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  • 四面楚歌の韓国造船業界構造…その解決策は何か

  • 経済 2017年04月07日 13:12
  • 漂流する大宇造船海洋、中国の猛烈な追撃、日本の復活の兆し…。四面楚歌の大韓民国造船海洋産業はどこに流れるのだろうか。ソウル大学造船海洋工学科長のキム・ヨンファン教授(53)の診断を聞いてみた。キム教授は「大宇造船を潰すより得意な船作りに注力させ、回復の機会を与えることが望ましい。これを株主と国民に説得する努力をさらに尽くさなければならない」と話した。老朽船舶に対する代替の需要が持続的にあるという点で造船は決して斜陽産業でないことを明確にした。キム教授は「グリーン・シップ(エコ船舶)、スマート・シップ(自律船舶)など次世代の船舶分野で生きる道を探さなければならない」と強調した。

    ――韓国経済の貢献者である造船海洋産業がわずか数年間でなぜこのように急落したのか。

    「第2次世界大戦以後、造船産業の覇権が欧州から日本に、日本から韓国に移った。しかし、この産業史上1等国家がこのように劇的に没落した類例はない。韓国が1993年にグローバル受注1位に登板して以来2008年の金融危機直前までだけでも現代重工業・サムスン重工業・大宇造船海洋の「ビッグ3」合わせて数兆ウォンずつ利益を出していたのにわずか数年で数兆ウォンの赤字に転じたから…。韓国国民は何かキツネにつままれたような感じを受けているだろう。多くの人が指摘しているが、没落の中心には無分別な海洋プラント事業があった。造船海洋産業の領域を大きく船舶と海洋プラントに分けて見ると、船舶建造でおさめた成功に陶酔し、なじみがうすい海洋プラントに深々と飛び込んでどん底に陥ったわけだ。

    こんにちの韓国造船海洋産業の危機は船舶受注一辺倒から抜け出すために海洋プラント側に無理に飛び込んで低価格受注の血肉を削る競争を繰り返した「ビッグ3」造船社の責任が大きい。もう1つある。3社の経営陣の過信と戦略の失敗が第一次的な失敗だとすれば造船海洋産業に関する政府のコントロールタワー機能がまともに作動できなかった点も危機を煽った」

    ――海洋プラントで一体どんなことが起こったのか。

    「造船市場は2008年のグローバル金融危機以降、海運業が低迷して発注が急減した。国際原油価格が上がり始め、海洋プラントがその代案として浮び上がった。初期は一部成功事例があったためビッグ3はより一層勢いづいた。現代重工業の西アフリカ海域キゾンバプロジェクトやサムスン重工業・大宇造船のドリル・シップ(石油掘削船)が一時そうだった。海洋プラントは国際原油価格が1バレル当たり100ドル以上だと確かに採算が取れるが、2014年以後原油価格が急落すると災難に急変した。発注処のプラント引き受け取り消しや遅延事例が頻発した。そのうえビッグ3の過当競争にともなう血肉を削る低価格受注、設計エンジニアリングの能力不足によるクレームも収益性を急激に悪化させた」

    ――造船と海洋分野の根本的な違いは何か。

    「最近造船産業の景気が10余年間隔で波打っていたのに比べて、海洋産業はサイクルが短い。事業別図体は海洋側がはるかに大きい。海洋プラントは主に海に埋まっている石油・ガスなどの天然資源を掘削して生産する設備だ。ドリル・シップやFPSO(浮遊式原油生産保存荷役設備)、FLNG、反潜水式掘削船などがそうだ。船を一隻受注する価格より5~10倍に及ぶ。造船業の取り引き相手は船主や船級会社程度だ。だが、海洋産業は付加価値を作り出すバリュー・チェーンの段階が複雑だ。探査・掘削・保存・生産など多様な業者とともに仕事をしなければならない。テクニップ・キャンベル・SBMのような専門会社が欧州と米国に広く進出している。数十年間1,2種類の仕事だけしてきた専門業者で1年で10兆ウォン前後を稼ぐ最も重要な技術企業だ。造船3社は2010年頃からこのような仕事を全て自分でやると言って勇敢に乗り出した。受注まで過多だったため消化不良になるのは仕方なかった」

