石、女、風が多いことから三多島と呼ばれる済州島(チェジュド)。韓国南部にある火山島で、溶岩が固まってできた玄武岩が多く、玄武岩の塊や礫を積んで作った石垣を畑や家の周りにめぐらせています。畑の石垣を韓国語でパッタムと言い、パッタムが作り出す曲線と緑の調和は済州島ならではの景観を形作っています。

パッタムは強い風からの作物保護、土と種の飛散防止、牛馬の農耕地侵入の防止と様々な役割をしています。文献によれば13世紀の高麗時代、1234年に済州判官(地方官吏の役職のひとつ)に就いた金坵(キム・グ)が土地所有を巡る住民同士の争いを避けるため、石垣で畑の区分けを始めたとあります。パッタムは2013年に韓国の国家農業遺産第２号に指定され、2014年４月には国連専門機関である「国際連合食糧農業機関」(FAO)より世界重要農業遺産に指定されました。

パッタムは地域によって、また畑の農作物の種類によってその形態が異なります。海岸線に近い地域は石が高く積み上げられ、広い畑の場合はところどころ仕切りのように石が積み上げられています。パッタムは一見無造作に積み上げられているように見えますが、石と石の隙間から強風が抜けて風の力が弱まるため、崩れにくくなっています。済州島にある石垣を一本につなげると約22,000kmの長さになるとも言われ、そのため黒龍万里とも呼ばれています。済州島の人々の知恵と技術によって作られたパッタムの美しさは、見る者をきっと魅了することでしょう。