ポスコ、東南アジアの自動車生産基地に拠点設立

ロール紙のようにぐるぐる巻かれた熱延鋼板がセラミック亜鉛ポットに吸い込まれていく。続いてエアナイフが鋼板の上にコーティングされた亜鉛の膜を精密に削り出す。ポスコが３１日に竣工したタイ・ラヨーン県のアマタシティ産業団地の自動車鋼板工場（ＣＧＬ、溶融亜鉛めっき鋼板工場）は躍動的な機械音であふれていた。幅８０センチメートル、重さ１０トンのロールを完成するのに２０分ほどかかった。現場品質管理担当者のポスコ　のパク・ユンギュン部長（３６）は、「めっきの程度により違うが１トン当たり６００ドルに達する高級製品」と説明した。

ポスコがタイに拠点を確保して東南アジア市場を集中攻略する。今後アマタシティ工場では年間４５万トンの自動車用・家電製品用鋼板が生産される。

ポスコの権五俊（クォン・オジュン）ポスコ会長（６６）はこの日の竣工式に先立ち開かれた記者懇談会で「韓国では鉄鋼での成長は不可能だ。東南アジアで最も強力な自動車生産国のタイを拠点にポスコの発展方向を作りたい」と話した。

２１０４年９月に着工したタイＣＧＬ工場には３億ドル（約３０７億円）が投入された。約２５万１２００平方メートルの敷地に建てられたこの施設で作られる自動車用鋼板はタイに生産施設を置くトヨタと日産、フォードなどの自動車メーカーに供給される予定だ。

自国の自動車メーカーはないが、タイは年間自動車２００万台、東南アジアでの車両生産の半分を占める東南アジア最大の自動車生産基地だ。

その上成長が続いている。中国・上海自動車が進出して来年から２０万台規模の工場を稼動し、６０年代からタイに投資してきた日本の自動車メーカーも設備を拡大し続けている。２０２０年には最大２８０万台規模に成長する見通しだ。１人当たり国内総生産（ＧＤＰ）５９４０ドルで所得に比べ自動車に投資をたくさんするタイ人の性向も市場拡大に影響を及ぼしている。

だが、自動車用鋼板供給は需要に追いついておらず対外依存度が高い。２０１３年に日本のＪＦＥと新日鉄住金がそれぞれ４０万トンと３６万トン規模の自動車鋼板工場を竣工して稼動中だが依然として供給量が不足している。１９９８年に家電用鋼板工場を建ててタイに進出したポスコが投資を決めた理由だ。

現在ポスコをはじめ世界の鉄鋼業界は供給過剰で困難を経験している。９０年代以降に大幅に規模を拡大しながら鉄鋼材価格を引き下げてきた世界２位の中国・河北鋼鉄なども例外ではない。５位の宝山鋼鉄と１１位の武漢鋼鉄は昨年末から買収合併を通じた構造調整に入った。さらには中国の鉄鋼材輸出を牽制する米国の保護貿易主義政策でポスコなど韓国製まで一緒に関税爆弾を浴びるなど危機だ。容易ではない状況を抜け出すために自動車市場に対する投資を増やしているものだ。

権会長は「現在世界で９億台に達する自動車は１０年後に１０％ほど増えるとみられ、ポスコはこの市場を逃すことはできない」と話した。

タイ工場稼動でポスコの自動車用鋼板生産能力９００万トンのうち海外生産は年２２５万トンに増加した。２０１８年までに販売１０００万トン体制を完成する計画だ。ポスコはこのほかにもギガスチール（先端高強度鋼材）など高付加価値製品に集中している。

この日のポスコＣＧＬ工場竣工式にはタナサック副首相、ソムサック県知事、ノ・グァンイル駐タイ大使、自動車業界関係者ら２００人余りが参加した。