「元気に過ごしているという事実が悲しい」あふれてきた涙…セウォル号９周忌＝韓国

「君はそんなふうにして逝ったが、残された私たちはどうやって生きていったらいいのか。それでもどうにか元気にやっている。こうして元気に過ごしているという事実が悲しい」。

淡々と手紙を朗読していたイ・ヨンスさんがしばらく涙声になると、あちこちからすすり泣きが聞こえてきた。イさんは２０１４年４月１６日のセウォル号惨事で亡くなった檀園（ダンウォン）高等学校２年生６班イ・ヨンマン君の兄だ。イさんは「君の死だけを特別に記憶しようとするのではなく、すべての死が慰労を受け、すべての生命が尊いのだという事実を知らせたかった。君と交わした約束が、９年間の誓いが皆から遠ざかっていくような気がしてとても怖い」として犠牲者を追慕した。

◇９周忌記憶式に２０００人出席…　１０周忌委員会発足宣言

１６日午後、京畿道安山（キョンギド・アンサン）の花郎（ファラン）遊園地でセウォル号惨事犠牲者をしのぶ「セウォル号惨事９周忌記憶式」が開かれた。４・１６セウォル号惨事家族協議会は子どもたちを記憶しようとの趣旨で追悼式ではなく「記憶式」という表現を使ってきた。記憶式には犠牲者家族ら２０００人余り（警察推算）が集まった。

犠牲者のための黙祷で始まった記憶式は追悼の挨拶の朗読、惨事犠牲者数と同じ人数の市民３０４人の大合唱、「１０周忌委員会発足宣言文」朗読、惨事犠牲者家族のイ・ヨンマンさんの手紙朗読、追慕公演の順に行われた。追悼の挨拶を読み上げた趙承煥（チョ・スンファン）海洋水産部長官は「犠牲者一人ひとりの冥福を祈る」とし「惨事が残した胸の痛い犠牲と教訓を胸中に再確認し、これ以上恐れと悲しみではない、希望と生命があふれる安全な海にしていく」と述べた。

◇「４・１６生命安全公園の着工」要求…保守団体は反対集会

犠牲者家族は４・１６生命安全公園の建設と責任者処罰などを改めて求めた。４・１６家族協議会運営委員会のキム・ジョンギ委員長は追悼の挨拶を通じて「聖域なき真相究明と責任者処罰で安全な社会を作り、私たちの子供たちの名誉を回復するまで、９周忌を基点にセウォル号運動で拡散していく」とし「国家と安山市と国会は一致協力して必ず年内に４・１６生命安全公園を着工するように役割を果たしてほしい」と訴えた。

記憶式は午後４時１６分犠牲者を追慕するサイレンを１分間鳴らすことで終了した。だが、行事場所周辺では騒乱が続いた。保守志向市民団体などが４・１６生命安全公園建設反対集会を開いたためだ。該当集会出席者は「４・１６生命安全公園が政治的利用道具の延長線にすぎない」としながら「（安全公園敷地である）花郎遊園地を市民に全て返してほしい」と主張した。集会出席者は最近、各地に４・１６生命安全公園建設反対の横断幕を掲げて、安山市に３万４０００人余りが署名した建設反対署名書も提出したという。

◇与野党指導部が全員出席…副首相は６年ぶりに不参加

この日記憶式には趙長官と任太熙（イム・テヒ）京畿道教育長をはじめ、与党「国民の力」の金起ヒョン（キム・ギヒョン）代表や野党「共に民主党」の李在明（イ・ジェミョン）代表、正義党の李貞味　（イ・ジョンミ）代表ら与野党指導部が全員出席した。ただし韓悳洙（ハン・ドクス）首相と李周浩（イ・ジュホ）副首相兼教育部長官は参加しなかった。過去６年間に開かれた記憶式には副首相兼教育部長官が毎回出席した。これに対して追悼の挨拶を朗読したキム委員長は「セウォル号惨事と犠牲者、遺族に対する国家の立場」としながら寂しさを表した。

米国・日本出張の関係で記憶式に参加しない金東ヨン（キム・ドンヨン）京畿知事は廉泰英（ヨム・テヨン）経済副知事が代読した追悼の挨拶辞を通じて「遺族と生存犠牲者、そしてセウォル号を記憶している数多くの市民と志を同じくする」とした。海外出張日程を調整して行事に出席した李民根（イ・ミングン）安山市長は「１０周忌である来年にはもう少し和合をして癒やされた安山になるよう希望する」と述べた。

◇仁川では一般人犠牲者追悼式

仁川富平区（インチョン・プピョング）の仁川家族公園セウォル号追慕館でも９周忌を迎えて追悼式が開かれた。仁川家族公園内セウォル号追慕館には安山檀園高等学校の生徒と教師の犠牲者を除いた一般人犠牲者のうち３９人の納骨壺と位牌が安置されている。４・１６財団が主催したこの日追悼式には犠牲者遺族と劉正福（ユ・ジョンボク）仁川市長、韓唱燮（ハン・チャンソプ）行政安全部次官、都成勲（ト・ソンフン）仁川市教育長ら２００人余りが出席した。セウォル号一般人犠牲者遺族協議会のチョン・テホ委員長は「惨事が繰り返されないように未来世代が安全社会で生きていけるように助けてほしい」と訴えた。劉市長は「安全に妥協はあり得ない。生命と安全の価値を最優先にする」と述べた。