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韓国の伝統酒 第4回 竹瀝膏(チュンニョッコ)

한국전통주 죽령고
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梨薑酒(イガンジュ)甘紅露(カモンロ)とともに朝鮮三大名酒のひとつとされている竹瀝膏(チュンニョッコ)。青竹を加熱するとにじみ出てくる液・竹瀝(ちくれき)を水や酒と一緒に蒸留して造る伝統酒だ。
竹瀝は昔から肝臓や心臓、胃、肺などの病気に効く薬としても使用されてきた。朝鮮時代末期に書かれた「梧下記聞(オハギムン)」という史料には、東学党の主要人物で農民運動家としても知られるチョン・ボンジュンが官僚に捕らえられ拷問を受けた際、竹瀝膏を3杯飲みたちまち体が回復したというその効能にまつわる逸話が記されている。

以後「竹瀝膏ほど身体を動かす名薬はない」という言葉ができたほど、竹瀝膏は薬用酒としても名高い酒だ。名称に使われている「膏(コ)」は、上質な蒸留酒にのみ使われる漢字であると共に最高級の薬用酒だということも表している。
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亡き母から受け継いだ伝統の味を今に伝える
ソン・ミョンソプ氏
ソン・ミョンソプ氏
竹瀝膏を昔ながらの伝統的な醸造法で造り続け、今に伝える蔵元がある。それが酒の主原料である青竹の産地として有名な全羅北道(チョルラプット)に位置した泰仁(テイン)醸造所である。

酒造りを手掛けているのは2003年に韓国の無形文化財6-3号に指定、2011年には農林水産食品部(部は日本の省に相当)の指定する伝統酒部門、韓国食品名人第48号にも認定されたソン・ミョンソプ氏だ。
酒造の家系に生まれ、幼いころから酒に触れてきた名人。酒造りの技術は、母方の祖父、ウン・ジェソン氏(1864~1945)から引き継がれてきた。当初韓医院を営んでいたウン・ジェソン氏は薬として使用する様々な酒を造っており、そのひとつが竹瀝膏だった。
無形文化財の認定証
無形文化財の認定証
大韓民国食品名人の認定証
大韓民国食品名人の認定証
ソン・ミョンソプ名人の母、ウン・ゲジョン氏がその技術を受け継ぎ、名人は母親から酒造りを教わった。名人の父親は幼いころ病にかかり、母親は夫を看病しながら少しでも治癒に繋がればと愛情を込めて竹瀝膏を造り続けた。
ソン・ミョンソプ名人は父親が病で倒れた後、母親の酒造りを手伝いながらノウハウを身につけ、母亡き現在も家族の愛情が溶け込んだソン家代々の伝統の味と技術を守り続けている。
人の手のぬくもり、真心で作るこだわりの名薬酒
竹瀝膏は醸造が困難で手間のかかる酒と言われているが、その一番の要因は少しずつ抽出する竹の液・竹瀝の採集にある。必要な量を採るためにはたくさんの青竹が必要なだけでなく、日数もかかる。

また採集した竹瀝を極上の竹瀝膏に仕上げるためには、もうひとつの主原料である米や酒造りに欠かせない麹などの質も重要だ。泰仁醸造所では米も自家栽培しており、その米を使い麹も自家製を使用している。時間と手間はかかっても、朝鮮時代から伝わる手法に従い、人の手によってひとつひとつ造り上げる酒こそ一級品と考える名人のこだわりである。
竹瀝膏は35度とアルコール度数が高い。だがその度数からは想像できないほど、飲んだ後醒めるのが早く、頭痛や胸焼けなど二日酔いの症状が現れないことで有名であり、むしろ身体が軽くなるという人もいるほどだ。

