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韓国文化と生活

  • 第43回~岩嵜由佳さん(マクロビオティック料理家)
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  • マクロビオティックという言葉を聞いたことがありますか?自然のエネルギーを取り入れ、自然にそって生きていこうとする考え方のライフスタイルですが、その中核をなす「食事」であるマクロビオティック料理を韓国で専門家として(有資格者として)初めて紹介したのが岩嵜由佳さんです。岩嵜さんは今、メディアを始め、健康に関心のある韓国の人たちから大きな注目を集めています。韓国語で料理教室を開催し、韓国語で料理の本を執筆し、韓国語でマクロビオティックに関するブログを書く。こんな離れ業をやってのける岩嵜さんにこれまでの経緯や日々のお仕事について伺いました。
    名前 岩嵜由佳(いわさきゆか)
    所属先 マクロビオティック料理専門家
    年齢 34歳(1976年生)
    出身地 千葉県
    在韓歴 8年
    経歴 日本で管理栄養士として勤務後、2002年に渡韓し、語学堂に1年留学。卒業後、日系レストランコンサルティング会社に就職するがマクロビオティックと出会い、会社を退職し、マクロビオティッククッキングインストラクターの資格を取得。SBSドラマ「スタイル」でリュ・シウォン演ずるマクロビオティックシェフのアドバイザーを務めたことで話題を集める。料理本の出版、料理教室他、韓国でのマクロビオティック普及のため、多岐にわたって活動中。
    ブログ http://blog.naver.com/macrobiotics(韓国語)
    管理栄養士、レストランコンサルティング、そしてマクロビオティックへ
    結婚を機に韓国に来たのですが、管理栄養士の資格と経験もあったことから、知人の紹介を経て、日系レストランコンサルティング会社に就職することができました。日本で韓国料理店を出したいという方をサポートしたり、逆に韓国市場を知りたい日本の方を韓国に案内したり、日韓の橋渡しをする役割でした。

    栄養士の仕事とは全く畑違いでしたが、日本の食文化を知っているからこそ、韓国の食文化と触れた時に違いや共通点がわかるというメリットもあり、料理専門誌に日韓の食文化比較について連載をしたこともあります。しかし、多忙により体を壊してしまい、それをきっかけに本格的にマクロビオティックに取り組むようになりました。
    もともと喘息やアトピーの症状を抱えていたため、韓国人の夫が韓医院に連れて行ってくれ、そこで初めて栄養ではなく、食材を見て、体質にあう、あわないとする韓医学の考え方に接し、非常に引き付けられました。

    ある時、日本通の韓国の方から「日本で流行しているようだけど、知っている?」と見せられたのがマクロビオティックの本でした。恥ずかしながらその時は全く知りませんでした。しかし陰陽の調和や食物が持つエネルギーで食事を組み立てていくという韓医学にも通じる考え方に「これだ!」と思いました。
    その時は仕事が多忙で、深く学ぶことはなかったのですが、後に体を壊してみて、マクロビオティックというものを考えた時に、自分の健康を保ちながら、かつ韓国の人たちのために役に立つ仕事はこれかもしれない、生涯やっていける仕事はこれかも知れないと思い至りました。
    ドラマ「スタイル」をきっかけに注目度が急上昇
    韓国最大手のポータルサイト、NAVER
    韓国最大手のポータルサイト、NAVER
    退職後、独学で勉強を始めましたが、それだけでは飽き足らず、日本で教室に通いマクロビオティッククッキングインストラクターの資格を取得しました。しかし、資格を取得したからと言って、すぐに仕事があるわけではありません。

    韓国でこの資格を活かすにはどうしたらいいかと悩んでいた時にNAVER(ネイバー、韓国最大手のポータルサイト)主催の夢を叶えるという趣旨の「TO BEプロジェクト」という企画で自分のオリジナル料理をオフラインでお客さんに召し上がっていただくという、ワンデイ・シェフ企画に応募したところ選ばれ、韓国でマクロビオティックの料理を披露する機会を得ました。
    マスコミで取り上げられたこともあり、それをきっかけに少しずつ雑誌社などから取材の依頼が来るようになりました。
    転機となったのがSBSドラマ「STYLE(スタイル)」でリュ・シウォン演ずるマクロビオティックシェフのアドバイザーを務めたことです。「スタイル」の企画段階でマクロビオティックを活用できないか、という提案を夫が知り合いを通じてしたところ幸いにも取り上げられました。

