マッチ箱ワンルーム忘れさせる…テラスに取り込んだ空＝韓国（１）

美術館でもギャラリーでもない。名が知れた企業の大層な社屋でもない。ソウル上渓洞（サンゲドン）の蘆原（ノウォン）駅１番出口の前、カフェやオフィステル、ワンルームが集まった８階建てのビルだ。この建物は、建てる前に「計画案の審査」だけでキム・スグン文化財団（パク・ギテ理事長）が授与するキム・スグン建築賞のプレビュー賞を受けた。それだけではない。竣工後は米国の建築賞を３つも受賞した。韓国の２人の若手建築家が率いる小規模設計事務所「Ｎ．Ｅ．Ｅ．Ｄ．」が設計した「上渓洞３４５－１プロジェクト」だ。３月にＡＩＡ（米国建築家協会）ニューヨーク支部による優秀賞（Ｍｅｒｉｔ　Ａｗａｒｄ）を受けたこの建物は、ニューヨーク建築家協会（ＳＡＲＡ）賞（Ｍｅｒｉｔ　Ａｗａｒｄ）、ボストン建築家協会（ＢＳＡ）による「ハウジングデザインアワード」（２０１５年１月授賞）を相次いで受けた。

その中でもＡＩＡ賞は米国で指折りの建築賞の１つであり意味も格別だ。出品作１７０点余りの中で「竣工作品」分野で受賞した１３チームに米国建築家スティーブン・ホール、リチャード・マイヤー、デンマーク建築家のビャルケ・インゲルス、日本の建築家・槇文彦ら世界的に有名な建築家が名を連ねているという点からだ。韓国の小規模な新生建築事務所が彼らと肩を並べたのだ。

◆テラス、周辺環境と出会う「中間領域」＝蘆原駅の利用者はこの建物を「１番出口カフェ」と呼ぶ。キム・ソンウ、キム・サンモクの２人の共同代表がデザインしたカフェ内部は、高い天井、黒いコンクリート壁、１・２階の間にロスティングの機械と原木家具など風変わりな景色で目をひきつける。

しかしこの建物がこれまでの建物と最も違う点は、ワンルームなどが位置する６～８階にある。まず、ここには同じような外見の部屋がほとんどない。３階の１４世帯は規模は小さくても超小型ワンルーム（専用面積１２平方メートル、約３．６坪、共用面積含め２２平方メートル）からツールーム型・テラス型・複層型など多様な構造が混じっている。これまでのワンルーム建物が機械的に同じような外見の部屋を配置してきたのとは違う試みだ。２番目、小型ワンルームなのに広いテラスを備えた部屋があるという点だ。

「オフィステル・ワンルーム・ワンルームマンション・コシテル（１人用のごく狭い部屋）・長屋などは全てドアを開けて入れば監獄のようだという点で似通っていた。外の環境と出会える中間領域がないからだ。生活空間はたとえ狭くても、ドアを開けて出て行けば深呼吸して外を眺めることができる空間を必ず作りたかった」。

キム・ソンウ共同代表の話だ。１人世帯が増えながら超小型の住居空間が一層必要な時代に入ったが、韓国社会がワンルームの閉鎖的な環境を当然視してきたという指摘だ。テラスを備えたワンルームと１世帯が７・８階の２階につながった複層は賃貸料が周辺相場より５０％ほど高いのに最初に借り手がついた。ワンルームに息を吹き込んだデザインへの潜在的需要があったということだ。