高齢者福祉、市民が参加する欧州…政府に頼る韓国

アルカイツ・アユア・イグレシアスさん（２９）はスペイン北部バスク地方の高齢者施設を回り、運動療法を教えるトレーナーだ。２０１３年からこの仕事をしている。イグレシアスさんは「高齢者が歩けるようにサポートしている」と語った。高齢者１０－１５人を集めて１時間のプログラムを進行する。教育の内容は体の状態によって異なる。一人で動くことができるグループ、杖をつくグループ、車椅子に乗るグループ、歩行できるが認知症があるグループ、歩行できず認知症があるグループの５段階だ。一人で動けるグループには、ひざを上げたり、大きな布を一緒に持って上げ下ろしする動作などをさせる。腕・足の筋力をつけるためだ。杖をつくグループには床のロープに沿って歩かせ、バランスを取る訓練をさせる。認知症患者にはいくつかの色を表示しておき、特定の色だけを踏ませ、頭脳の使用をサポートする。

こうした運動療法は「シエルブルー（Ｓｉｅｌ　Ｂｌｅｕ）」というプログラムに基づいている。このプログラムは１９９７年に仏ストラスブールでスポーツ科学を専攻した青年２人が開発した。「Ｓｉｅｌ」はフランス語でスポーツ、イニシアチブ、余暇（Ｓｐｏｒｔ、ｉｎｉｔｉａｔｉｖｅ　Ｅｔ　Ｌｏｉｓｉｒｓ）の略字だ。シエルはフランス語の空（ｃｉｅｌ）と発音が同じで、シエルブルーを「青い空」を意味したりもする。こうした名前の非営利協会も作った。このプログラムはフランスの高齢者施設４０００カ所以上で活用され、ベルギー・アイルランド・スペインなどに広まった。

シエルブルーは、市民が立ち上がって持続可能な高齢者福祉プログラムを作った事例だ。このように欧州では生活と密接したイシューに民間が活発に参加する。イグレシアスさんは「政府は人がけがをしたり体調が悪い時にケアをするだけで、予防活動はしない。２０１２年の研究によると、シエルブループログラムに参加した高齢者は転倒してけがをする比率が３５％ほど低かった。それだけ税金もかからなくなる」と話した。

トレーナーは高齢者施設や高齢者が多い地域を訪問し、このプログラムを進行する。福祉施設などがトレーナーに教育費用を支払う。１５人ほどのグループで１時間あたり４０ユーロ（約５０００円）ほどだ。個人あたり３ユーロにならないほどだ。トレーナーは才能寄付で参加して教え、この収益金で生計を維持する。シエルブルー側は収益金の一部を研究資金としても使う。イグレシアスさんは「他の職場に通えば収入はもっと多くなるかもしれないが、高齢者の世話するという社会的な責任感を持って仕事をしている」と話した。

高齢化の解決法も民間が模索する欧州とは違い、韓国では市民運動が政府批判の役割に焦点を合わせている。チョン・サムヒョン崇実大法学科教授は「韓国の市民運動は反政府的な政治活動にとどまり、市民が参加して共同のイシューを開発する段階に進むことができなかった。外国では市民団体が国策事業調整機能を引き受けたりシンクタンクの役割までする」と話した。

シン・グァンヨン中央大社会学科教授は「教育・環境・交通など地域社会の問題に対し、市民が自ら声を出そうとする意識が重要だが、韓国ではまだ他の人がするのを期待する無賃乗車意識が強い」と指摘した。チョン教授は「オンラインコミュニティーやソーシャルネットワークサービス（ＳＮＳ）を通じて共同の声を出す若者が増えているが、こうした動きを健全な市民運動へと発展させなければいけない」と強調した。