女性になりたいマッチョの奮闘、映画『ハイヒール』…監督「毒気持って撮影」

忠武路（チュンムロ）の“話術師”チャン・ジン監督（４３）が挑発的な映画『ハイヒール』（６月４日封切り）で戻ってきた。『ロマンチック・ヘブン』（２０１１）から３年ぶりだ。主人公は内面の女性の性を押さえ込むことができずに悩む強力係刑事ジウク（チャ・スンウォン）だ。女性になることを決心した彼の前に、彼の男性的な魅力にひかれている組織暴力ナンバー２のホ・ゴン（オ・ジョンセ）が立ちはだかる。チャン監督はトランスジェンダー（肉体的な性と精神的な性が異なる人）というなじみの薄い素材とアクション・ノワールジャンルの間で、老練な綱渡りの手腕を見せた。彼は「役がぴったりはまった状態で作った映画」と語った。

－－映画から監督と俳優の毒気が感じられる。

「チャ・スンウォンとの３回目の映画だ。チャ・スンウォンはドラマ・広告とは違って映画では大きな成果がない。私もやはりマンネリズムに陥っていて、才能の限界に苦しんでいた。２人ともこのままではいけない、激しく取り組んでみようという思いだった。チャ・スンウォンは本当にきつかっただろう。アクションシーンを撮りながら『もう１回』『改めて』と何度も口にしていた」

－－トランスジェンダーは非常に独特な素材だ。

「性少数者を通じて世の中の普遍的な基準というものが持つ暴力性について語ってみたかった。いかなる傾向も少数だという理由で例外扱いされるのが嫌いだ。別の意見を持つ人は私と違うだけで、私の敵ではない」

－－トランスジェンダーに実際に会ったか。

「トランスジェンダーの友人たちから多くの助けをもらった。彼らが出演もした。ほとんどが同性愛の経験を通じてトランスジェンダーになるという彼らの指摘により、ジウクの少年時期の同性愛の経験を回想場面に盛り込んだ」

－－アクションに何を込めようとしたのか。

「ジウクは映画が作り出した完ぺきなマッチョだ。腕力へのロマンを持つ人々が彼に憧れるように願いながらアクションシーンを撮った。漫画的な想像力も加味した」

－－自分の中に女性らしさを発見したことがあるか。

「高校の時に韓国舞踊をしていて、女性的な身振りが出てくることがある。作家だけをしていたら女性的な感受性がさらに発現しただろうが、演出までしているうちにマッチョ気質を持つようになった」

－－特有のユーモアコードが光る部分がある。

「ジウクが海兵隊の先輩であるトランスジェンダーマダムに『必勝』と敬礼する場面などがそうだ。規則への背任から大きな喜びを感じるというものだ。ノアールジャンルだが、サプライズプレゼントとしてユーモアコードを残しておいた」

－－映画監督を一時は辞めようと思っていたとか。

「興行監督ではないという理由で退出させられるぐらいなら自分の足で出て行こうと考えていた昨年初め、『フォレスト・ガンプ』などを手掛けたロバート・ゼメキス監督（６２）に会った。彼が『私は、君が６５歳になった時に作る映画がとても気になる』といってくれた。その言葉で自省した。６５歳になっても若者たちがくすくすと笑うようなチャン・ジンらしい映画を作りたい」