＜インタビュー＞中年女優キム・ヘスク　‘母親’という名の下に…１

　　　‘母親’はまるでご飯のような存在だ。ラーメンの出前を頼んでみたり、ステーキを食べたりしたところで、結局、ほかほかのご飯が食べたくなる。

　ところが、ご飯というものはメインメニューとして扱われない。ご飯をぽんと食卓に出したところで、食べる者に『これしかないの？』と言われるのがオチだ。くやしいことだ。よく見れば、粘り気のある五穀飯からパラパラした麦飯まで、ご飯の味もさまざま。いや、米粒一つひとつにツヤがあるご飯の味そのものがドラマチックなのだ。

　女優キム・ヘスク(53)の『母親』がまさにこれを表現している。キム・ヘスクの演じる母親は『秋の童話』をはじめとする尹錫瑚(ユン・ソクホ)プロデューサーの季節四部作で、日本でもよく知られている。現在、連続ドラマ『憎くても可愛くても』の慎ましやかで粘り強い母親、週末ドラマ『糟糠の妻クラブ』の恨み深くて荒っぽい母親を演じているが、特に映画『慶祝！私たちの愛』(９日公開)の母親は注目の的だ。

　この映画では生活苦でやつれた母親オ・ボンスンが、娘の恋人だった20歳年下の下宿生の青年(キム・ヨンミン)と恋に落ちる。『母親』から『女』を発見する話で、家族の意味を改めて考えさせられる作品だ。この映画の前に公開された『無防備都市』と次回作『コウモリ』まで、‘母親’という名の下に果敢な挑戦を続けるキム・ヘスクに会った。