図解や体験設備などを通じてやさしく楽しく観覧できる韓国近代文学館の常設展示室。韓国近代文学の歴史を６つの年代に分けて理解する１階と、仁川を軸に韓国近代文学を深掘りした特集コーナー、そして通俗的な作品を紹介する大衆文学コーナーがある２階に分かれています。

キュレーターの編集意図に沿ってひととおり観覧すれば、韓国の中学・高校程度の文学知識が得られるになっています。また常設展示だけでなく、企画展示や教育プログラムも各種行なわれています。

1910～1919年
韓国近代文学の実質的な出発期といえる日本植民地時代の武断統治期。

検閲や統制を受けるなかで通俗的な文学が流行しました。事件の因果関係を中心に叙述されたり言文一致に近い文体が試みられた「新小説」や、国の危機を克服しようという意志を込め民族の英雄を描いた「歴史伝記物」などが登場します。

仁川特集コーナー
近代韓国の象徴といえる仁川に着目して編集されたコーナーで、仁川出身の近代作家紹介や近代文学のなかに登場する仁川を示した地図などが展示されています。

韓国近代文学草創期に一世を風靡した趙重桓(チョ・ジュンファン)の「長恨夢(チャンハンモン)」(1913年)。男女の自由恋愛や三角関係を描いた小説で、演劇や映画、流行歌も制作されたベストセラー作品です。

「長恨夢」は韓国で、主人公である李修一(イ・スイル)と沈順愛(シム・スネ)の青春物語として広く知られていますが、実は間貫一がお宮を蹴り飛ばす熱海の名場面で有名な日本の小説「金色夜叉」(尾崎紅葉、1897～1902年)が翻案されたもの。韓国近代文学が本格的に確立される以前は、「長恨夢」のように日本や西洋の文学作品を朝鮮語に翻訳した翻案小説が広く読まれていました。