    残念ながら様々な事情から、ドラマの中では登場回数も少なく、脚本家にマクロビオティックの理論を伝えるだけで、制作に深く関わることはなかったのですが、ドラマのお陰で興味を持つ人が増えて、料理本出版の依頼を受けたり、現代百貨店での料理教室もスタートしました。

    今、教室を始めてちょうど一年が経ち、マスコミからの取材や本の出版や各種講義などの依頼も増えました。マクロビオティックを伝えたいという思いが一番だったため、伝えられる場を持てるようになってきたことは幸せだなと思います。
    自然のエネルギーを生かすという考えに基づいたマクロビオティック
    マクロビオティックは、マクロ=大きい、ビオ=生物、生命体、ティック=方法、理論という意味の合成語です。自然のエネルギーを最大限に生かす方法。そのエネルギーを取り入れられれば、自分の生命力も活気に満ちた状態にすることができるという考え方で、自然にそって生きようというライフスタイルそのものと言えます。私が取り組んでいるのは、そのひとつの方法である食事法です。
    最近はスーパーのオーガニック食品も豊富に
    最近はスーパーのオーガニック食品も豊富に
    マクロビオティックには一物全体、身土不二、自然の生活、陰陽の調和という4つの原則があります。わかりやすく言うと、季節の食材を使用し、陰と陽というエネルギーバランスを食材の組み合わせや調理法などでとりながら、自分にあう状態の料理を作ろうというものです。

    例えば、野菜の皮をむいたり、根を落としたりした状態よりも、すべて存在しているほうが陰陽のバランスがよいので、皮も根もできるだけ食材は丸ごと利用します。また、人工的に早く育てたり、農薬を使ったものよりも、有機農食材の方が持っているエネルギーが大きいのでそれを食べようという考え方です。
    昔ながらの伝統を改めて見直すこと
    実はマクロビオティックは特別なことではなく、昔から受け継がれてきた郷土料理や家庭料理の中に根ざしていたものです。陰陽の調和という難しい言葉を使いましたが、お刺身にわさびをつけて食べる、鶏肉には葱をつけあわせるなどのように食材の組み合わせによって、毒消しや消化を促すという考え方は、昔の人の知恵として韓国、日本をはじめ、他の国々でも見られたことです。

    現代社会ではそれらが忘れられてきており、体系的に理解して食に取り組もうというのがマクロビオティックで、実際に食べてみると、懐かしい、体がほっとするという意見が多数です。一方で健康食だから地味で味が薄いというイメージもありますが、食事を楽しむための現代にあった様々なアレンジが可能です。

    マクロビオティックのおもしろさのひとつには、今まで当たり前にしていたすべての調理過程に対して、「なるほど」と納得できる理論を発見できることだと思います。また、食材を生かすことが基本なので使う調味料は醤油、味噌、酢、米飴、塩くらいです。いろんな調味料をブレンドして作る料理に飽きた、面倒だと感じている今の人たちには、かえって新鮮で、簡単でシンプルであると好評を頂いています。
    唐辛子やニンニクを控えたマクロビオティック的韓国料理が好評
    料理教室の生徒は韓国の方なので、原則のひとつである身土不二(地元の旬の食品や伝統食が体によい)を考えると、韓国の気候風土、食材、人にあわなければ意味がありません。

    韓国料理を専門的に勉強したことはありませんが、姑が料理好きなので色々と教わりましたし、旧正月(ソルラル)秋夕(チュソク)で仕込んだ大量の伝統料理作りの経験、会社勤務時代にフードスタイリストと一緒に仕事をした経験など、8年の韓国生活で得た知識が今、役に立っています。
    でも、私は日本人なので、どれだけ韓国料理を意識しても伝統韓国料理にはならないので、韓国料理をマクロビオティック的にアレンジしています。
    生徒さんには「私の韓国料理」として理解して頂いて、むしろアレンジを楽しんで下さっているようです。クルミ入りのサムジャン(調味味噌、野菜にご飯などを包んで食べる際につける)は好評でした。

    また砂糖やみりんを使わない醤油だけのきんぴらごぼうは好評で、1週間毎日食べたよという方もいたほどでした。ネギ味噌も人気でした。シンプルであればあるほど、食材の持つ本当の味に気づくことができるので、「こんなに深い味がするなんて!」と非常に驚かれますね。
    唐辛子は控えめ
    唐辛子は控えめ
    韓国料理の定番である唐辛子やニンニクはあまり使いません。肉料理でニンニクを使うのは毒消しの役割があるからで、摂取することは決して悪いことではありません。唐辛子や生姜、胡椒などの香辛料はエネルギーが強いので、それらのパワーを理解して使いましょうという注釈がついて活用はします。

