ソウル市の西北部、弘済洞(ホンジェドン)の「アリ村(ケミマウル)」は小高い丘の上にあり、朝鮮戦争以降に行くあてのない貧しい人々が身を寄せ合ってできた村。ここに住む人々はアリのように毎日を一生懸命に生活しているという意味から、そう名付けられました。
住民の多くが日雇い労働に従事したり、配給を受けながら暮らしているため、外部からの訪問客は皆無だったアリ村が芸術村に変わったのは昨年の夏。村のあちこちに色とりどりな絵が描かれ、それまで暗かった街の雰囲気が明るくなりました。
これはアリ村のある西大門区(ソデムング)と、大手建設会社の錦湖(クモ)建設が提携して「光とグリーンが似合う街プロジェクト」を企画し、ボランティアとして集まった5大学の美術学生約130人が、灰色の塀や壁にカラフルな絵を描いたプロジェクト。
「歓迎」「家族」「自然親和」「映画のような人生」「終わり、そして始まり」など、それぞれ異なった5つのテーマで構成された51個の壁画は「路上美術館」として人気を呼び、今では週末になるとカメラを持った若者がたくさん訪れるようになりました。
このプロジェクトのおかげでアリ村に住む人々の気持ちにも変化が生じ、以前はこの村に住んでいることも大きな声では言えなかったけれど今では誇らしく、親戚や知人を招く機会も増えたのだとか。
いよいよ3月も終わり。ソウルは例年に比べ寒い日が続きましたが、市内にはようやくサンシュユや木蓮が見られるようになりました。壁に描かれた子犬の笑顔のように、温かい気持ちを持って、笑って新しい春を迎えたいものですね。
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