韓国人の生活と密接な関係を持つ宗教
宗教別人口グラフ(韓国統計庁、2005年)
韓国の宗教人口は全人口の約50%にあたる2,497万人(数値は2005年当時、2013年現在統計庁最新データ)。 旧正月(ソルラル)や 秋夕(チュソク)に行なわれる先祖供養の儀式・ 茶礼(チャレ)や年長者を敬う習慣は儒教精神に基づいており、仏教・キリスト教系の放送局・新聞社も存在します。
また、韓国では釈迦誕生日や クリスマスが国民の休日に指定されていたり、夜になると街のあちこちでこうこうと輝く十字架を目にすることができるなど、韓国人にとって宗教は、日常に根付く身近な存在と言えるでしょう。
宗教人口の内訳(右図)を見てみると、仏教が22.8%、プロテスタント18.3%、カトリック10.9%、儒教0.5%、園(ウォン)仏教0.2%の順となっており、韓国の主な宗教が仏教とキリスト教であることが覗えます。
オーナーがキリスト教信者の場合、
聖書の言葉を掲げる食堂も
主な宗教と韓国国内の関連スポット・イベント
また 仁寺洞(インサドン)にある 曹渓寺(チョゲサ)は、韓国仏教の最大宗派「曹渓宗」の総本山で、毎年釈迦誕生日に合わせて行なわれる 燃灯祝祭をはじめとする仏教行事の中心地となっています。曹渓寺の敷地内には彫刻・絵画・版画・写経・陶器・冊子などが揃い、韓国の仏教美術・仏教文化の一端を覗える「 仏教中央博物館」があります。
燃灯祝祭
韓国仏教最大の祭典。釈迦誕生日(旧暦4月8日)を迎える時期に、毎年ソウル市をあげて行なわれます。約2600年前、インドで自らの知恵と慈悲の精神を世に広めた釈迦の生誕を祝い、改めて釈迦の教えに理解を深めようとするものです。釈迦誕生日が近づくとソウル市内をはじめ韓国各地の街々に色とりどりの提灯が飾られます。
キリスト教
明洞聖堂でのミサの様子
プロテスタントは19世紀後半に、カトリックは朝鮮時代に遣明使によって伝来。日本に対する反植民地運動や教育機会の増加により徐々に信者数を増やしていきました。韓国で「キリスト教(キドッキョ)」というと、一般的には「改新教(ケシンギョ)」と呼ばれるプロテスタントを指します。カトリックは天主教(チョンジュギョ)と呼ばれ、はっきり区別されるのが特徴です。キリスト教は独立運動や人権回復運動の先頭に立った宗教でもあり、 三・一独立運動の象徴である独立宣言書に署名した独立運動家33名のうち31名がクリスチャンでした。
聖公会ソウル聖堂
江華聖堂
儒教
先祖供養の儀式・茶礼
朝鮮時代、約500年間にわたり国教とされた儒教。確実な伝来時期は不明ですが、三国時代に唐から伝来したといわれています。儒教は孔子の教えを学び、実践するもので「仁・義・礼・智・信」が重んじられます。現代では、儒教を信仰している人は少なく、宗教というよりは一種の生活習慣、または社会常識として国民の意識に定着しています。名節に行なわれる祭祀や 土葬の習慣、目上の人の前で タバコを吸わない、杯を隠し横を向いて酒を飲む 飲酒文化などがその代表的な例です。
イスラム教
住民の7割が外国人という国際的な街、 梨泰院(イテウォン)には、巨大なイスラム教寺院「 イスラム中央聖院」があります。全世界では人口の4分の1を占めるイスラム教ですが、韓国での信者はごく少数に過ぎません。「イスラム中央聖院」は1976年に建てられた韓国最初のイスラム教寺院で、国内のイスラム教信者にとって大切な信仰の拠り所となっています。
エンターテイメントと宗教
宗教をもつ著名人
信仰が日常化している韓国では、自分の宗教を公開している各界のスター・著名人も少なくありません。
プロテスタント
テヤン(BIGBANG)
ソネ(ワンダーガールズ)
その他の著名人
李明博(イ・ミョンバク)第17代大統領、李承晩(イ・スンマン)初代大統領、SHINHWA(歌手)全メンバー、イ・ナヨン(女優)、IVY(歌手)、チャ・インピョ&シン・エラ夫妻など
カトリック
コン・ユ
キム・テヒ
その他の著名人
金大中(キム・デジュン)第15代大統領、BoA、アン・ソンギ(俳優)、ハン・ジヘ(女優)、イ・ドンゴン(俳優)など
仏教
チャン・ドンゴン
パク・ギュリ(KARA)
その他の著名人
オク・ジュヒョン、キム・テウ(god、歌手)、ソン・シギョン(歌手)、イ・スンチョル(歌手)、ホン・ミョンボ(サッカー選手)など
宗教的要素が盛り込まれた映画やドラマ
教会や聖堂、寺院が舞台になったり、僧侶や神父、修道女が登場したりする映画・ドラマもあります。パク・シニャン、シム・ウナ主演のドラマ「愛しているなら」は、宗教の違いから両家が対立することになったカップルの姿を描いており、韓国人と宗教の関係性を垣間見られる興味深い作品です。
クォン・サンウが神学生役を好演
「恋する神父」(2004)
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チョン・ドヨンがキリスト教信徒を演じる
「シークレット・サンシャイン」(2007)
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熱心な布教活動の一方で問題点も
韓国の宗教人口が多い背景には、各教団による熱心な布教活動があります。国内での草の根布教活動はもちろん、海外でも積極的に行なわれており、布教家の派遣数は世界1、2位を争うほど。
一方で、2007年にアフガニスタンで起きた韓国人拉致・殺害事件では、韓国の宗教団体が持つ「別の文化圏における過度な布教活動」といった問題点が浮き彫りになりました。
本来「宗教」とは、生きる上での悩みや苦しみの拠り所であり、安心や幸福を得ようとするもの。語学留学や仕事など長期にわたり韓国を訪れる場合は、滞在中に信仰を持つ友人・知人から勧誘されることもあるかもしれませんが、十分に考えてから行動することが大切です。万が一、違和感を持つようなことがあれば、きっぱりと断りましょう。
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