約360のオルムと呼ばれる小火山が散在する済州島(チェジュド)。済州島南西部の平野地帯に聳える山房山(サンバンサン)は、規模が大きいオルムとして漢攀山(ハルラサン)、城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)と共に済州島の三大山のひとつに数えられ、名勝第77号に指定されています。今から70～120万年前に粘り気の強いマグマが噴出した際に形成されたもので、山自体が巨大な溶岩のかたまりです。高さは395mあり、釣鐘のような形が目を引きます。

山房山は海岸沿いにある高い山であるため、山の斜面と平地とでまったく異なる気候特性を持っています。断崖の上に自生する植物のうち、絶壁一面に群生するムカデのような形をしたムカデランや、常緑低木のチョウセンヒメツゲなど国の天然記念物に指定されているものもあります。

山の中腹の南側にある絶壁には、多様な形と大きさの風化穴と崖錐(円錐状の堆積地形)があり、また波の浸食で作られた海蝕洞窟があります。山の入口から石段をのぼっていくと見える山房窟寺(サンバンクルサ)は、山の岩窟を使用して作られたお寺です。高さ約５mの洞窟には石仏が安置されており、天井から落ちる水滴を集めて飲むと長生きするという信仰があります。

山が位置する沙溪里(サゲリ)は済州島の中でも平坦な地形として知られ、にょっきりと聳える山房山と鮮やかなコントラストを成しています。菜の花が一斉に咲き、黄色に染まった大地と山房山の織り成す風景は、済州島を代表する風景のひとつとして人々を魅了しています。山房山に隣接したヨンモリ海岸は、山房山の山脈が波や風の侵食によって龍の頭のような形になった海岸です。山房山とヨンモリ海岸をセットで訪れれば、自然の雄大さを肌で感じることができるでしょう。