韓国語をあらわす文字「ハングル」
「 ハングル(한글)」とは、 韓国語・朝鮮語を表記するための文字のこと。ハン(한)は偉大な、クル(글)は文字という意味を持ち、日本語で言うところの「ひらがな・カタカナ」にあたります。
しばしば耳にする「ハングル語」という言い方は、実際には使用しません。
言葉を知れば、 韓国旅行で便利なだけでなく、韓国に対する理解を深めることもできるでしょう。韓国語の基本となる、朝鮮半島固有の文字「ハングル」の歴史をご紹介します。
ハングルの創製者「世宗大王」
韓国人で知らない者はいない、朝鮮王朝第4代王の 世宗(セジョン)。ハングル創製をはじめとする数々の科学的業績から「大王(テワン)」や「聖君(ソングン)」とも称されます。
「民は国の根であり、根がしっかりしていてこそ平安な国となる(백성은 나라의 근본이니 근본이 튼튼해야 나라가 평안하게 된다)」という言葉で知られ、今なお韓国で尊敬されている歴史的人物です。
世宗は、三男でありながら弱冠22歳で即位。幼い頃から類まれな読書家として知られ、様々な学問に長けていただけでなく、分析・批評まで行なう専門家並みの博識家だったと伝えられています。
日時計や水時計、測雨器、天体観測器など、民衆の生活に役立つ発明を次々と主導し、韓国の歴史上もっとも優れた儒教政治と華やかな民族文化を花開かせました。
ハングルが誕生した背景
「訓民正音」の複製本
ハングルができる前の韓国では、韓国語(当時は朝鮮語)と言語体型が異なる中国の漢文が使われていました。
しかし、この漢文や漢字を理解できるのは高級官吏や学校に通えるお金持ちなど、支配層のみ。一般庶民は書くことはおろか読むこともままならなかったといいます。
そこで、世宗大王は民衆にも分かりやすい独自の文字を作るため、当時の有名な学者たちを集めハングルを作り上げ、1446年10月9日に大々的に公布しました。これによって、韓国語の正確な表記ができるようになりました。
「訓民正音(フンミンジョンウム、훈민정음)」(国宝第70号)は、ハングルの成り立ちや原理を記した解説書で、木版33枚66ページに239種547字の文字が記されています。文字創製の記録書として1997年に「ユネスコ世界記録文化遺産」に登録されました。
ハングルの発展と現在
子音と母音を組み合わせるハングルキーボード
朝鮮王朝時代、ハングルは漢文の補助的存在と軽視され「諺文(オンムン、언문)」と称されもしました。
1894年に、第26代王・ 高宗(コジョン)の勅令によってハングルがようやく国字化されますが、当初は漢字と組み合わせて使用されました。
「ハングル」という名称は、言語を弾圧された日本の植民地時代に韓国語学者たちによって生まれ定着したとされます。初めてハングルという呼称を用いたのは、韓国語学者であり独立運動家でもあった周時経(チュ・シギョン)と伝えられています。
日本の植民地支配から解放された後の文献や新聞には、ハングルと漢字の混用が多く見られます。
時代は流れ1970年、 大統領令により「 ハングルの日」が制定。1980年代からは漢字教育が奨励されなくなり、韓国の文字はハングル中心へと変化していきます。
1990年代以降に普及した パソコンのキーボードはハングルとアルファベットが基本で、漢字は一字ごとに変換キーを押す程度の使用頻度です。また、文書作成のソフトウェアも日本でポピュラーな「Word(Microsoft社)」ではなく「アレ・ハングル(ハングルとコンピューター社)」が韓国市場の大多数を占めるとされます。
「ハングルの日」は祝祭日
「 ハングルの日」(10月9日)は、ハングルを公布した世宗大王の功績を称え、ハングルの普及・研究を奨励する日と定められています。
韓国では、建国記念日である 開天節(10月3日)からハングルの日までの約1週間は、「ハングル週間」として各地でさまざまなイベントが催されます。
記念日という扱いでしたが、科学性・独創性の高さなどハングルに対する国際的な評価の高まりを受け、 2013年からは「ハングルの日」が23年ぶりに 祝祭日として復活しました。
ハングルを詳しく知ろう
世宗大王を知るなら
世宗物語
光化門広場の地下にある常設展示館。世宗の年代記の映像や、発明品の模型を展示したコーナーがあり、世宗の生涯と業績に触れることができます。「訓民正音」複製本展示もあります。
- 世宗物語
- 世宗大王像すぐの地下空間にある展示施設
- ソウル > 市庁・光化門
ハングルに触れ合うなら
国立ハングル博物館
「訓民正音」などハングルに関する貴重な資料が1万点ほど展示されています。画面をタッチしたり映像に合わせて動いたりしながら、ハングルを学習できる仕掛けもあり、文字の仕組みや子音と母音の種類、発音などを気軽に学ぶことができます。
漢字からハングルへの変遷を知るなら
新聞博物館
新聞博物館
漢字混用からハングル中心への変化がもっとも顕著に見られる、新聞を扱った博物館。韓国の大手新聞社「東亜日報(トンアイルボ)」の過去の新聞紙面展示や、体験コーナーもあります。
ハングルの誕生を題材にしたドラマ
ハングルや世宗をテーマにした 韓国ドラマや 韓国映画はこれまでにたくさん作られています。
中でもヒット作である「 根の深い木」(2011)は、世宗と学者たちがハングルを制作する過程で「訓民正音」公布の7日前に起きた謎の連続殺人事件に焦点を当てたドラマです。
権力闘争、王と民衆のハングル制定に対する受け止め方の違いや葛藤、苦悩し絶望する人間的な世宗の姿が描かれ、ハングルの誕生をめぐる一連のいきさつを知るのに役立ちます。
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