「旧正月には渡り鳥にも特別食を」…韓国坡州の「ハゲタカ食堂」に行ってみると

２３日、坡州汶山邑長山里（パジュ・ムンサンウプ・チャンサンリ）ある田畑。成人男性２人が運んできた袋を開くと、こげ茶色をしたハゲタカ１羽が頭を出した。救助番号２４－８７２番。昨年１２月、京畿道漣川郡（キョンギド・ヨンチョングン）のあぜ道で京畿北部野生動物救助管理センター（以下、北部救助センター）により助けられた個体だ。当時このハゲタカはどこにぶつかったのか頭から血を流して同じ場所をふらついていたという。

１カ月間の治療を終えたハゲタカは目隠ししてあった布を取ると、広げると３メートルに達する両翼を大きく羽ばたかせて群れに向かって飛んでいった。３００羽余りのハゲタカが畑に置かれた赤い肉を仲良くつついた。肉は臨津江（イムジンガン）生態保存会（生態保存会）で準備した畜産副産物だ。同団体は毎年１１月から３月まで週に３回（火・木・土）にハゲタカにエサを与える「ハゲタカ食堂」を運営している。

生態保存会がこのような「特別な給食所」を運営することになったのは、天然記念物であり絶滅危惧種ＩＩ類であるハゲタカの個体数維持が難しくなっているためだ。毎年冬にモンゴルから３０００キロの距離を飛んで韓国に渡ってくるハゲタカ（Ｖｕｌｔｕｒｅ）は獣を狩猟するワシ類（Ｅａｇｌｅ）とは違い、動物の死体だけをエサとしている。主に死んだガンやニワトリ・アカシカ・ブタなどを食べて、死体による河川汚染や伝染病を防ぐ。「地球の清掃夫」というニックネームを持つゆえんだ。

しかし、都市化によって農地が減少し、有害鳥獣捕獲などでエサが減り、ハゲタカはその生存が脅かされている。最近では農薬も主な脅威要因に浮上した。国立野生動物疾病管理院は２０２３年「ハゲタカを含む野生鳥類の大量死９件のうち５件の死因が農薬中毒だった」とし「（鳥を追い払うために）通常の農作業に使う量よりもはるかに多くの量が散布されたとみられる」と説明した。

毎年２０００羽のハゲタカが韓国を訪れる中で昨年は１９３羽が救助されて治療を受けた。野生動物の特性上の、人に目につきにくい点を考慮すると、これよりもはるかに多くのハゲタカがけがをしたり死んだりしているものと推定される。この日２４－８７２番を放ったキム・ジェホ北部救助センター獣医師は「ほとんどが農薬中毒、脱力、構造物との衝突で死の危機に直面する」とし「市民の自発的なハゲタカ食堂の運営等を通して個体数を維持している」と話した。

ボランティア次元で２００９年に初めてハゲタカにエサをやり始めたユン・ドヨン生態保存会長は７年後の２０１６年に社会的協同組合を作って本格的に坡州（パジュ）のハゲタカ食堂を運営してきた。高霊（コリョン）・固城（コソン）・巨済（コジェ）・金海（キムヘ）など全国７か所で各市民団体によるハゲタカのエサやり行事が開かれる。坡州は毎年最大８００羽の個体が訪れて最も活発にエサやりが運営されているところだ。ユン会長は「週に３回、一日３００～４００キログラムのエサを準備するのが容易なことではない」としながらも「ソル（旧正月）正月にはハゲタカが好きな内蔵類を特別食として準備した」と話した。

ユン会長は、去年片足を失って障害を持つハゲタカが特に記憶に残っているという。心配しながら一生懸命エサやりをしたところ、今年また坡州を訪ねてきて、エサをくれた人は分かっているといったように彼の頭上でぐるぐる旋回していたという。ユン会長は「人間も久しぶりに会えばうれしいが、元気に生きて帰ってきたハゲタカを見てとてもうれしい気持ちになった」と話した。

一部ではハゲタカにエサを与えることは「エコシステムへの過度な介入」と疑問を呈する人もいる。これに関連してユン会長は「絶滅危惧種の個体数を維持してこそ地域エコシステムの食物連鎖も保存することができる」とし「地域エコシステムを研究して管理するために政府次元の関心が切実だ」と強調した。