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  • <インタビュー>映画『釜山行き』監督「ゾンビ通じて今の韓国描きたかった」

  • 芸能 2016年07月28日 10:00
  • 映画『釜山行き』の“興行列車”が恐ろしいくらいの勢いで走っている。ゾンビであふれる釜山(プサン)行きKTX列車の中で乗客が死闘を繰り広げる、国内初のゾンビ・ブロックバスターだ。公開7日目の26日までに623万人の観客を動員した。歴代最高興行作である『バトル・オーシャン/海上決戦』(公開7日662万人、計1761万人)の記録にぴたりとつけている。これは『釜山行き』を演出したヨン・サンホ監督(38)にとっても異色の記録だ。『釜山行き』は『豚の王』(2011)や『The fake』(2013)など社会批判的なアニメを演出してきたヨン監督の初めての実写映画だ。ヨン監督のアニメは海外でもその作品性が認められているが、観客数はそれぞれ2万人余りに終わっていた。

    『釜山行き』の成功はその個人を越えて、韓国商業映画に新たな素材の場を開放したという意味がある。ことしのカンヌ国際映画祭「ミッドナイトクリーニング」部門では「単なるゾンビ映画ではなく、韓国社会の現実をリアルに風刺している」との好評も受けた。韓国独立アニメ界の作家監督から商業映画の寵児として注目されているヨン監督に会った。

    --『釜山行き』が目をみはるような興行成績を挙げている。

    「ゾンビという素材を使ってはいるものの、見慣れた空間や普通のキャラクターで作品を作っていけば観客に通じるだろうと考えた。国内の多くの観客がゾンビ素材を楽しむ準備ができていたのかもしれない。『束草(ソクチョ)行き』、『結婚行き』、『退勤行き』などのパロディ物も見た。韓国でゾンビを使うとおもしろい素材になるということが分かった」

    --ゾンビを素材にしようと思いついた契機は。

    「『釜山行き』はプリクエル(前編)アニメ『ソウル駅』(8月18日公開)から始まった。ソウル全域にゾンビが現れた風景を描いた作品だ。日常的な風景となったソウル駅路上生活者がモチーフだが、その中で『路上生活者の顔が半分ぐらいない状態で歩き回ったらどうなるだろう』という想像をしてみた。そのゾンビをアクションブロックバスターの“列車”に乗せた作品が『釜山行き』だ」

    --参考にしたゾンビ映画はあるか。

    「ゾンビ映画よりは、飛行機や貨物船を舞台にした『ユナイテッド93 』や『キャプテン・フィリップス』のように限定された空間で起きた事件を写実的に描いた作品を参考にした。私はゾンビ映画を好んで見るようなマニアではなかった。ゾンビ映画よりゾンビというキャラクター自体に引かれた。恐ろしい怪物でありながらもどこか犠牲者的な雰囲気が漂い、社会性をまとった存在だ。ゾンビがどのように生まれて特徴が何かを詳しく描写するよりも、ゾンビと向き合った人間たちがどんな反応を示すのか、それを写実的に描くほうがはるかに重要だった」

    --これまでのゾンビ映画に比べ、ゾンビの動きが速い。

    「ゾンビの外見ではなく動きで威力を発揮しなければなければならないと考えた。その姿を写実的に表現するにはCG(コンピュータグラフィック)を最大限使わないようにして、特殊メークをした俳優が演じなければならなかった。映画『哭声』に参加したパク・ジェインの『ボディームーブメント・コンポーザー』(Body Movement Composer、身の動作を設計する役割)がゾンビの動きをデザインした。100人余りの俳優がゾンビ役に扮したが、一般人やエキストラではない職業俳優だ。全体の回数を減らして早く撮り終える方だ。劇後半、ゾンビが走行中の列車にしがみつく場面はシナリオにはない設定だったが、現場で私が出したアイデアをスタッフが実現してくれた」

    --生き残った乗客を通じて「共に生き残るのか、一人で生きるのか」と問う。

    「善人と悪人は別々にいるのではなく、状況や偶然、運のようなものによって善良にもなったり不道徳にもなったりするということを見せたかった。これを通じて今の韓国社会の風景を描くことができることと考えた」

    --アニメと実写映画の違いは。

    「アングルやショットの演出技法などに大きな違いは感じなかった。ただ、アニメを作る時は自分と似たような好みの観客を想像して作業していたとすると、『釜山行き』は年に映画館に一度行くかどうかという、うちの母のような観客まで念頭に置いて作った。独立アニメが長かったので視野が狭いかもしれない。そのような態度ではこの映画を完成できないと考えて、映画が好きだった初心に戻って作業を始めた」

    --今後の計画は。

    「アニメと実写映画を併行していくつもりだ。アニメが監督の好みと理想を積極的に描くことができるジャンルだとすると、実写映画は多くの人々と一緒に作り上げていく共同作業的な感じが強い。次の演出作は『釜山行き』とはまた違う雰囲気の実写映画になると思う」

  • ヨン・サンホ監督の初の実写映画『釜山行き』は久しぶりに登場した韓国ウェルメイドブロックバスターとして評価されている。