ユーチューブ購読者1650万人「ワンミリオン」…Ｋダンスの聖地に

イ・ヒョリ〔ピンクル（ＦＩＮ．Ｋ．Ｌ）〕、ソンミ〔Ｗｏｎｄｅｒ　Ｇｉｒｌｓ（ワンダーガールズ）〕、ヒョナ〔４ｍｉｎｕｔｅ（フォーミニッツ）〕、ヒョヨン（少女時代）、ＣＬ〔２ＮＥ１（トゥエニィワン）〕…。Ｋ－ＰＯＰガールズグループの中でも「ダンス」と言えば名前が挙がる彼女たちには共通点がある。それは振付師リア・キム（Ｌｉａ　Ｋｉｍ、キム・ヘラン、３５）の元を経た弟子だということ。ＳＭ・ＹＧ・ＪＹＰなど、それぞれ所属する事務所は違っても、彼女たちにはリア・キムと一緒に汗を流した時期があった。

Ｋ－ＰＯＰ市場が爆発的に成長し、リア・キムが代表振付師として率いる「ワンミリオン・ダンススタジオ」（以下、ワンミリオン）もＫダンスの聖地として生まれ変わった。動画プラットフォームを媒介として「聞く」音楽から「見る」音楽に中心軸が移動してきたと言うならば、毎日新しい振り付け動画がアップロードされるワンミリオンのユーチューブチャンネルは自分で「踊る」音楽へと新世界を開いた。開設４年で購読者数１６５４万人を記録し、加入者のうち９５％が海外居住者だ。これはＫ－ＰＯＰのあらゆるミュージックビデオが流通している「１ｔｈｅＫ」（１７２３万）のようなプラットフォームに匹敵する規模だ。リア・キム、メイジェー・イ（Ｍａｙ　Ｊ　Ｌｅｅ）など所属振付師を中心としたファン層も生まれた。ナイキ・ウィメンズは最近リア・キムなどダンサー６人をグローバルモデルに抜擢した。

ソウル論硯洞（ノンヒョンドン）のスタジオで会ったリア・キムは「世界大会に出ても観客が最大２０００人程度だが、私たちの動画を何百万、何千万人が見るということが今でもとても不思議な気持ちだ」と述べた。２００７年に４ＤＡネクストレベル世界大会でロック部門で優勝し、翌年同大会でポッピン部門優勝とロック部門準優勝を獲得したリア・キムは「当時は『１等』のために踊ったが、今は一緒に楽しむことの方がはるかに重要」と言い、「競争の圧迫感が消えると、自分のダンスにずっとよく集中できるようになった」と付け加えた。

リア・キムは中学３年生だった１９９９年にマイケル・ジャクソンの来韓公演のステージをＴＶで見てダンスの魅力にはまった。大学進学も放棄しダンス教室を探し回り、基本技をマスターし、高校卒業後に有名ダンスチーム「ウィナーズ」に入って英才育成クラスを教えた。ヒョナ・ヒョヨン・ＣＬ・ミンらはその時に出会った弟子たちだ。初期の成功を味わったわけだが、それも長くは続かないということも早くに悟った。「大会で優勝しても３日間だけ喜んだ。世の中のすべてを手にした気分だったけれど、現実はまだコオロギが出る地下レッスン室と考試院（コシウォン、民間の寮のような住居）を行き来する生活でしたから」

２００５年、リア・キムは振付をしてイ・ヒョリと一緒に踊ったサムスン・エニコールの広告「エニモーション」が大ヒットしたが、暮らし向きはあまりよくならなかった。ダンサーへの待遇は依然として良くなかったし、原作者の権利は認められなかったためだ。一足遅れて歌手練習生として２年という時間を送ったり『偉大な誕生２』（２０１１）や『ダンシング９』（２０１３）のようなオーディション番組に顔を出したのも、すべて同じ理由からだ。当時、弟子であるヒョヨンとユリから審査を受け、敗退して衝撃を受けたこともある。

リア・キムは「あの時どん底に落ちたから再び上がってくることができた」と告白した。「一緒にダンスをした人たちは皮肉を言ったけれど、私の名前が知られているきっかけになりました。その後担当したソンミの『２４時間が足りなくて』『カシナ』、ＴＷＩＣＥ（トゥワイス）の『ＴＴ』などが相次いで成功し、誰が振り付けを作ったのか知りたがる人も出てきたし、作曲家•作詞家のように振付師も立派な職業のように認識され始めました。事実、それまでは踊ると言うと、生計も立てられないという認識が強かったんです。ダンスは趣味で踊るものだろうって」

振り付けを作成するプロセスは思ったより急いで行われる。歌が完成し、与えられた時間は２週間余りに過ぎない。リア・キムは「依頼を受けると曲のキャラクターを先につかんで進行する」と言い「映画からインスピレーションを多く得る方だ」と明かした。映画『ブラックスワン』からモチーフを得て『２４時間が足りなくて』を作るというようにだ。Ｉ．Ｏ．Ｉ（アイオーアイ）やＥＶＥＲＧＬＯＷ（エバーグロー）のように初めて会う場合は振り付け作業の先に打ち合わせを通じて最大限親しくなれる時間を持つ。彼女たちの本来の姿がダンスにも溶け込むことを願う気持ちからだ。

２０１４年の年末、リア・キムの地下室を転々としたブレイン・ダンス・スタジオを畳み、日当たりのいい地上３～４階にワンミリオン・ダンス・スタジオをオープンした。クロップトップとレギンスを着るために１カ月半で１０キログラムを減量し、踊るたびに流れ落ちてくる髪も切ってしまった直後だった。失恋した人みたいに新たな出発をしたのだ。

先月発刊したエッセイのタイトルも『私の黒いボブヘア（原題）』（アルテ）だ。「切りっぱなしボブ」に変身した後、あらゆることがうまくいき始めたという理由からだ。ワンミリオンは１１月に聖水洞（ソンスドン）の単独ビルに引っ越しを控えている。所属振付師だけで２０人、昨年は年間売上３０億ウォン（約２億７０００万円）規模に成長した今、リア・キムはどんなことを夢見ているのだろうか。

「当初の目標の『ワンミリオン』はすでに超えたが、より多くの人が気楽に踊れる空間になったらいいと思います。スターバックスやマクドナルドに行くように職場への行き帰りに気軽に立ち寄って踊れる空間です。実際、トレーニングで得た高い完成度がＫダンスの利点ではありますが、工場で量産したかのように画一化された姿が欠点でもあるじゃないですか。自分自身に心酔して踊る人ならば、誰もが踊りが上手い人だと思います」