ガソリン価格が上昇してもさらに渋滞が激しくなる韓国

ソウル大学の大学院生のクォン・スンヤンさん（２８）は３年にわたって自家用車で通学している。最近はガソリン価格が２０００ウォン（約１４２円）台を超えたが公共交通は利用しない。クォンさんは、「米国発の経済危機が起きた時にガソリン価格が１９００ウォン台に上がり、『乗らない方がいいのか』と考えた。ところがいざ１９００ウォン台で維持されると適応してしまった。いまは２０００ウォン台に上がりさらに高くなったが、１０ウォン、２０ウォンずつ上がり大きく負担を感じるほどではない」と話した。

外資系製薬会社営業社員のイ・ギョンワンさんも「ぎゅうぎゅう詰めの公共交通で時間と体力を浪費するよりもまだ自動車に乗る方が良いと思う」と話した。

１月６日から今月１８日までの１０４日間にガソリン価格が連続で上昇しているがガソリン消費と交通量は減らずにいる。韓国石油公社によると、２４日現在全国のガソリンスタンドの平均ガソリン価格は１リットル当たり２０６１．９３ウォンで、前日より０．４２ウォン下がった。しかし、２月に全国平均ガソリン価格が２０００ウォンを超えてからその水準を維持する中で小幅の騰落を繰り返している姿だ。

ガソリン消費量はかえって増えた。韓国石油公社が明らかにした先月のガソリン消費量は５６８万６０００バレルで昨年の同じ時期より４％増加した。ガソリン価格が本格的に上がり始めた今年１月もやはりガソリン消費量は５８２万３０００バレルで前年同期比で４０万バレル増加した。高速道路の交通量も前年同月比で１月は６００万台、２月は４００万台余り増えた。ある大企業の営業社員は、「平日午後に外回りのためソウル市内を走っているがいつも車が多く、渋滞するところはいつも渋滞している」と話した。

専門家らはガソリン価格が徐々に上昇しており習慣的な消費形態は簡単に変わらないと分析する。ソウル大学のクァク・クムジュ教授は「人間は経済学理論のように合理的ではなく、費用と利益変化にすぐには反応しない」と説明した。毎日５ウォン、１０ウォンずつ上がる場合、「この程度なら大丈夫だ」という心理が作用するということだ。

首都圏からソウルに通う市民は自動車を利用する比率が高い。このため公共交通インフラが不足し消費形態が変わらないという指摘も出ている。延世（ヨンセ）大学のキム・ジョンシク教授は、「ガソリン消費は、乗用車が必要な人々の基本消費量があり価格弾力性がない上、乗用車に代わる適当な交通手段もない」と話した。キム教授は「先進国と違い首都圏の広域大衆交通網が構築されておらず、乗り換え駐車場費用が高いという点などインフラ不足が石油類消費減少の障害物だ」と主張した。

サムスン経済研究所のキム・ファヨン首席研究員は、「すでに１４カ月以上ガソリン価格が上昇しており、消費者に耐性ができたので価格管理政策だけで消費が動くという考えは危険だ。消費を人為的に減らすよりも、インフラ確保、エネルギー効率性補完、認識改善などを考慮した長期的な対策づくりが必要だ」と指摘した。