竹林を思わせる爽やかな香りと、さっぱりとして後腐れがないやわらかい口当たり。口に含んだ瞬間喉を熱くさせ、鼻の奥まで伝わる豊かな香りは、一度飲んだら忘れられない。
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一滴一滴に込める想い。酒造りの核は名薬・竹瀝の抽出にあり
加熱すると染み出てくる竹瀝
加熱すると染み出てくる竹瀝
竹瀝は薬用酒である竹瀝膏の特徴を最も表すものであり、また竹瀝膏独特の風味を出すのに欠かせない原料だ。そのため竹瀝の抽出は竹瀝膏の製造において核となる重要な作業であり、また最も手間のかかる仕事でもある。
竹瀝膏の製造工程
竹瀝の採集は、まずそれに適した竹を探すことから始まる。3年以上育ち空に向かってすっと伸びた健康な竹を長年の経験で培った感覚で採取していく。竹は約20センチの棒状に切り、膝丈ほどの甕いっぱいに詰める。この甕を受け皿となるもう一つの甕の上にひっくり返して載せ、隙間を韓紙で埋めた後、黄土(ファント)で甕を覆い加熱時の熱によるひび割れを防ぐ。
竹を甕いっぱいに詰める
竹を甕いっぱいに詰める
竹を甕いっぱいに詰める
竹を甕いっぱいに詰める
黄土で甕を覆う
黄土で甕を覆う
受け皿の周りに乾燥した大豆の茎を敷き、一度大きく火をつける。火がおさまってきたら甕がすっぽりとかぶるまで籾殻で覆う。このようにすることで、籾殻の中で数日間火が消えずに熱が保たれ、甕の中の竹が熱されることによって、竹瀝が染み出し受け皿にたまっていく。
大豆の茎を敷き、火をつける
大豆の茎を敷き、火をつける
火がおさまったら籾殻で甕を覆う
火がおさまったら籾殻で甕を覆う
5日ほど放置し、火が消え熱も冷めてから上に載せた甕を持ち上げると、受け皿には透き通った茶色の天然竹瀝が顔を出す。もし十分に加熱される前に雨が降り火が消えてしまった場合、全ての過程が台無しになってしまうため、天候の判断が最も肝心だという。だが、毎回予想通りにはいかないもの。「最後の決断は天に任せている」と何でもないように語る名人に、自然と共に酒造りを行なうソン・ミョンソプ氏の偉大さと寛大さが感じられた。
5日ほど置く
5日ほど置く
受け皿にたまった天然竹瀝
受け皿にたまった天然竹瀝
竹瀝が採れたら、竹瀝膏造りにおいて2つ目に重要な作業、蒸留の段階に入る。泰仁醸造所では伝統的な手法に従い陶器製の蒸留器を使用している。上部と下部の二つのパーツに分かれており、上部には竹瀝に3~4日間浸けこんだ5種の薬材(竹の葉、松の葉、生姜、セキショウ、桂皮)をたっぷりと詰める。下部には醸造所で30日間熟成させた自家製のスルドッ(ベースとなる焼酎)を注ぎ、上部と下部を合体させ、窯の上に置き弱火で6~8時間加熱する。
5種の薬材
5種の薬材
竹瀝に3~4日間浸けんだものを使用
竹瀝に3~4日間浸けんだものを使用
ベースとなる焼酎、スルドッ
ベースとなる焼酎、スルドッ
窯で6~8時間加熱
窯で6~8時間加熱
独自の風味をもつ竹瀝膏
独自の風味をもつ竹瀝膏
その際、蒸留器の上に水を張った皿を置いておくのがポイントだ。沸騰して気化した酒が上昇し、皿の底に当たって冷え再び液体となって筒から出てくる。その過程で竹瀝にたっぷり浸けた薬材の効能を吸収しながら流れ出し、独自の風味をもった高級薬酒、竹瀝膏となるのである。
持っていれば技術、伝えれば文化。竹瀝膏を通して韓国の酒造文化を後世に
妻との二人三脚で紡いできた竹瀝膏
妻との二人三脚で紡いできた竹瀝膏
朝鮮時代の人々が生み出した酒造技術を現代に伝える蔵元・泰仁醸造所とソン・ミョンソプ名人。衛生面の整備など国の取締りが厳しくなり、自家製の酒を醸造・販売するのが難しくなった今日。蔵元は少しずつ姿を消し、今や伝統的な方法を保ちながら醸造所を切り盛りしていくことは簡単ではない。

「人々は私が竹瀝膏を復活させたと言うが、竹瀝膏の醸造法は私たちの祖先が生み出してくれたものであり、酒造りは元来どの家庭でも行なわれていた韓国の生活文化だった。私はただ先祖がつくってくれたこの文化を受け継ぎ、酒を造り続けているだけだ」と話す名人。その言葉には、謙虚ながらも酒造りに込めた韓国文化への情熱を垣間見ることができた。

「持っているだけではただの技術、伝えることで文化になる」と熱く語るソン・ミョンソプ氏のこだわり、真心、愛情、情熱が溶け込んだ名酒、竹瀝膏の極上の味は、これからも多くの人々を感動させ、後世に引き継がれていくだろう。
竹瀝膏を購入するには
価格は1本(700ミリリットル)80,000ウォン程度で、以下の方法で買うことができます。
1.泰仁醸造所(063-531-8187、韓国語のみ)に注文(配送量別途支払い)
2.現代(ヒョンデ)百貨店食料品売り場で購入
※ソウルでは貿易センター店狎鴎亭本店で取り扱い
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掲載日:14.12.23   最終更新日:20.12.08
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