慶尚南道(キョンサンナムド)の北東に位置する昌寧(チャンニョン)郡は、三国時代は新羅の防御要衝地として栄え、先史時代の古墳をはじめ105もの文化遺産が散在、第二の
慶州(キョンジュ)とも呼ばれています。観龍寺(クァルリョンサ)は、海抜793メートルの観龍山(クァルリョンサン)の南西に位置し、394年に創建と伝えられていますが詳しいことはわかっていません 。朝鮮王朝時代15世紀はじめに大雄殿が建立されて以降は、16世紀後半に文禄・慶長の役により消失、17世紀はじめの再建や18世紀の補修を経て現在に至ります。
境内には大雄殿(宝物第212号)、薬師殿三層石塔(慶尚南道有形文化財第11号)、薬師殿(宝物第146号)のほか観龍寺石造如来座像(宝物第519号)があり、秀麗な寺院芸術に触れることができます。観龍寺石造如来座像は薬師殿に奉られている仏像で、花びら模様が刻まれた台座の部分が美しいことで知られています。
観龍寺の西方にある龍船台(ヨンソンデ)と呼ばれる峰にあるのが、宝物第295号指定の龍船台石造如来座像です。統一新羅時代(676~918年)に造られたと推定されており、全体の高さは約3メートル、仏像の高さは1.8メートル、台座の高さは1.17メートルです。安定感を感じさせるどっしりとした体つきで、山を見下ろすように座っています。仏像の後ろにつける装飾(光背)は欠失しているものの、像全体から造形の美しさが感じられます。観龍寺薬師殿の石造如来座像は、この座像をモデルに高麗時代に造られたと伝えられています。
観龍寺は火旺山(ファワンサン)郡立公園内にあり、玉泉(オッチョン)券売所で入場料を支払い入山します。観龍寺、龍船台を含む観龍山までの登山路が整備されており、わかりやすい案内版もあるのでアクセスは比較的容易です。