慶尚北道(キョンサンプット) の栄州(ヨンジュ)市浮石面(プソッミョン)、鳳凰山(ポンファンサン)の麓に位置する浮石寺(プソッサ)は、韓国10大名刹に数えられる華厳宗の寺です。新羅の文武王の時代である676年、華厳宗の祖と言われる義湘大師(ウィサンデサ、625~702年)が王の命を受けて建立しました。何回かの再建を経て、現在に至ります。境内には韓国最古の木造建築である国宝第18号の無量寿殿(ムリャンスジョン)を含め国宝5点、宝物9点、慶尚北道有形文化財2点があり、多くの参拝客や観光客が訪れます。
山門の一柱門から天王門、安養門まで108の石段をのぼり、三層の石塔、梵鐘楼を通り過ぎると、安養楼(アニャンル)という楼閣の姿をした二層の門が現れます。安養楼を抜けると、無量寿殿が境内の一番高いところに見えます。正面5間、側面3間の八角屋根の建物である無量寿殿は、丹青(青・赤・黄・白・黒の5つの色で構成する装飾)は施されておらず、シンプルな外観が特徴。また美しい曲線を描いたエンタシス様式の柱が見るもの目を引きつけます。高麗時代に建てられた無量寿殿の扁額の字は、高麗王の恭愍王(コンミンワン、1330~1374年)に筆によるもの。無量寿殿の手前にあるのは、国宝第17号に指定された石燈、また、建物の中には国宝45号指定の黄金色に光る阿弥陀如來坐像が安置されています。
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無量寿殿の裏手には、まるで浮いているように見える「浮石」と刻まれた巨大な平たい石があり、寺の名はその石に由来すると言われています。自然と見事に調和した寺の姿、そして境内から眺める小白山(ソベッサン)の雄大な景色は、無我の境地へといざなってくれるでしょう。