３５年ぶり全国民規模軍事避難訓練、形ばかりとの指摘も

【ソウル１５日聯合ニュース】北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈事件、延坪島砲撃事件が相次ぎ発生し、さらなる挑発行為が懸念されるなか、３５年ぶりに全国民が参加する民防衛（民間人による軍事避難訓練）が１５日午後２時から実施された。しかし、延坪島対岸の仁川市など一部地域を除いては、全般的な待避所不足や広報不足から、形ばかりの訓練の域を脱しないものとなった。
　空襲警報のサイレンが鳴ると、京畿道庁の職員らは室内の電気を消し、非常退避施設に迅速に移動した。京畿警察庁も全職員６５９人が部署ごとに指定された地下待避所に移動。水原地裁は公判時間を延期した。一方で、ソウル政府総合庁舎の公務員らは室内に退避したものの雑談を続けるなど、一部地域では形式的な訓練にとどまる雰囲気だった。

　一般住宅街や都心外郭、市場、工場地帯などでは、サイレンが鳴っても住民が退避しなかったり、訓練実施そのものを知らずにいるケースが多く見られた。

　京畿道・安養の会社に勤める４４歳の男性は「ここではサイレンの音が聞こえなかった。訓練が始まったのも分からなかったので、退避もしていない」と話した。水原のアパート団地でも、団地内の放送設備を利用し退避指針が案内されたが、建物地下に移動する住民は多くなかった。統制要員が配置されていない道路では、多くの車両が停止せず走行を続けた。

　釜山のチャガルチ市場では、一部店員らが地階に退避したが、緊張感にかける様子だった。商店街付近の道路では、一部のドライバーが統制要員と押し問答する姿も見られた。光州の百貨店では、訓練開始２０分前から案内放送を流し、公務員ら１０人余りを動員し訓練の実施を伝えたが、買い物客らは退避の要求に戸惑ったり、不快感を示すなどした。百貨店関係者は「訓練があることを知らないお客様も多く、無理に退避させるわけにもいかない」とため息をつく。

　全国の小中高校では、別途の退避施設などがなく、校内の野外公演場、地下駐車場、運動場のスタンドなどに生徒を集めたほか、教室内にとどまるケースが多かった。蔚山地域では、１４０の小中高校の約７割が着弾すれば大規模人命被害が発生しかねない講堂や教室に生徒たちを退避させており、「退避」に対する概念が定まっていないと指摘され、根本的な見直しの必要性が提起された。

　期末試験中ながら午前中に試験を終え、警報の種類や退避要領に関する指導を行ったうえで、生徒を下校させる学校もあった一方で、清州のある高校生は「民防衛について１度も教育を受けたことがない」と話しており、一部学校では生徒に民防衛訓練の指導をまったく行っていないことが明らかになった。

　北朝鮮による砲撃を受けた延坪島の対岸、仁川市では、訓練は比較的順調だった。警報がなると同時に走行中の車は統制要員の案内に従い道路右側に停止。市内の目抜き通りは瞬時に駐車場を思わせる姿となった。市内バスの乗客は冷静に順番を守り車両から降り、退避施設に移動した。歩行中の市民らが近くの地下鉄駅に駆け込む姿があちこちで見られた。北朝鮮に対する安保不安を反映するかのように、地下鉄駅構内では流れるラジオ中継に耳を傾ける市民が少なくなかった。４８歳のある男性は「有事にはどこに逃げればいいのかと思っていたところで、こうして訓練があったので安心した」と話した。

　仁川市庁と１０の区庁・郡庁でも、職員らが防毒マスクを着用し建物地下に退避するなど、普段の民防衛よりもレベルの高い訓練を実施した。仁川警察はこの日、主要交差点など市内７０カ所に警察官１２８人とパトカー６６台を配置し、交通統制と退避案内に力を入れた。