかし不動産の価値が下がり始めれば大きな問題だ。さらに所得が減れば負債の負担は貯蓄額を大きく上回る。すでにソウルと首都圏の数カ所を除いて不動産価値が低下し始めた。

    日本の引退年齢は満65歳だ。ところが日本の引退人口の大半は不動産資産の所有と関係なく引退時点に負債をほとんどゼロに合わせる。さらに賃金所得はないが、年金所得が安定的に入ってくれば生活費を支出しても貯蓄できる余力が生じる。日本の家計調査年譜によると、2017年に貯蓄額が最も多い年齢帯は60代と70代であり、負債規模が最も低い年齢帯は70代、その後は60代で、ほとんどゼロだ。不動産価値が下落しても金融資産と公的年金があれば暮らしは維持できる。

    ◆政府の老後保障の限界

    韓国の高齢化と引退関連状況は日本と大きく異なる。高齢者の比率で見ると、韓国が日本に比べて15年の遅れがあるが、さまざまな点で韓国の未来15年は日本の過去15年と同じにはならない。年金・医療保険・介護保険など高齢者のための十分な費用を用意するために日本政府の負債は想像を超越するほど増えたが、ベビーブーマーが17年にわたる韓国はそれさえも不可能だ。

    残念ながら、政府が状況を反転できるという期待よりは、引退前になんとか負債額をゼロに近づけるよう努力することが現実的で実現可能な代案になるだろう。なぜならベビーブーマーの老後は決して「何とかなるだろう」が通用しないからだ。

    チョ・ヨンテ/ソウル大教授(人口学)/リセット コリア保健福祉分科委員 ※記事は筆者と神谷毅朝日新聞ソウル支局長による共同作成。

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