4つの楽器のアンサンブル、サムルノリ
地を表す打楽器と、天を表す金属楽器が独特の3拍子のリズムを奏でるサムルノリ。
1978年に誕生したサムルノリは、伝統芸能である 農楽(ノンアッ)を舞台芸術として劇場の中に入れ、再構成した芸能。伝統楽器の演奏者であったイ・グァンス(ケンガリ)、キム・ヨンベ(チン)、キム・ドクス(チャンゴ)、チェ・ジョンシル(プッ)という4人の若者によって生み出されました。
サムルノリは、韓国国内だけでなく、海外ではsamulnorianという言葉もあるほど知られていますが、実は2008年に 30周年を迎えた、伝統音楽と呼ぶには比較的歴史が浅い芸能です。
サムルノリのサムルは漢字で四物と書き、使用される4つの楽器を、ノリは韓国語で遊びを意味。つまり、4つの楽器で遊ぶということを表現しています。また、ノンバーバルパフォーマンスとして人気の NANTA(ナンタ)は、サムルノリのリズムを基本として誕生しました。
基本構成
サムルノリは舞台芸術として構成されているため、基本的に室内で行なわれます。農楽との違いは、リズムを速く演奏するなどの技術を魅せる部分にあります。
場所 |
室内 |
演奏形態 |
・楽器演奏のみ
・座って演奏 |
人数 |
4人 ※増減あり |
リズム |
・農楽をコンパクトにまとめたものなので同じリズムの反復があまりない
・ゆっくりからはじまり、普通の速さに、最後は速いリズムで終わる |
時間 |
約60分 |
衣装 |
パジチョゴリ・トゴリ(チョッキ)・ティ(帯)・ヘンジョンが一般的な衣装。それぞれパーツに使用される色は地域によって異なりますが、主に黒・赤・青・白・黄の5つの色を使用。黒は北・玄武を、赤は南・朱雀を、青は東・青龍を、白は西・白虎を、黄は中央・黄龍を表しています。 |
楽器 |
ケンガリ、チン、チャンゴ、プッ |
観客参加 |
なし |
ココをチェック
1.激しいビートのリズム
サムルノリは、農楽をリズムごとに整理し、体系化した演奏です。ゆっくりとしたリズムではじまり、少しずつ速くなっていき、最後には深く呼吸をするような短いリズムで終わるのが特徴です。
このような、リズムの繊細さと強烈さ、スピードなどに対比をつけながら語るように進む劇的な演奏展開に、演者も観客もひきこまれていくのが魅力です。
2.セリフがある?!
サムルノリを鑑賞していると後半部分で、演奏者たちの言葉が聞こえてきます。「何を言っているのか気になった」という人も多いのが、このサムルノリの途中で発せられるセリフです。サムルノリが誕生した頃からあるのか歴史は定かではありませんが、農楽から生まれたこともあり、自然を意識したセリフが語られています。また、セリフは右のセリフを使うことが多いですが、一部公演などではアレンジして違う言葉をいれることもあります。演者と会場が一体になったときには、観客も一緒にセリフを言ったりもします。
ハヌルポゴ ピョルポゴ タンウルボゴ ノンサチッコ
(空を見て 星を見上げて 地を見て 農業をする)
オレド テプンニヨ ネニョネド プンニョニュルセ
(今年も 豊作だ 来年も 豊作だろう)
タラタラ パルグンタラ テナンガッチ パルグンタラ
(月よ月よ 明るい月よ 昼間のように 明るい月よ)
オドゥムソゲ プルピッチ ウリネルル ピチョジュネ
(暗闇の中に 明かりを灯し 私たちを 照らしてくれるね) |
3.やっぱり、コレ!チュイムセ&拍手
パンソリでも使われるチュイムセとは「オルス!」「チョッタ!」などの掛け声のこと。日本語では、「いいぞ!」「よっ!」などの意味を持ちます。演者と観客の掛け合いもサムルノリの大きな魅力の1つ。このチュイムセ、タイミングは決まっていないので、自由に呼びかけが可能です。
また、スピードの速いリズムなどを演者が演じた場合は、演者を褒め称えて拍手をすることもあります。
使用楽器
サムルノリに使う4つの伝統楽器を紹介します。それぞれが自然に関する音や形をしているのに注目です。
ケンガリ 指揮者的な役割を行なう
音は空に轟くような雷を、形は星を表す小さいドラ。甲高く鋭い音は、まさしく雷の音に類似しています。全体を指揮し、音や動きなどにメリハリをつけるリード楽器。
左手に楽器を持ち、右手に木製のバチを持って強弱をつけながら演奏します。サムルノリの時は全体を見渡せるように真ん中に座ります。
チン 他の楽器の音を包み込む
音は静かな場所に吹き抜ける風を、形は太陽を表す金属製のドラ。低く余韻の長い音が魅力。リズムのポイントだけを叩くので一見、簡単そうに見えますが、実は他の楽器の音を包み込む重要な役割を担っています。
サムルノリでは、台にひっかけて演奏します。
チャンゴ(チャング) 両手で演奏するサムルノリの花形
音は空からしとしと降る雨を、形は人を表す打楽器。木をくりぬいた砂時計型の筒の両面に馬や牛などの動物の皮を張った太鼓。左側はバチを使用せず、素手で叩かれることもあります。
2つのバチを使用する独特なものでサムルノリでは、あぐらをかいた姿勢で楽器を前に置いて演奏します。
プッ 持ち上げて片手で叩くこともある
音はもくもくと湧き上がる雲を、形は月を表す太鼓。演奏全体における基本のリズムを叩きます。基本のリズムを叩くことによって全体の音を和らげる役割も担っています。
サムルノリでは、あぐらをかいた姿勢で足の上に置き演奏します。
演奏位置
公演や楽器を叩く人数によっては、異なることもありますが、サムルノリは演奏者の座る位置が決まっています。順序は客席から見て、左からチン、ケンガリ、チャンゴ、プッの順。リード楽器のケンガリは全体を見渡せるように真ん中に座ります。
また、チンを叩く人は、後半部分でチンをケンガリに持ちかえ、中央のケンガリ奏者とリズムのかけあいをすることがあるため、チンとケンガリは隣同士に座ります。
サムルノリを観賞できたり、サムルノリがルーツとなっている公演
NANTA(ナンタ)
サムルノリのリズムを基本として生まれた NANTA(ナンタ)は韓国を代表するノンバーバルパフォーマンス。
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- 韓国の伝統音楽・舞踊が一堂に会した充実の舞台
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これから創られていくサムルノリの歴史
1978年に誕生し、ノリのよいリズムが瞬く間に人気を得たサムルノリ。韓国内でも、日本でも知られているサムルノリですが、まだまだ歴史が浅いため、伝統芸能であるといいきれない部分もあります。
そのため、人々の間では、サムルノリがこれからどのように創られ、発展していくのかに関心が高まっています。ゆったりとしたテンポではじまり、いつの間にか独特の世界にひきこまれてしまうサムルノリ。個性豊かな4つの楽器が奏でる音の遊びを感じてみてはいかがでしょうか。
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