    ――海洋側のリスクは統制可能なのか。

    「海洋産業は規模が大きいため、うまくすれば大当たりだが下手すると打撃が大きい。リスクが多い。2015年ビッグ3の8兆5000億ウォンの赤字の中で7兆ウォンが海洋プラントの赤字だった。できることとできないことを分けることが出来なかった経営陣、その判断ミスが表われた結果だった」

    ――先月下旬大宇造船に対する政府支援方案が出た。大宇造船はどのように処理すべきか。

    「2社体制に減らそう、3社体制を維持しようと意見がきっ抗したが私は中庸で2.5社体制を提案したい。大宇造船が得意とする造船側に特化して規模を減らし、回復を試みようということだ。金融委員会と産業通商資源部の方案の中間程度になるのではないかと思う。もちろん労使が一致協力して支出を削り激しく自救努力をするという前提の下でのことだ。世界2、3位を争った大宇造船の先端技術と大規模生産施設は国家的資産だ。設計でも施工でも船を作る技術は韓国が最高だ。特に大宇造船は液化天然ガス(LNG)運搬船と潜水艦などの建造技術面で最高だ。現代重工業やサムスン重工業が大宇造船を買収すれば良いがそのような余力がないだろう。大宇造船は熱心に無駄を省き体質を確かめながら民間でオーナーを探す努力を怠らずにしなければならない。風力事業やゴルフ場まで手を出す形では困る。全盛期の時より製品ラインを半分程度に減らすべきだと見ている。造船市況が昨年底を打っただけに大宇造船が成長する機会をもう一度与えるのが正しいと考える」

    ――底の抜けた瓶に水を注ぐようなことだという世論が多いが。

    「真正性を持って国民を説得する努力をしたのか問いたい。昨年の政府支援の時にこう言ったとしたらどうなっただろうか。大宇造船は造船に最適化して世界2、3位を争った会社だ。ところが今、大宇造船の倒産や法廷管理のような話が出るなり保証金を返せという海外発注者が列をなすだろう。このような悪性RG(前受金払い戻し保証)が合計10兆ウォンを越えるという話もある。大宇造船を空中分解させて借金まみれで終わらせてしまうのか、でなければ造船景気回復に期待をかけるのかどちら側を選ぶか。このように株主と債権者、国民に理解を求めることはできなかったのか。昨年大宇造船に数兆ウォンを支援しながら『今回が最後だ』と約束する代わりに『いつまで大宇造船を再生させよう。大宇造船の再生が国益に値する』のように率直に説得する勇気が無かったのか残念だ」

    ――他の会社はどうか。

    「現代重工業は昨年黒字転換をした。三星重工業もサムスングループという背景があって経営が好転すると期待する。造船海洋工学教授というとどこへ行くか『韓国の造船滅びるのではないのか』とよく質問される。もちろんこの2つの会社の状況も難しいが存続を厳重に心配する程ではない。大宇造船という一大企業に大騷ぎが起こったもので韓国造船全体が落目になったのではない。危機を克服すれば依然として相当期間韓国経済の貢献者としての役割をする底力を備えた産業だ。油断は禁物だが過度な懸念も有害だ」

    ――韓国の造船海洋産業の競争力はどの程度か。

    「一言で船を作る技術では韓国に勝てる国はない。その中でも大型コンテナやLNG運搬船、超大型タンカーなど高付加価値船舶技術に優れている。だからまだ中国の挑戦に耐えられる。中国が2012年に韓国を抜いて受注量1位国家になったが、バルク船・タンカーなど中低価格船舶の比重が70%に及ぶ。韓国はその反対だ。高付加価値船舶や海洋プラントの比重が半分以上で先進型ポートフォリオだ」

