等身大の働く女性にクローズアップ!
昨今、韓国に留学する20代後半~30代前半の女性が増えています。中には韓国で働きたいと考える人も少なくないはず。そこで今回は、働く女性にスポットを当ててみました。「外国で働く」=バリバリのキャリアウーマンという先入観をいい意味で覆す、飾らない等身大の姿がそこにはあります。彼女の名は「大江麻子」。在韓8年目という大江さんのライフスタイルにコネストが迫ります。
名前 大江麻子(おおえあさこ)
出身 埼玉県
在韓歴 1999年7月~(約8年)
趣味 DVD鑑賞
職業 「聯合(れんごう)ニュース」日本語版の翻訳
経歴
1999年 韓国外国語大学の語学堂に通う
2000年 「Mnet」にて勤務
2002年 留学情報会社にて勤務
2004年 出版社にて勤務
2006年~現在 「聯合ニュース」にて勤務
こんにちは。今日はよろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。なんか今までに載っている方々がそうそうたるメンバーなので、私みたいな地味な人でいいのかな?ってちょっと心配なんですけど(笑)
いえいえ、今回は“等身大の女性”というテーマですから、緊張なさらずにリラックスしてお話くださいね。
それではまず、韓国に興味を持ったきっかけからお願いします。
韓国の音楽(歌謡)にハマったのがきっかけですね。1997年に初めて韓国に来たんです。まだK-POPという言葉すらなかった時代で、当時は道端でリアカーテープ(ヒット曲を集めて作った違法なテープ)を売っていました。
興味本位でそのリアカーテープやCD、アイドル雑誌を買って帰ったんです。それらを聴くと「韓国語の歌」がとても新鮮に思えたんです。
当時はアイドル全盛期で、HOT(男性5人組アイドル)とかTURBO(男性2人組)とか、なにせビジュアルが強烈!「このビジュアルでこの音楽をどんな風に歌って踊っているんだろう?」と不思議でなりませんでした。かなりミーハーですけど(笑)、すべてはそこからですね。
それで韓国語の勉強を始めたんですか?
当時働いてた会社の近くに小さなコリアンタウンがあったんです。そこで韓国のテレビ番組を録画したテープをレンタルして歌謡番組を見てみたら、とっても面白い!そうなると今度は何を言ってるのかを知りたくなって、韓国語の勉強を始めてみようと。
その勉強の延長で韓国留学となったわけですか?
1998年で勤めていた仕事を辞めたんです。よくあるパターンですよね。OLが仕事を辞めると旅行や留学をするっていうの。本当は半年か1年くらいのつもりで留学したんですけど、気が付けば・・・もう8年目ですね(笑)
そして1999年に韓国外国語大学の語学堂に通いはじめた大江さん。半年過ぎた頃に、就職口が決まり初めて韓国で働くこととなります。それから現在まで4つの会社を経験したという彼女に、今度はお仕事についてうかがってみました。
現在勤務されている「聯合ニュース」でのお仕事についてお聞かせください。
真剣な眼差しでパソコンに向かう大江さん
聯合ニュース」という韓国唯一の通信社の外国部ニュースチームに所属しています。
連合ニュースには日本語、中国語、アラブ語のホームページがあり、韓国語から日本語へ翻訳するのが私の仕事です。
翻訳のお仕事をされる上で大変なこと、また「やりがい」って何でしょう?
やりがいを感じるのはやはり、自分の翻訳した記事がインターネット上に載ったときですね。やりがいももちろん感じるんですが、大切な情報を扱っていますから、失敗は許されないという怖さもあります。
大変なことは・・・・ひと言に翻訳といっても、ありとあらゆる分野の知識が必要とされるわけですから、苦手な経済とか株とかの担当になると、ヒーヒー言いながら訳してます(笑)。しかもニュースの翻訳って速さと正確さが求められますからね、毎日緊張の連続です。
また、日本でどのように報道されているのかというのもチェックしておかなければいけないんです。だから日々勉強!時事にまったく興味のなかった私が、今では韓日のニュースを毎日チェックしてるんですよ。
翻訳のお仕事をされているくらいだから、韓国語も相当お上手なんでしょうね。
まあ生活するのに支障はないですけど。この仕事をしてると、韓国語よりも日本語力のほうが大事になってくるんです。
それに、日本人や日本語のできる韓国人たちと仕事をしていると、どうしても韓国語を話す機会が減ってきますよね。何年か前の方ががまだ上手かったんじゃないかと思うほどです。
3年くらい前に韓国語能力検定も6級(最上級)を合格しましたけど、今受けたら自信ないですね。でも韓国で就職する際のバロメーターにはなりますから資格は持っているに越したことありませんよ。
韓国で働かれてみて感じる日本との違いってありますか?
