今から約600年前の朝鮮王朝。王室の様々な儀式・行事は事細かに記録され、それらは儀軌(ウィゲ) と呼ばれました。ところが19世紀の戦乱で儀軌はフランス軍の手に。以降、返還を求める官民の努力は続き、貸与という形ではあるものの今年5月に祖国に戻ってきました。これを記念して、国立中央博物館では現在特別展が開催中です。
儀軌は元々、江華島(カンファド)に設置された外奎章閣(ウェギュジャンガッ)という場所に保管されていました。しかし19世紀後半に開国を求めるフランス軍との間で「丙寅洋擾」事件が勃発。写真の徳津鎮(トッチンジン)にて激しい衝突が起き、動乱のさなか儀軌は当時の仏軍に奪われてしまったのです。
今回の韓国帰還は実に145年ぶり。特別展の開催されている国立中央博物館には、貴重な儀軌を一目見ようと、連日大勢の人が訪れています。夏休みということもあり、小中学生の姿もちらほら。いつになく真剣な眼差しの男の子、さては自由研究のためにきたのかな?
婚礼や葬儀などあらゆる行事を記録した儀軌。そこには担当者の氏名や進行規則、行事に用いた物品の量まで記録されています。特に外奎章閣の儀軌は、大部分が御覧用、つまり王の閲覧用だというのが特徴。御覧用は、高級紙に天然顔料を用いて描かれ、赤い縁取りが施されるなど特別仕様です。
今回の展示では、71点の外奎章閣儀軌を中心に、関連遺物も含め165点にのぼる史料を公開。難しそうな歴史資料だけでなく、人形や模型を使って当時の行事の様子を分かりやすく表現した展示もあります。
特別展「145年ぶりの帰還 外奎章閣の儀軌」は、9月18日まで開催。観覧は無料です。ユネスコ世界遺産にも登録されている貴重な儀軌が見られる絶好の機会。ぜひ足を運んで、朝鮮王室の高度な記録文化に触れてみてください。 関連記事: 国立中央博物館
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