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大学路のソウル大学医学部構内に、風雪に耐えてきた赤い煉瓦造りの建物がある。大韓帝国時代に医療と衛生の中枢を担った「大韓医院」がその出自で、現在はソウル大学病院医学博物館となっている。
建物中央に高くそびえている時計台は韓国に現存する最古の時計台で、今なお時を刻んでいる。また、アーチ型入口の上に懸っている「大韓醫院」の鮮やかな文字は、大韓帝国最後の皇太子・英親王(王妃は李方子妃)によって揮毫(複製)されたものだ。
館内は歴史的建造物特有の天井の高い造りとなっていて、博物館にふさわしくしんと静まりかえっている。
建物の沿革や構造などの説明をビデオで視聴した後、展示室へ。
展示品は、当然のことながら医学に関するものが中心で、顕微鏡、聴診器、メス、ピンセットなどの医療器具、秤、時計、眼鏡、各種証書、書籍雑誌、医薬品、写真、年表など。
時計や眼鏡などは、同時代を生きた祖父の遺品に出会うようで興味を惹かれる。
また、写真のキャプションやパネルの説明を読み進んでいくと、高い志と情熱で韓国医療の発展を先導してきた自負をうかがい知ることができる。
近代式病院の嚆矢と言われ、韓国の医学史にその名を刻む「大韓医院」。しかし、落日の大韓帝国と運命を共にし、歴史の闇に消えていく。
その後、朝鮮総督府医院、京城帝国大学付属医院、そしてソウル大学付属病院と変遷を重ね、現在に至っている。その一部始終を見つめてきたのがこの赤煉瓦の建物だ。
喧騒なソウルの街中にある静かな空間。旅の途中に立ち寄って、隣国の医の心に触れてみるのも悪くない。