韓国旅行「コネスト」 第59回~香月義嗣さん(インタープライズ) | 日韓わったがった ―韓国で、はたらく。 | 韓国文化と生活
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第59回~香月義嗣さん(インタープライズ)

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更新日:12.03.30
「コンサルタント」という仕事は多岐に渡り、私たちの日常生活にあまり関連がないため、イメージしづらい職種のひとつではないでしょうか?「そうなんですよ、人に説明しづらいです。会社の悪いところを治すお手伝いをする仕事なので、言うなれば会社のお医者さんです。」とおっしゃるのは経営コンサルティングのエキスパート香月義嗣さんです。香月さんのコンサルティングによって3年で売上が2倍にもなった企業もあり、韓国企業の営業現場を実践的なコンサルティング手法により改革してきました。言葉もわからないまま韓国にやってきて、ビジネス習慣の異なる数多くの韓国企業とともに仕事を進めてこられたご苦労やエピソードなどを汝矣島(ヨイド)の事務所でお話を伺いました。

名前 香月義嗣(かつき よしつぐ)
勤務先 株式会社インタープライズ・コンサルティング 
韓国事業部 チーフコンサルタント
出身地 31歳(1980年生)
在韓歴 6年
経歴 東京大学工学部 卒業/東京大学大学院 新領域創成科学研究科修士課程 卒業。 2005年より新卒で入社し、東京オフィスでコンサルタントとして勤務後、2006年の韓国事業部の発足と同時に来韓。電子、食品、教育、製薬、アパレルなど韓国の主要企業の営業組織のコンサルティング、及び現地コンサルタントの育成を担当。韓国企業へのコンサルティング経験を生かし、2011年からは在韓日系企業へのコンサルティングサービスを開始。「SALES-DIPS」(2011年 韓国能率協会コンサルティングより出版、共著)など、韓国での著書も多数。国際公認経営コンサルティング協議会認定マネジメント・コンサルタント。
「君の話には感動がない」、韓国人経営者の一言
韓国語で発行された共著
韓国語で発行された共著
私が日本で勤務していた頃にも韓国企業からコンサルティングの依頼があり、それに応えるうちに韓国市場に可能性があることがわかり、韓国事業部が作られました。韓国について右も左も分からないまま、事業部の立ち上げに参画し、以来6年になります。

一般的な韓国のコンサルティング会社では戦略的なコンサルティングが中心で、難しい分析結果とこれをやるべきという結論を分厚い報告書にして提出して終わり、というパターンが多いのですが、私たちの手法は実行支援に重点を置いて、業績改善という成果を出すことをゴールとしています。私は営業組織のコンサルティングが専門で、営業マンの業務を改善して売上を伸ばす支援を主に行なっています。
また、韓国企業を対象にしたセミナーでの講演も私の仕事です。私たちが日本で培ったノウハウを情報発信して、興味を持って頂くことが目的です。ある日、日本でやっていたのと同じように、いつも通りプレゼンテーションを行なった後、ある方から「君の話には感動がないよね」と言われて非常にショックを受けました。日本では一度も言われたことがなかったからです。

それをきっかけに、韓国でプレゼンを聞いてもらうには、おもしろい話、感動的な話を盛り込む必要があるのではないかと気づきました。
以来、講演の時にはムービーを流したり、感動的な話をしたり、ちょっとした演出を心がけるようにしたところ、韓国人の方々にも興味をもって話を聞いて頂けるようになりました。
韓国人の心をつかむには右脳に働きかけるべし
韓国ドラマを見ていると、ストーリー性よりも、ある一場面にすごく感動させられるような瞬間的な盛り上がりや演出が秀逸だと感じます。韓国ではそうした感動的な演出やサプライズを好む傾向が強いのだと思います。逆に、日本のドラマでは主にストーリーやシナリオが重視されますよね。こうした点にも日韓の文化的な違いを感じます。

韓国のドラマ(演出)・日本の漫画(ストーリー)が世界的に評価されている背景には、こうした文化的な強みの違いがあるのではないかと思います。今後、経済成長を続けてビジネス的なシステムが整っていったとしても、やはり韓国では感情的な要素は非常に重要で、文化として情に訴える表現は欠かせないのではないかと感じます。