    私が教室でお伝えするレシピは基本ですので、辛いのがお好きな場合は「こういう影響があるけど、こうすれば辛さを生かせますよ」など応用できる知識や方法を一緒にお伝えするように意識しています。でも、やはり唐辛子が入った料理をすると受けはいいです(笑)。
    しかし、マクロビオティックの料理を食べてみると、食べやすい、やさしい味と受け取って下さいます。韓国の方だからと言って、唐辛子やニンニクが入っていないと料理じゃない、おいしくないという固定概念はありません。
    主婦からプロまで、多彩な料理教室のメンバー
    講義を聞く真剣な表情
    講義を聞く真剣な表情
    料理教室は生徒さんの反応がすぐにわかるライブなので楽しいです。興味津々に聞いて下さる眼差しや家で作ってみたら家族に美味しいと言ってもらえたという声を聞くと、嬉しいですし、やりがいがあります。教室を始めて意外だったのが、50代60代の参加が多かったことです。

    驚きでもあり嬉しくもありました。やはり家族やご本人が体に不調を感じる年齢なので、健康な料理を勉強したいと意欲的です。韓国でマクロビオティックは新しい分野なので、プロの調理師や食品業界者をはじめとする専門職の参加も多いですね。
    実習タイムは賑やかに
    実習タイムは賑やかに
    仕事は100%韓国語ですが、上手じゃないのが逆にいいと思っています。生徒さんも一生懸命話を聞いてくれますし、私の言葉を直してくれたり、補ってくれたり、こうしたコミュニケーションが楽しいクラス作りにもなっていると思います。

    教室では先生と呼ばれていますが、韓国語はもちろん、マクロビオティックの知識も人間としてもまだまだ。でも、韓国では自分の不足な部分を誰かが補ってくれるという安心感をすごく感じるので、周囲の助けを得ながら楽しい雰囲気でやっています。恵まれていますね。
    効、即決!でも変更、の韓国スタイルに翻弄
    韓国で仕事をしていて苦労する点は、とっても強引なことでしょうか。今日連絡が来て明日ミーティングとか、少し考えますと言ったら決定されていたとか、私の了解を得ずに進行して事後報告とか、驚きの連続です。

    また印刷物が出来あがっていても、教室の内容や日程を直前に変更することも非常に多いです。強引に物事を進める反面、決まったことに対する変更も多いので、翻弄されますね。これも文化で皆さん慣れているからなのか、幸いなことに教室の変更などに関する件で生徒さんといざこざがあったということはないです。
    韓国は食材が返品可!
    韓国は食材が返品可!
    以前、教室で使う食材を購入したら上はきれいで下が傷んでいました。顧客センターで返品処理し、事務的に手続きが終わって終了。偶然、日本から来ていた母が、日本であればクレーム問題なのにと驚いていました。

    逆に言えば食材の返品は日本ではできないので、料理教室で余った食材を返品できる韓国は融通が利くのがよい点で(笑)、それぞれに良し悪しはありますね。
    2009年11月と2010年4月にマクロビオティックの料理本を出版しました。これまで韓国の精進料理本はあっても砂糖まで使わないマクロビオティック料理本というのはなかったので、新鮮に受け取ってもらえたようで好評を頂いています。

    多くの人の時間と創意工夫で本が出来上がっていく過程はとても勉強になりましたが、本作りは本当に大変でした。1ヶ月後には出版するぞという勢いで、僅か7回の撮影で120品近い料理と野外撮影までして、その速さには本当に驚きました。
    LGグループ元会長をマクロビオティックでおもてなし!印象に残る数々の出来事
    料理教室をする前の出来事ですが、KBSの健康番組「生老病死の秘密」の取材を受け、それを見たLGグループの元会長が私と食事をしたいと連絡を下さって。私の目から見てよいと思うレストランを選んで下さいと言われたのですが、韓国でマクロビオティック料理を食べられるところはないし、せっかくなので自宅にご招待しました。

    散らし寿司やふろふき大根、レンコンのソテーなど、普通の家庭料理をお出ししましたが、喜んでくださいました。運転手付の立派な車で小さな我が家にお越し下さって、私にはおもしろい出来事でしたが、韓国人の夫は動揺していましたね(笑)。
    マクロビオティックに興味を持つ方が増え始め、ある方がブログで私のことを記事にして下さいました。偶然見つけて「有難うございます」とコメントをしたら、とても喜んで下さって、さらに記事にしてくれました。自分のコメント一つの影響力に非常に驚き、嬉しかったと同時に、メディアなどに露出するにつれて自分の言動について責任を持たなければならないなという思いも持ちました。