    ――造船景気の展望はどうか。

    「造船景気は10年近く険しい海峡をすぎてきた。発注は減っているのに後発の中国の進入でチキンゲームの様相だ。造船景気は昨年の最悪を越えて今年から底を打って上がると期待している。もちろん充分ではない。昨年の世界の受注物量が約1300万CGT(標準貨物船換算トン数)、今年は1500万~2000万CGTと予想される。韓国の大型3社の生産能力は1400万CGT程度だが、韓国が世界物量の30%を持ってくると仮定しても生産施設の半分も回せない。しかし、生産施設を半分に構造調整したら今後好況期にどうするのか。5年後にはグローバル発注量が2000万~3000万CGT程度になるだろうと多くの専門家が見通している。その時韓国は少なくとも1000万CGTは持ってこなければならない」

    ――ビッグ3の経営戦略ミスとともに政府のコントロールタワー不在が大きな問題だったと言っていたが。

    「大宇造船処理解決法と関連して政府の中でも異見が多い。金融委員会と産業部の大宇造船処理解決法が違うということ自体がコントロールタワーが脆弱だという傍証だ。韓国の大学の造船海洋学科は40校を越える。産業・教育・労働当局がみな造船人材の養成と技術開発に対するロードマップが不足していたため、このように過剰になった。例えば、船舶発注にともなうRGを金融会社が発行する時にビッグ3が過当競争をしないように間接的に介入するやり方も時には必要だ。ビッグ3の重複事業を防がなければならない」

    ――韓国造船産業の構造調整方向は。

    「業界自律協議が必要だがこのやはり政府と民間で構成されたコントロールタワーの役割が重要だ。過去に日本がしたように構造調整すると言って産業の手足を切ってはいけない。日本は『ブロック工法』という画期的船舶建造技術を創案して欧州を締め出して60年代末から世界船舶発注の半分近くを掻き集め始めた。寡占規制にかかるのを懸念して入ってくる物量を断るほどであった。それがオイルショック以降の70~80年代の2度の誤った構造調整で韓国に1位を明け渡す。造船を斜陽産業と見なして大型造船所を合併させるかと思えば大きいドックを大挙閉鎖した。設計・研究人材を希望退職形式に送りだしたり他の産業に回した。名門の東京大学が99年に造船学科を廃止したことは象徴的事件だった。日本よりかなり後の70年代になってから設立された韓国造船3社がこの物量をそっくり持っていってしまった。韓国は蔚山(ウルサン)と巨済(コジェ)の労使紛糾が静まると採算が合わなくても生産施設を攻撃的に増やしていった。日本の大学生が大きい都市から多少遠い造船所を冷遇している間、韓国政府は兵役特例等を通して有能な若者を造船所に集めた。90年代後半に造船の景気が良くなると日本は過去の栄華を取り戻すために努めたが離れた人材、縮んだ生産施設は即座に復旧できなかった」

    ◇キム・ヨンファン教授は…

    大邱(テグ)出身でソウル大造船工学科を出て米国マサチューセッツ工科大(MIT)で博士号を取得した。大宇造船海洋・米国船舶協会(ABS)・MITなどで務めた経歴を基に現場に基づいた研究プログラムを多数運営してきた。造船海洋流体分野、特に船舶および海洋構造物の運動性能研究分野の世界的権威者だ。

    世界的船舶協会である英国ロイド船級研究基金から10年目研究費を支援されてロイド基金船舶流力弾性研究センターを設立、運営している。2009年には政府の支援でソウル大学の国家支援研究センターである船舶海洋性能高度化事業団(AMEC)を設立し、世界水準のスロッシング(部分的に流体が積載されたタンク内部の流動現象)実験施設を構築した。この功労により2014年韓国工学翰林院の「若い工学者」賞を受けた。研究業績と学術活動を認められ、2015年6月に英国王立造船学会大学者会員(FRINA)に選ばれた。昨年からは日本・大阪大学特任教授としても活動している。

  • ソウル大研究室で最近会ったキム・ヨンファン教授。キム教授は「大宇造船海洋のLNG船や潜水艦の建造技術は世界最高水準だ。この会社さえ正常化すれば造船ビッグ3は再び伸びていくことができる」と話した。

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