日本でもお馴染み「端午の節句」
韓国の初夏を代表する名節
陰暦5月5日は「端午」。 韓国語では「 단오(タノ)」と発音します。
日本では男の子の健やかな成長を祈願する「端午の節句」として陽暦で祝いますが、韓国や端午発祥の地・中国では陰暦を用い、「端午節」や「天中節」、「重午節」とも呼ばれています。
韓国では「 旧正月(ソルラル)」、「 秋夕(チュソク)」、「 寒食(ハンシッ)」と並ぶ韓国四大名節のひとつに挙げられています。
端午の日には、韓国各地で「 端午祝祭(タノチュッチェ)」または「端午祭(タノジェ)」というお祭りが行われ、初夏の風物詩のひとつでもあります。
※2024年の端午(旧暦5月5日)は、6月10日(月)です。
端午とは?
韓国の端午とは、田植えや種まきが終わる5月に、山の神と地の神に 祭祀(チェサ)を行い、その年の豊作を祈願する日です。一方で、5月は病気が流行しやすい 梅雨直前の時期にもあたり、端午には悪鬼や災厄を追い払う意味を込めて、様々な風習が行われるようになりました。
端午の起源と由来
端午の起源は、紀元前278年、中国の戦国時代までさかのぼります。楚の高名な詩人であり、王の有能な側近であった屈原(クツゲン)が陰謀により失脚し、彼が川に身を投げた日が5月5日だったのです。
その後、屈原を弔う祭祀は毎年行われ、こうした習慣はやがて韓国にも伝来。その過程で形や意味が変化し、現在の邪鬼を退け豊作を祈願する端午になったといわれています。
端午の日が5月5日に定着したいわれ
端午の「端」は「始まり」を意味することから、元来の端午は「月初めの午(ウマ)の日」を指していました。
やがて、陰暦の5月が 干支でいう「午の月」にあたり、5月5日が奇数が重なるおめでたい「重五の日」であることから、陰暦の5月5日に定着したといわれています。
端午のみならず、ソルラル(旧正月、陰暦1月1日)、サムジンナル(桃の節句、陰暦3月3日)、チルソッ(七夕、陰暦7月7日)という風に韓国の節句には奇数が多いですが、これは奇数を陽の吉数とみなす「陰陽思想」からくるもの。端午は1年で最も陽気旺盛な日として、高麗時代から名節に数えられてきました。
大人から子どもまで夢中になる!端午の文化と風習
端午のお祭り
日本では男の子の日のイメージが強いですが、韓国の「端午祝祭」は老若男女誰もが主役。食べて、歌って、踊って、にぎやかに1日が過ぎていきます。
儀式(端午クッ)
仮面踊り(タルチュム)
端午の風習
厄除けの力があると信じられていた菖蒲をゆでたお湯で洗髪するのは、端午ならではの風習。厄除けだけでなく、髪にツヤを与える効果もありました。
また、女性は菖蒲の茎部分で作ったかんざしを、男性は腰飾りを身に付けて厄払いをする習慣もありました。先端を赤く染めたかんざしを頭にさすと頭痛にならないとも言われます。
端午には暑さを和らげる道具として、扇を王に献上したり、王が側近の臣下に扇を贈ったりしていました。宮廷だけでなく、庶民の間でも扇やうちわを贈り合う習慣があったそうですよ。
端午の伝統遊び
端午に伝わる代表的な遊戯が、女性の「クネ(ブランコ遊び)」と男性の「シルム(韓国相撲)」。どちらも体を思いっきり使った遊びです。こうして楽しみつつも、夏場を乗り切る体力づくりが行われていたのですね。
クネ
シルム
昔のシルムの大会は、現在のようなトーナメント(勝ち抜き)方式でなく、出場者全員を破らなければ優勝できませんでした。そうして栄冠を手にした最強の選手には、何と牛一頭が贈られたそう!
端午の食べ物
端午に食べる 韓国料理といえば、車輪の型押しをした「スリトッ(車輪餅、チャリュンビョンとも言う」と呼ばれる お餅。お餅の原料には、厄が退くといわれるヨモギやこの時期に旬を迎えるスリチッ(ヤマボクチ)が使われました。
スリトッ
ファチェ
また、初夏に旬を迎えるユスラウメの実で「ファチェ(韓国の冷たい飲みもの)」を作ったりもしました。
夏場を乗り切るための知恵と伝統が息づく日
暑い夏に向け健康を維持するとともに、災いや厄除けのため様々な風習が行われた端午。遊びや食べ物、その一つ一つに重要な意味が込められているのですね。
まさに、昔の人々の知恵と、自然とともに生きていこうとする姿勢が伝わってくる名節といえます。
しかし残念ながら、現代韓国で端午の風習が残るのは、お祭りやイベントの場だけになろうとしています。季節感あふれる端午の伝統が、これから先も韓国の初夏をにぎわせてほしいものです。
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