会社の食堂で同僚たちと昼食
韓国の方が何でもアバウトですね。例えば、仕事中に間食をよく食べるとか。今の会社ではさすがにないんですけど、以前働いていた会社では、チキンやピザの出前を取ったりしてましたね。
なんてドッシリしたおやつを食べるんだろうって、最初はびっくりしました。夏はスイカを丸ごと買ってきて、みんなで食べたりとか(笑)小さい会社だったから出来たことかもしれませんけど。
このように、現在は「聯合ニュース」で充実した社会生活を送っている大江さんですが、8年の間には紆余曲折もあったようです。8年経った今、大江さんの目に韓国はどのように映っているんでしょうね?
大江さんが思う「好きな韓国」「嫌いな韓国」って何ですか?
ソウルでよく見かける風景
そうですね、いい意味で言っちゃうと気楽。ソウルの街を歩いていても、周りを気にせず気楽でいられるんです。逆に日本に帰って、東京の街に出かけるときのほうが緊張しちゃったりするくらい。
でも、その気楽な部分が短所にもなりうるんですよね。「自分のことしか考えてない、周りが見えてないな~」って思うことも多々ありますよ。とにかくマナーは悪いですね。
道のど真ん中で止まって携帯メールを打つ人、4、5人で腕組みながら歩いて後ろから人がきているのに気が付かないとか、ゴミをどこにでも捨てたり、唾を吐いたり・・・細かいことを言ったらキリがありません(笑)いい意味でも悪い意味でも“テキトー”という言葉がしっくりくるでしょうか。
住んでみてこそ、韓国の嫌いなところが見えてくるというのもありますよね。
最初の頃と今と、韓国に対する印象って変わりましたか?
最初は何でも新鮮だし、楽しかったんですよ。でも長年住んでいると、どうしても愚痴をこぼすことが多くなっちゃいますね。いいこともたくさん言わなきゃいけないのに(笑) でもこうやって文句言いながらも、心の底から嫌になってはないんだから、まあ性には合ってるのかな?
8年間で韓国という国はどう変わったと思いますか?
日本人には暮らしやすくなったんじゃないのかな?いろんなものがこの4、5年で入ってきたよう気がします。例えば、今は日本風のとんかつ屋さんなんてどこにでもありますけど、7、8年前はペッラッペラで上にオレンジ色のソースがかかった、まずいトンカツしかなかったですからね(笑)
それと、割と韓国の人って保守的だと思うんですけど、韓国の若い人たちが日本の物にしろ外国のものにしろ、受け入れるようになりましたよね。
韓国生活で一番苦労したことって何ですか?
やっぱりビザの問題ですね。韓国で働こうと思ったら、必ず立ちはだかる問題ですよね。最初の会社は、会社側が面倒くさがってなかなかビザ取得に乗り出してくれなくて、結構もめました。二番目の会社は規模が小さかったため、申請しても到底ダメだろうってことで、しばらくはワーキングホリデーのビザで働いて、再度申請し直したんです。
その時は出入国管理事務所から会社に視察にまで来たんですよ。そういう就労ビザ取得の過程を4回も経験してますからね。やっぱり大変ですよ。でもこうして働けているんだから、私は運がいいんだと思います。
韓国で4つもの会社を渡り歩いた経験者から、これから韓国で働きたいという方たちにメッセージを!
「ビザの申請について自分で調べてこい」とか言って、会社側は何にも知らなかったりするんですよ。今は韓国で働きたがっている日本人も多いし、ビザの手続きは面倒ですからね。
実際ノービザで働いている人とかも多いようですけど、それじゃあダメだと思うんです。多少面倒でも、そういう交渉ごとを自分でできてこそ、海外で一人でやっていけるんじゃないでしょうか。
韓国では自己主張をきちんとしないと、自分が痛い目にあいますからね。それを繰り返していると、逆にたくましくなりすぎちゃうんですけど(笑)
柔らかな印象の大江さんですが、お仕事のことや韓国での経験について話されるときは、とても凛としています。大変な時期を乗り越えてきたことが彼女の生きる自信になっているのかもしれませんね。続いては仕事を離れて、プライベートについておうかがいしました。
長年韓国にいらっしゃるので韓国人のお友達も多いのでは?
友人の割合でいうと日本人が多いですね。私と同じように働いている人や、韓国人と結婚した人もいます。在韓日本人ネットワークってけっこうあるんですよ。だから一人に知り合うと、そこから輪が広がって知り合いが増えていく感じです。これまで働いてきた会社の韓国人とは、今でも交流がありますよ。ただ日本人の友人たちがどんどん帰国していってしまうので、目下の悩みは“友達がいないこと”ですね(笑)
プライベートでよく行くのはどんなところですか?