ですから、日系企業向けセミナーで講演をする際には、韓国では頭で納得してもらうよりも心を動かすことが大事という意味で、「まずは右脳に働きかけることが大切」だと強調しています。日本人が韓国人と一緒に仕事をする上で、理解できずに悩む部分がここではないかと思います。
反発、混乱、まとめが一苦労のプロジェクトを成功へ導くために
コンサルティングのスタート時点では、現場に行って営業部長から一般社員まで営業組織のすべての人たちにアンケートやインタビューを行なって問題点を洗い出すことから始めます。初めは、外部から変な人が来たと嫌がる方もいれば、変わることに対して反発する方もいたりと、一筋縄ではいきません。

調査を通じて、組織の問題点と原因を探り出し、解決策を提示したら、10ヶ月かけて実行に移していきます。一人ひとりが仕事のやり方を改善し、組織で改善に取り組むことで業績を伸ばすことが目標ですが、韓国では個人プレーに陥りやすいのが実状です。

日本では成功事例は比較的共有されますが、韓国では個人のノウハウだから教えたくないという力学が働く上、自分しか知らないという領域を作ろうとします。標準化されて、誰にでもできるようになると自分が辞めさせられるかもしれないと考えるからです。

最初の2ヶ月くらいは本当に大変ですが、個人で取り組むよりもチームで取り組むことのメリットを感じてもらい、明確な目標設定をした上で、組織内での競争心をよい方向に持っていくことを心がけています。
チームメンバーとプロジェクト成功の打ち上げ
チームメンバーとプロジェクト成功の打ち上げ
日本も以前はそうでしたが、韓国でも営業の現場では、お酒を飲んでカラオケに行って仲良くなったら契約、というような人情でつながっていることが多いです。しかし、経済が成熟していく中で、今後は仲良くなるだけでなく、顧客に対してどのような価値を提供できるのかという点が重視されるようになってくるでしょう。

また、韓国企業の営業マンは、お客さんの気持ちを無視してセールスしてしまっている方がまだまだ多くいます。一方で、日本ではお客さんの心理を把握してセールスを進めていくという考え方が強く浸透していると思います。
こうした顧客心理やホスピタリティの質の高さは、日本の大きな強みだと思います。韓国の大手企業にも、この点に興味を持って頂き、コンサルティング支援をさせて頂きました。
やる気になった韓国人のパワーはすごい
スタッフは全員日本語が堪能
スタッフは全員日本語が堪能
実は6年も韓国にいるのに韓国語があまり話せません。大変恥ずかしいのですが、ごく最近、勉強を始めました。仕事前の朝7時~9時に週3回ほど家庭教師にオフィスに来てもらっています。

宿題もあるし、怒られてばかりで大変です。もともと韓国とは縁がなく、関心もなかったので、韓国に来るまでは何も知りませんでした。言葉も現地コンサルタントは全員日本語が堪能であるため、韓国語を勉強せずに甘えていたわけです。
現地メンバーにも、その点は見破られていて、来韓当初に冗談っぽく「韓国語教えてよ」と言ったら、「香月さん、全然やる気ないですよね。韓国語を学ぼうとする姿勢が出て来たら教えますよ」と言われたことがあって、今ようやくその姿勢を現地メンバーに見せられるようになってきたかなという状態です。
韓国企業に対しては、今のところコンサルティングも講演もすべて通訳を介して行なっています。最終的にはすべて韓国語で出来るようになりたいのですが、まだまだ時間がかかりそうです。日本では相手の反応を見ながら、補足説明できますが、韓国では通訳を介しているので、聞いている方の反応がわからないことが多々あります。

質問を受ける際も、すごく怒ったような様子で勢いよく話される方がいて、通訳されるまではビビッてるんですけど(笑)、内容を聞くと非常に好意的な感想だったりと、空気感がつかめないこともあります。自分の体験から痛感しましたが、語学は現地に住んでいるだけではできるようにならないので、腹をくくって勉強しなければいけませんね。
韓国での第二ステップは日系企業のサポート
日本発のコンサルティングノウハウを韓国企業向けに転用し、事業が軌道に乗りはじめ、現地コンサルタントも育ち、韓国での私の役割に区切りがつくとともに、韓国人ではない私の存在価値はなんだろうと悩んだこともありました。韓国赴任以来、韓国企業がクライアントだったために日本人と全く接点がなく、韓国に日本人っていないんじゃないかと思ったくらいでした。たまにカジノに行くと見かけるくらいで(笑)。
そこで、SJC(ソウルジャパンクラブ)に加盟したところ、日系企業の方々にお会いする機会があり、現地スタッフのマネジメントで困っているという方がたくさんいらっしゃいました。韓国人スタッフのやる気を高められないと困っていたり、韓国の代理店との関係が改善されず悩んでいたりと、問題は様々でした。