    こうして韓国での活動の幅は広がっていきましたが、日本の家族にとっては実感のない遠い出来事でした。釜山の文化センターで特別講義があったのでたまたま旅行に来ていた母を伴い、講義をしに行きました 。アシスタントとして母に仕事をさせてしまったんですが(笑)。母には私の仕事の現場を見ることができて嬉しかったと言ってもらい、私にとっても有難かったです。
    出会いが増えていく中で心がけているのは、楽しむこと。マクロビオティックの伝え手である私が楽しまないと伝わり方も違うだろうし、それぞれの場面で出会った方たちにとってよい時間となるように楽しむことを一番のモットーにしています。

    マクロビオティックは前述の通り、料理法だけではないので、生活法や健康管理法などお伝えしたいことがたくさんあります。しかし、韓国ではまだ私一人なので、さらに学びたいという人のための受け皿がありません。基盤作り、拠点作りがこれからの課題です。
    韓国にはコリアンドリームがある
    韓国は経済成長が著しく貪欲にいろんなものを吸収しようという国だけに、何か自分の持ち味があれば、もしかしたら日本よりも夢を叶えやすい環境にあるかもしれないと身を持って感じています。

    日本にはマクロビオティックの大先生がたくさんいらっしゃるので、日本であれば私がこんなに活動できたはずはありません。私は韓国に来て5~6年くらいは時々襲う韓国嫌い病がひどかったのですが、ある韓国の方から「韓国と日本は似てると思うからいけないんだよ。
    全く違うと思えば受け入れられるよ」とアドバイスを頂きました。似ているから生じる誤解というのは結構あるんです。本当にそうだなと思考を切り替えられるきっかけになりました。韓国と日本は近いし、似ているから、韓国で働いてみようではなくて、外国だから挑戦してみようという気持ちでやると、色々なことを受け入れやすいと思います。そのためには韓国語を習得することをおすすめします。下手でも未熟でも韓国語でぶつかっていくのが、韓国社会で受け入れられていくポイントだと思いますね。
    マクロビオティック料理を習ってみよう!
    豆腐コースのメニュー例
    豆腐コースのメニュー例
    炒り豆腐が食べ応えありで、香ばしい混ぜご飯
    炒り豆腐が食べ応えありで、香ばしい混ぜご飯
    岩嵜さんが講師を勤めるマクロビオティック料理教室は現代百貨店の文化センターなどで受講することができます。文化センターでは穀物、豆腐、秋の野菜などテーマを設け、1ターム5回で受講料は60,000ウォン(材料費別途)です。韓国語の聞き取りが可能であれば在住の日本人ももちろん受講可能。

    取材時は豆腐コースで、この日のメニューは炒り豆腐と菜っ葉の玄米混ぜご飯と凍り豆腐の大根餃子でした。岩嵜さんの講習は説明が非常にわかりやすく、食材購入時の選び方など役に立つ情報もあり、マクロビオティックがぐんと身近になる印象でした。また教室は少人数で和気あいあいとした雰囲気ながらも皆さん、熱心に説明に聞き入っていましたよ。
    手元が見えやすいように調理台の上が鏡に
    手元が見えやすいように調理台の上が鏡に
    調理しながら質問にもどんどん答えていきます…すごい!
    調理しながら質問にもどんどん答えていきます…すごい!
    インタビューを終えて・・・
    マクロビオティックの生活をしていて、現在では体の変調の原因が何を食べて起きたものなのか、わかるようになったという岩嵜さん。その話を聞くと何だかハードルが高そうですが、人それぞれ関心を持った時点から自分のペースでマクロビオティックを取り入れられるようにアドバイスされているのが岩嵜さん流でこれが人気の秘密のようです。韓国の健康ブームの中でもまったく新しいアイテムとして注目を集めているマクロビオティック。今まさにスタートを切ったばかりの岩嵜さんからはキラキラとした希望と目標に向かうパワーがあふれんばかりで、2010年秋には3冊目の本が出版予定だとか。「マクロビオティックが特別なものではなく、日常的な選択肢のひとつになればいい」という夢の実現のために、ますます活躍の場を広げていかれることでしょう。
    岩嵜由佳のマクロビオティック料理
    現代百貨店 狎鴎亭(アックジョン)本店 月10:00~12:00
    ・現代百貨店 貿易センター店 水19:00~21:00
    ・エイミークッキング http://cafe.naver.com/amycooking.cafe (月1~2回 日時不定期)

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