オシャレな街・弘大(ホンデ)
エリアで言うと
弘大(ホンデ)ですね。今住んでいるところも弘大ですし、弘大は買い物にしろ、飲食店にしろ、とにかく充実しているので。そのせいで、弘大以外のエリアにめっきり行かなくなりましたね(笑)
あとはたまに明洞に行きます。行きつけの美容室があるので、そのついでに買い物をしたりもします。
弘大でショッピングを楽しむ大江さん
大江さんおすすめのお店
TRINITEA弘大店
今回のインタビューを行ったカフェ。弘大の喧騒も忘れるくらいの静けさで、天気のいい日には外のテラスでのんびりくつろいでいるとか。
住所:麻浦区(マポグ)西橋洞(ソギョドン)364-26
電話:02-332-2782
Cat’s
お気に入りの服屋。この辺りはオシャレな服屋が多く、ついつい衝動買いしてしまうことも多いとか。
住所:麻浦区(マポグ)西橋洞(ソギョドン)365-3
電話:02-326-1214
根性 弘大店 ※閉店しました
日本式の焼肉が味わえる店。在韓日本人のコミュニティーでも利用され、評判は上々。
住所:麻浦区(マポグ)西橋洞(ソギョドン)364-26
電話:02-3143-6996
ソム(島)※閉店しました
店内に猫が3匹もいるという、猫好きにはたまらないバー。大江さん自身も自宅で猫を飼っているほどの猫好き。
住所:麻浦区(マポグ)西橋洞(ソギョドン)365-26 2階
電話:02-334-7069
好きな韓国料理やコレだけは食べられない!というものはありますか?
好きなのは、色々な葉野菜におかずやご飯を包んで食べるサムパッです。あとタッカンマリ(鶏丸ごと1匹)も好きですね。食べられない!というか食べたくないのは、犬の肉。動物好きとしては、かなり抵抗ありますから。あと
ポンデギ(蚕のさなぎを煮たもの)も無理です(笑)
ヘルシーなサムパッ
ダイナミック料理“タッカンマリ”
犬肉はNGという韓国人も多い
韓国の男性についてどう思いますか?日本の男性と違う点はありますか?
軍隊に行くとおじさん?
最近はオシャレな人も増えた
最近の若い人はオシャレになったなと思いますけど、ある程度歳をとると急激にアジョッシ(おじさん)化しますよね(笑)軍隊制度もあって、社会にでる時期が遅いってのも関係があるんでしょうけどね。
7、8年前なんて、大学生とかもすごくダサかったですもん。前髪がすごく長くて顔が隠れるようなスタイルが流行してましたけど。
あと、女性に対するアタックもストレートですね。日本人男性よりも押しが強いって気がします。
プライベートについて聞き始めると、大江さんの表情もずいぶん和らいだ様子。ところどころ笑顔を交えながら、会話が弾みます。買い物やおしゃべりが好きな、等身大の彼女の姿が垣間見えました。こうしてインタビューもいよいよ終盤へ。
これから韓国にどれくらい滞在する予定ですか?
転職してまだ一年というのもあるし、もうあと何年かはいるんじゃないかな。私、自分は運がよかったと思うんです。ビザを発給してもらって、こうして仕事ができてるのって。そういう環境があるうちは、まだ韓国と縁があるのかなあって思います。
いつか自分も「ああ、お腹いっぱい!」と満足できる日が来れば、帰国するんじゃないんですかね。でもやっぱり老後は日本で暮らしたいし、どのタイミングで帰って日本で定着しようっていうのを、常に自問自答していたりもするんです。だんだん怖くなるんですよね、「日本に帰って私やっていけるのかしら」って。
じゃあ、今はまだ“韓国に満腹”ではないってことですか?
そうですね。今は仕事も充実しているんで、その状況を捨てて帰国するのはもったいないって感じですね。私の場合、最初の会社が潰れたり、2番目の会社では、お給料を払えなくなりそうだから辞めてくれと言われたりして、今まで自分で納得して帰るタイミングがなかったんです。そして今の「聯合ニュース」での仕事に巡り合えた。8年目にして「やっとここまできたな」って実感してるんです。
最後にこれから韓国でやってみたいことをお聞かせください。
いつも思うのは「無駄に8年いたなあ」ってことなんですね(笑)。韓国の伝統文化を習うとか、地方の旅行とかもほとんどしたことがなくて。もったいないな~ってつくづく思います。
時間がないと言い訳して、やってことなかったというのもあるんですが、仕事にも余裕ができてきたので、少しずつチャレンジしていきたいですね。
ライフスタイルは、会社に行って、家に帰って、たまに友達と会ってご飯食べたりとか。本当に地味なんですよ。だからなんとかそれを脱却したいなって(笑)
インタビューを終えて・・・
この8年間で4つもの会社を渡り歩き、ようやく天職に巡りあったという大江さん。「ずるずると帰るタイミングを逃した(笑)」と本人は笑いますが、いろんな仕事に恵まれるというのも大江さんの人格のなせる技のような気がします。昨年は仕事が忙しくて「本当に精神がなかった(忙しすぎることを指します)」そうですが、これからはもう少しプライベートを楽しもう、という余裕も出てきたみたいですね。
記者自身も同じ「韓国で働く女性」として、共感する部分も多々ありました。気づけば8年だそうですが、言葉の端々に8年の年輪を感じ、大江さんの芯の強さを見たような気がします。これからの韓国生活がより充実したものになることを願ってやみません。大江さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました。
聯合ニュース
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