質の低い雇用が支える韓国の過去最高の雇用率

雇用率は過去最高、失業率は小幅減少。

統計庁が１４日に発表した５月の雇用動向を要約するとこうなる。輸出と内需、投資など主要経済指標が改善される状況で景気回復の最後の関門という雇用部門でも数字上では肯定的な信号が出てきたのだ。

先月の就業者数は２６８２万４０００人で１年前より３７万５０００人増加した。３～４月の２カ月連続で４０万人以上増えたのと比較すると増加幅は減ったたが、４カ月連続で３０万人以上増加する安定した流れだ。産業別では建設業（１６万２０００人、８．８％）、教育サービス業（８万人、４．３％）、不動産業と賃貸業（５万８０００人、１０．３％）などで増えた。運輸業（マイナス４万４０００人、マイナス３．１％）と金融・保険業（マイナス２万人、マイナス２．６％）などは減少した。

１５歳以上の雇用率は６１．３％で前年同月比０．３ポイント上昇した。５月基準では関連統計を作成し始めた２０００年以降で最も高い。経済協力開発機構（ＯＥＣＤ）の比較基準である１５～６４歳の雇用率も６７％で昨年より０．７ポイント上がった。

失業者は前年同期より２０００人減った１００万３０００人だった。失業率は前年同月比０．１ポイント下落した３．６％で、１５～２９歳の青年層の失業率も０．４ポイント低い９．３％を記録した。

普段ならば景気回復の信号弾だと喜ぶべき数値だ。だが中身を見るとそうではない。雇用率が高まったことが「良質の仕事を求めること」が容易になったという意味ではないからだ。今回の指標改善を雇用回復の本格的な信号弾と解釈するのは無理との見方が支配的だ。

ひとまず雇用の核心と言える製造業の就業者数が前年同月比２万５０００人減った。構造調整などの影響がまだ残っているためだ。昨年７月以降１１カ月連続の減少だ。これに対し自営業者の就業者数増加傾向は止まらなくなっている。５月の自営業者は前年同月比５万１０００人増えた。

韓国労働研究院のソン・ジェミン動向分析室長は「早期退職で新しい仕事を探そうとする中高年が増加しているが、企業は中高年の雇用拡大に消極的で、仕方なく創業に追いやられるケースが多い。こうした非自発的創業は良質の雇用と見るのは難しく、廃業率も高い」と話す。

求職断念者が増加したのも良い信号ではない。求職断念者は就業を希望し就業できるが仕事を見つけられなかった人のうち１年以内に求職経験があった人を指す。５月の求職断念者は５０万２０００人で１年前より８万２０００人増えた。これは昨年８月の８万５０００人以降で最も大幅な増加だ。

既存の青年失業者にこうした青年層の求職断念者、就職活動学生などを反映した「青年雇用指標３」は２２．９％で前年同月より０．９ポイント増加した。数字では１１９万人だ。この「青年雇用指標３」は体感青年失業率と解釈される。５月の大幅な就業者増加を牽引したのは５０代以上だった。６０歳以上で２７万８０００人、５０代で１４万人が増加したが、３０代は１万７０００人、２０代は１万人減少した。

企画財政部のキム・イハン政策企画課長は、「５月の就業者増加は建設業の日雇い増加などに起因したことで、２０代中心の青年就職難は厳しさを増している」と話した。５０代以上が占める良質でない雇用は増えたが、青年向けの良質の雇用は減少したという分析だ。新政権はこうした指標を基に雇用創出向けの追加補正予算編成は避けられないと主張する。文在寅（ムン・ジェイン）大統領は１２日の国会施政演説で「格別の対策が至急まとめられなければ青年失業は国家的災害水準に拡大するだろう」と話した。

野党３党の考えは違う。今回の追加補正予算案は初めから法的編成要件に該当しないとし反対の立場を曲げずにいる。

大量失業発生に対する懸念が大きくない上に追加補正予算を通じて作る雇用がほとんど単発のものや公共部門に集中しており、今後財政負担だけ大きくなるという理由からだ。

釜山（プサン）大学経済学科のチェ・ビョンホ教授は、「政府が雇用拡大に焦点を合わせたのは肯定的だが、溝が大きい公務員雇用よりは規制緩和などを通じて民間雇用を増やす方式に政策を旋回する必要がある」と話している。