キムチの起源 あのときキムチは白かった?!
ビタミンや無機質、食物繊維が豊富で、冬の重要な栄養補給源だったキムチ。野菜を長期保存するには乾燥という手段もありますが、本来の味と栄養分が損なわれがちです。そこで、生野菜を塩や酢に漬けて保存する方法が生まれたと言います。こうした漬物類の歴史は古く、中国最古の詩集「詩経」(紀元前8~11世紀頃成立)には、「きゅうりで菹(チョ)を漬ける」という一節が登場。菹が漬物の一種であったことがうかがわれます。また、後漢末期の辞書「釈名」では、菹を「野菜を塩漬けにした乳酸発酵食品」と説明しており、キムチの原型とも言えるものがこの頃から食べられていたことが推測できます。キムチは漢代(紀元前3~3世紀)に朝鮮半島北部の楽浪郡を通じて韓国にもたらされたと見られていますが、これを決定づける資料はなく、未だ明らかになっていません。

高麗時代に刊行された「東国李相国集」の写本。韓国においてキムチに関する最初の記録とされている。

古くから食べられてきた白キムチ。辛くなく、ほのかな塩気と酸味で、さっぱりした味わい。

大根などを塩漬けにして作る水気の多い水キムチ。スープが口の中をすっきりさせてくれる。
韓国の文献上、キムチに関する記録が最初に登場するのは、高麗時代に著された李奎報(イ・ギュボ)の詩文集「東国李相国集」(1241)です。ここではキムチ漬けが「塩漬(ヨムジ)」という言葉で表現されていますが、当時は野菜を塩で漬けた白キムチ(ペッキムチ)や水分の多い水キムチ(ムルキムチ)でした。では、私たちがキムチと聞いて思い浮かぶ、唐辛子粉で漬けた真っ赤なキムチが誕生したのはいつでしょうか?それは唐辛子が韓国に伝来した時期、つまり16世紀末頃の朝鮮時代後期と見られています。