韓国旅行「コネスト」 世界を席巻するK-POP、韓国産業化の成功公式を辿る。韓国の芸能ニュース
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世界を席巻するK-POP、韓国産業化の成功公式を辿る

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14回目の記事を最後にこのシリーズを終え、風前の灯火のような国家の未来を心配して各自の安易さを嘆く21世紀版「是日也放声大哭(声を放って大いに慟哭するのはこの日をおいてない)」でも書くべきなのだろうかと思ったが、すぐにそんな考えを引っ込めた。暗いニュースや暗鬱な展望はすでに巷にあふれているから。明るい気勢の成功ストーリーを技術革新と産業化理論の側面から書けば、読者も筆者もしばらくは満たされた気持ちになるだろう。

今日は世界を席巻しているK-POPの話だ。K-POPの成功を崇める、最近の言葉で「国ポン(盲目的な愛国主義)が湧き上がる」ような描写はさて置くことにしよう。K-POPは雇用を創出して経済成長に寄与し、外貨を稼ぐ筆頭輸出産業になった。文化産業であり知識産業であり、創意産業だ。韓国があれほど手に入れたがっていた高付加価値サービス業だ。

◇「模倣から革新へ」モデルで成功

K-POP産業化の成功は韓国の産業化成功公式から外れていない。故キム・インス高麗(コリョ)大学教授は革新理論分野の世界的名著『Imitation to Innovation(模倣から革新へ)』で韓国製造産業の成功要因を一言で整理した。まず先進国の製品を模倣して力を蓄積しながら次第に改良していき、利益が出てくるようになれば惜しみなく研究開発に投資して、ついに自ら革新を創り出すことになるというものだ。小さな内需市場の限界を克服しようとグローバル市場をターゲットとするのも輸出志向韓国産業の特徴だ。がむしゃらな労働(練習)量とそれに耐える根性も過去の産業化時代から受け継いだ。K-POPは製造業強国・大韓民国の産業化成功公式を文化サービス産業に適用した成果だ。

K-POP産業の核心である企画アイドルは韓国が発明したフォーマットではない。伝統的な大衆音楽ビジネスは商業的潜在力があるミュージシャンが優れたエージェントと出会って大型音盤配給会社を通じて成功する、言ってみればピックアップ方式で作動した。映画『ボヘミアン・ラプソディー』におけるグループの「クイーン」のストーリーがそれだ。現代的なアイドルグループは芸能事務所が年の幼い練習生を選抜・育成してデビューさせる方式、言ってみればローンチ(launching)方式だ。企画型アイドルの元祖は1986年にデビューした米国のニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックを挙げることができる。アイドル体系の花を咲かせたのは米国のバックストリートボーイズ(1996)と英国のイン・シンク(NSync、1997)から見ることができる。韓国のH.O.T.がデビューした年が1996年なのでK-POPアイドルも製造業のようにすばやい追撃者(fast second)戦略を取ったことが分かる。他の産業部門のようにK-POPも日本を積極的にベンチマーキングし、世界市場進出の橋頭堡としたのも日本だった。デビュー17周年をむかえたマルチエンターテイナーグループSUPER JUNIOR(スーパージュニア)のモデルは日本のSMAPから見出すことができ、元祖韓流スターBoAのモデルには安室奈美恵がいる。企画アイドルという革新は米国・英国・日本で芽生えたが、これを発展させて結実させたのは韓国だ。

◇「公正な試験台」と認識されるオーディション

キム・インス教授は上記の著書で韓国社会の高い教育熱も成功要因に提示した。教育熱の高さや民族性は革新理論の論題ではないにも関わらず無視することはできなかったはずだ。韓国社会で高い教育熱が現れた理由は下記の通りだ。まず、旧韓末身分制の撤廃と国の崩壊、続く日帝強占期、解放と土地改革、そして朝鮮戦争で階層構造が完全にリセットされて誰にとってもスタートラインが同等になり平等な機会が与えられた。2つ目に、資本主義を自ら興したり適時に導入できないために、重商主義も産業革命も起きない国で、せめて唯一の出世道は国家が掌握する科挙試験に及第して官職につくことだった。これは統一新羅時代以来、千年近く勉強中心の能力主義と試験第一主義が刻印された結果だ。

世界的に能力主義が引き起こす不平等が正当化されることを警戒しなければならないという声が高い中で、とりわけ韓国ではガチガチの能力主義が今も通用している。K-POP産業では科挙試験・学力考査・修学能力評価の場所をオーディション番組が占めている。オーディションという競争の舞台は無限の競争、勝者一人勝ち、エリート主義の正当化機制だ。オーディションはアイドルを越えてヒップホップ・トロット(韓国演歌)・重唱・ストリートダンスに拡張された。K-POPの能力主義世界観では後天的努力で克服するのが難しい容貌や身長まで能力値の範疇に入れる。視聴者の投票を左右する話題性と認知度も正当な資源と認められる。K-POP産業は韓国的能力主義と競争主義をベースに成長したのだ。だがMZ世代は能力主義に驚くほど友好的だ。勉強と比較して音楽産業は出身地域や家庭環境に関係がなく、自分の努力だけで成功できる公正と公平な競争環境だと感じているためだ。K-POPファンはアイドルの歌とダンスだけでなく情熱と努力、さらには性格を高く評価する。

