30年ぶりに訪れた春の風景＝全羅南道・和順

全羅南道和順（チョルラナムド・ファスン）は亭（小さなあずま屋）が点在している。無等山（ムドゥンサン、１１８７メートル）、萬淵山（マニョンサン、６０９メートル）など、湖南（ホナム）の名山が峰を連ね、同福湖（トンブクホ）や支石川など水がうねり巡る和順の地には一休みするのにちょうどいい亭子が多い。

和順が誇る和順赤壁にも傑出した亭が多い。昨年、和順赤壁は３０年ぶりに一般に再開放され、全国の名所として脚光を浴びた。赤壁で最も優れた景観を誇るといわれるノルモク赤壁（イソ赤壁）を正面に望む亭が望郷亭（マンヒャンジョン）と望美亭（マンミジョン）だ。この２つは共にその歴史は短い。１９７１年と８５年、２度の同福ダム工事で水位が高まり、当時１３集落５８０世帯余りが故郷を離れたが、水没民の行き場のない悲しみを癒やすために建てられたのが望郷亭だ。望美亭は赤壁に向かい合う丘にあったが、水没前の８３年に現在の位置に移された。

和順赤壁は高さ１００メートルの絶壁だ。このうち高さ３０メートルは貯水池ができたことにより水没した。それでも貯水池を挟んで亭から正面に望む赤壁は「雄壮」の一言に尽きる。和順赤壁は冬の間は安全面から閉鎖されて先月２１日に開放された。昨年にはなかった展望台もつくられた。この展望台からノルモク赤壁と望郷亭を１つのフレームの中に収めることができる。

和順赤壁の上流に建てられた勿染亭も外せない。韓国の放浪詩人である金サッカ（金炳淵、１８０７～６３）が和順でその生涯を閉じる前、急き立てるようにして詩を詠んだという場所だ。それだけ秀麗な景色を誇る。勿染亭は周りを桜が取り囲んでいて、それだけでも十分に素晴らしい。満開の桜の花をまとった勿染赤壁の壮快な風景も見ることができる。

赤壁を離れて支石川に沿っていくと、慶全（キョンチョン）線最高の絶景として挙げられる映碧亭（ヨンビョクジョン）が登場する。映碧亭は汽車が行き来する高架鉄橋の近くにある。汽車から眺めると、亭の横をまっすぐ流れる支石川と連珠山（ヨンジュサン、２６８メートル）の調和はまるで１枚の水彩画のようにして目に飛び込んでくる。列車マニアがこの区間を通り過ぎるたびに車窓に寄りかかってカメラを構える理由だ。薄緑色のオオタチヤナギと薄紅色の桜の花まで加わる今が一年で最も美しい。

●旅行情報＝望郷亭と望美亭を見学するには和順郡庁が運営する和順赤壁ツアーに参加するのが唯一の手段。和順郡庁ホームページ（tour.hwasun.go.kr）で予約を受け付けている。週３回（水・土・日曜日）だけのツアープログラムで、１日３８４人のみ参加可能だ。探訪日の２週間前午前９時から予約がオープンとなるが、競争が激しい。ツアー所要時間：約２時間／ツアー参加費：５０００ウォン／和順郡庁文化観光課：０６１－３７９－３５０１。また、映碧亭は慶全（キョンチョン）線、綾州（ヌンジュ）駅から１キロ離れたところにある。勿染亭はナビゲーションで検索すれば出てくる。入場料は特にない。