ソウルは坂道の多い街です。背後に北漢山(プッカンサン)を抱え、周囲を緩やかな丘陵で囲まれている盆地ゆえに、市の中心地を除いて坂道とは縁の深い地形をしています。街歩きの途中、ほんの一本、道を入っただけで様々な表情を持つ坂道に出会うことができます。
「伝統の坂道」は 北村韓屋(プッチョンハノッ)マウル。景福宮(キョンポックン)と昌徳宮(チャンドックン)に挟まれた一帯を指し、貴族階級である両班(ヤンバン)の居住区であったことから、今でも往時を偲ばせるような伝統家屋の家並が続きます。
「再生の坂道」は大学路(テハンノ)の 梨花洞(イファドン) 一帯。再開発事業の一環として行われた路上美術館プロジェクトによって、不便の代名詞とされたような町がアートな空間に生まれ変わり、イメージが一新されました。
梨花洞の近くには「歴史の坂道」も。朝鮮時代に外敵からソウルを守った城壁が市内の各地に残されており(一部再建)、城壁に沿って散策することもできます。 駱山(ナクサン)公園からのアクセスがわかりやすいでしょう。
ニューフェイスは「グルメの坂道」。梨泰院(イテウォン)の隣、6号線緑莎坪(ノッサピョン)駅から南山(ナムサン)の麓に続く経理団通り(キョンニダンキル)は坂道に沿って世界各国の料理店が点在する最近話題のスポットです。
「アートの坂道」なら 平倉洞(ピョンチャンドン)のギャラリー通り (写真左)。北漢山のふもとにあります。近くの付岩洞(プアムドン)もおしゃれなカフェやショップが多く、ドラマ「コーヒープリンス1号店」の撮影地も(写真右)。また両者は指折りの高級住宅街として知られています。
「くらしの坂道」はソウルのそこかしこで見ることができましたが、傾斜のきつい階段や坂道を上らなければならないトンネ(町、集落)は、再開発地区に指定されていることが多く、人々の暮らしが感じ取れるような坂道の風景は徐々に失われようとしています。
坂道を上ると、いつもとは違った角度からソウルを見ることができ、特に冬場は空気が澄んでいるので眺めも良好。ひんやりとした空気も気持ちがよいものです。身を切るような零下の寒さが収まった今週、服装をしっかりと温かくして、ソウル散策はいかがでしょうか。
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