韓国社会の教育の熱意は格別な私教育体系を生み、韓国の教育体系は私教育と公教育の官民パートナーシップだと言っても過言ではない。大学入試のための私教育体系が地域の補習塾から大型塾まで垂直体系を構築しているように、K-POP私教育体系は地域のダンススクールから時価総額7兆ウォンの大型芸能事務所まで垂直体系を構築している。数年間、練習生を教える芸能事務所は教育機関であり学閥だ。主な企画事務所に「合格」したこと自体がスペックになる。4大芸能事務所に入ることはいわゆるSKY大学入学に肩を並べるよりも何十倍難しいことだろう。能力主義・競争主義・エリート主義の集大成である学閥主義がK-POPで再現されたといえよう。HYBE(ハイブ)・SM・YG・JYPの4大芸能事務所のトップのうち、名門大出身が多いのは果たして偶然だろうか。

◇先を行くIT技術を利用したビジネスモデル

情報通信技術を利用した革新的ビジネスモデルを素早く取り入れたこともK-POP産業の成功要因だ。さらに進歩した技術を採用するのは後発者の利点だ。K-POPはYouTubeに代表されるグローバルメディア、サブスクリプション経済とプラットフォームビジネスモデル、SNSを利用したリアルタイム疎通、比較的最近登場したショートフォーム(short-form)ビデオ、消費者オーダーメード型コンテンツ生産様式を十二分に活用している。韓流草創期には海外の特定市場に進出する戦略を取ったが、今は現地アルバムを発売したり放送に出演したりする必要が少なくなった。過去のように音楽をCDのような物理的メディアに入れる必要がないため音盤製造と流通過程が消えた。音源はアップルミュージックやSpotify(スポティファイ)などを通して世界同時公開も可能になり、YouTube・TikTok・Vアプリ・インスタライブのようなプラットフォームで消費者と直接つながることができる。一度製作してアップロードしたコンテンツを繰返し再生する限界費用はゼロ(0)だ。スケールアップに費用と時間がほとんどかからない。限界費用ゼロ財貨の間では偏り現象が現れる。成功的なコンテンツは再生回数が数億、数十億に達する。K-POPはジェレミー・リフキン氏が述べた「限界費用ゼロ社会」の特徴をいち早く看破した。関心と再生回数イコール資本だ。2022年をヒットした新人グループNewJeans(ニュージーンズ)が『Attention』を歌ったのは象徴的だ。

各種K-POPコンテンツはオンライン動画プラットフォームに高解像度、高画質、高音質で無料公開される。K-POPミュージックビデオ(MV)をYouTubeに掲載し始めた2000年代初頭、海外の会社は巨額の製作費を投資したコンテンツをオンラインに公開するケースが珍しかったがK-POPは果敢だった。グローバル視聴者は高品質のコンテンツを無料で楽しみ、審美的・音楽的快感を得てK-POPに関心を持ち始める。サブスク経済とプラットフォームビジネスがサービス初期に無料でサービスを提供して利用者を囲い込むメカニズムと全く同じだ。一旦「入門」すればアルゴリズムが提案するK-POPコンテンツを芋づる式に見ることになり本格的にハマっていく。ファンになった消費者はアルバム・グッズ・コンサートに財布を開いてアイドルの後見人を自任することになる。

◇製造業育成戦略に似ているK-POP支援

K-POP産業の成功に政府をはじめとする公共部門の役割が小さくなかったことも興味深い。製造業育成戦略が創意産業に適用された。文化体育観光部、韓国観光公社、韓国放送公社、アリラン国際放送は支援するものの介入しない方式でK-POP産業を支援した。国民の税金と受信料で海外K-POPコンサートを開催した。放送局は音楽番組をPDやグループのメンバーがそれぞれ撮影したもの等、オーダーメード型派生コンテンツで直接加工して無料配布する。支援はあるものの、規制や介入がない創意産業は思う存分羽を広げている。

高速成長の陰を避けることはできない宿命もK-POP産業で繰り返されている。最近歌手イ・スンギとチュウ(キム・ジウ)の「精算イシュー」で大きくなった芸能事務所と所属芸能人の間の非対称的関係はK-POPの未来のために改善されなければならない。無限競争体制でやむをえず発生するいわゆる「人気を得られなかった」人材にどんな代案を保障するのかも、堂々と立派に産業化したK-POPが冷遇してはいけない課題だ。K-POP産業は追撃を終わらせて世界を先導する創意産業になった。K-ドラマが後に続く中で、今後登場する他の創意産業の手本になるK-POP産業は陰を取り払って飛躍しなければならない。

パク・サンウク/ソウル大学科学学科教授
COPYRIGHTⓒ 中央日報日本語版  2023年01月16日 16:13
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