そこで、これまで韓国企業へのコンサルティングで培ってきたノウハウが、日系企業にも活かせると気づき、お手伝いさせて頂く機会が増えてきました。6年前に韓国に来たときは、まさかそんな事業展開があるとは私自身思ってもみませんでした。
山登り同好会に参加し、休日は日韓混合で登山に
山登り同好会に参加し、休日は日韓混合で登山に
韓国語は苦手ですが、韓国文化や韓国人を知ろうということに関しては、仕事を通じて積極的に取り組んできましたし、知り得たことは多かったです。逆に、多くの日系企業の方たちは、韓国人スタッフとのコミュニケーションが少ないと感じます。

まずは日本人と韓国人が一緒に食事をすることからだと思いますが、日本料理よりも韓国料理がおすすめです。ビジネス上では聞けないような話も、一緒に食事に行くことでいろいろな話が聞けるようになります。
韓国人のマネジメントを考える上では、韓国文化や韓国人を知っているか知らないかの差は大きいと思うので、そうした場を積極的につくるのが良いですし、韓国生活を楽しくするコツでもあるのではないでしょうか。
結果にこだわり成功へ導く
韓国企業でも日系企業でも、やる気があるのにやり方が悪いために躓いてしまっている企業はたくさんありますし、そうした状態のままで改善が進まないのはすごくもったいないことだと思っています。ちょっとしたことでも、やり方を少し変えるだけで大きな成果が出ることがあるから尚更です。

頑張っている人をサポートして成果に結びつけるのがコンサルティングの醍醐味ですので、私たちが提案したやり方がうまく伝わって大きな成果が出て、クライアントと一緒に喜べる時が、仕事をしていてよかったと思える時ですね。
また、営業組織のコンサルティングというのは、レクチャーや調査をすることが目的ではなく、売上を上げるという成果を出すことが目的なので、何が何でも成果を出さなければなりません。私たちが実際に営業に行って仕事の案件を持ってきてもよいですし、机上の空論で終わらせることなく、成果を出すことにこだわっています。
韓国を基点にアジアへ
今後は、日系企業の事業展開のお手伝いを積極的に行なっていきます。多くの日系企業が、韓国市場展開にあたって同じところで躓いているなと感じるので、日系企業が韓国で活躍できるノウハウや勝ちパターンを作っていければと思います。そうした成功モデルがたくさんできれば、韓国に進出する日系企業も増え、日本企業のグローバル化もいっそう進むのではないでしょうか。

このような形で、韓国を基点にして、ちょっと遠くから日本を応援していくことが私のミッションです。近い将来、事業目標を達成できたら、韓国だけでなくアジア全体の日系企業の支援に事業をシフトして、アジアの中での日本の存在感を高めるお手伝いができればと思っています。
インタビューを終えて・・・
今ではすっかり韓国が気に入り、食わず嫌いだったスンデも大好きに。「何でも無理して3回食べれば慣れるので。スンデも食べてみましょう!」という香月さん。年齢重視と思われがちな韓国ですが、自分にない能力を持っていれば年齢問わず学ぼうとする姿勢が強い韓国では仕事も円滑に進んだとか。韓国企業の現場を広く知ることのできる稀少な立場だけに、日韓のビジネスでの交流や協業に向けた、新たな役割を果たしていかれることでしょう。
株式会社インタープライズ・コンサルティング
1964年創業のコンサルティング会社。12,000社を超える企業の経営コンサルティングを行ない、業界に特化したコンサルティング部門を有し、現場主義を重視しているのが特徴。「DIPS」など書籍の発行も多数。2007年から中国、韓国にもオフィスを開設し、現地企業及び日系企業にコンサルティングサービスを提供している。
住所:ソウル市 永登浦区(ヨンドゥンポグ)汝矣島洞(ヨイドドン)12 CCMMビル8階
電話:02-3786-0354(韓国能率協会コンサルティング事業所内)
ホームページ:http://www.ipcon.co.jp/
韓国旅行おトク情報
掲載日:12.03.30
※内容は予告なく変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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