ソウルで働く日本人にスポットを当てるシリーズ第2弾、今回はちょっと変わった経歴をお持ちの方をご紹介します。ごくごく普通の会社員生活から一転して韓国へ語学留学、今では韓国でお店を経営しているというのだから驚き!いったいどんな方なのでしょう?それでは今回の主人公、松本ひとみさんをご紹介します!
日本人女性第一号の居酒屋経営者
松本さんと待ち合わせした場所は、日本家庭料理・お好み焼きの店「とんあり」。なぜここかというと、「とんあり」は松本さんが経営するお店だから!韓国でお店を開いた日本人独身女性としては松本さんがおそらく第一号で、韓国のメディアにも何度となく登場した、知る人ぞ知る有名人なんです。
名前 松本ひとみ
年齢 4?歳(ご本人の希望により)
出身 大阪
在韓歴 4年2ヶ月(2002年6月~)
趣味 渡韓前は韓国に関する全般。食べ歩きも大好きだが、今は忙しくてできてないので残念。
仕事 日本家庭料理・お好み焼き「とんあり」店長
韓国語のレベル 韓国人とケンカで渡りあえるレベル(笑)
経歴
2002年6月 渡韓&延世大学語学堂入学
2003年12月 延世大学語学堂修了
2004年2月 「とんあり」オープン
韓国に来られたきっかけ・動機は何でしょうか?
日本にいた頃は普通の会社で事務員を20数年やってました。今から10年ほど前かな?初めて韓国に行った時に全く
韓国語ができなくて、おしゃべりな私は喋れないことがつらくて・・・日本に帰ってから趣味で勉強を始めたんですが、当時は韓流ブームなんてなかったので周りからは「なんでまた韓国語?」と不思議がられましたね。とにかく韓国に関すること全部が好きで、思い切って長年勤めた会社を退職し、2002年6月に1年の予定で韓国に渡ったんです。
最初は留学生だったんですよね?
はい。
延世大学の語学堂に通いました。4級からスタートして6級を卒業したあとも、専門班(7、8級)に通ったので2003年の12月まで在学しました。その時は何もかもが新鮮で楽しかったですね。
普通の留学生だったのが、なぜまたお店をやろうと思ったんですか?
もともと自分の中での約束は1年だったんです。でも語学堂を修了する頃になって、このまま日本に帰国するのがもったいないような気がして。
歳も歳ですから、日本に帰ってまた職探しをするのも大変だし、ならば韓国で何か始めてみようと思ったんですね。今でもお店の常連さんには「オバハン、無茶しよるな~!」って言われますけど、自分で考えてもそう思います(笑)。
前例のないことですし、当時は大変だったんじゃないですか?
本当に大変でした。一人で何から何までやって、あちこち駆け回って・・・韓国はまだまだ男性社会だし、日本人ということもあって、トラブルに巻き込まれたりしたのも1、2度ではありません。自分の韓国語だけが何よりも助けになりましたね。
店名の「とんあり」にはどんな想いが込められているんですか?
「とんあり」とは韓国語で「サークル、クラブ」という意味です。名前をつけるとき日本らしい名前をとも思ったんですが、あえて韓国語にしました。
ひらがなにしたのは柔らかい雰囲気を出したかったからです。ひとつの輪とでもいいましょうか。店の中では韓国と日本の区切りがない、そんな空間を作りたかったし、今でもその想いは変わりません。
お店のお客さんはどんな方が多いですか?
日本人のお客さんが8割くらいですね。中でも関西出身の常連さんが多いです。店のコンセプトが「一歩足を踏み入れたらそこはまるで日本」なので、懐かしんでくれる日本の方が多いですね。
そんな日本の雰囲気を味わいたくて来られる韓国の方もいらっしゃいますよ。お客さんを迎え入れる最初の言葉はもちろん日本語で「いらっしゃいませ!」です。
それではちょっと質問を変えて、ソウルのイチ押しスポットはありますか?
やっぱり
新村(シンチョン)ですね。観光客は
明洞(ミョンドン)とかよく行きますけど、新村まではなかなか足を運ばないじゃないですか。新村は学生街だし、安くておいしいお店がいっぱいあるんですよ。
グルメな松本さんがオススメする韓国料理は何でしょうか?
意外に知られていないんですけど、
ポッサム、
サンパッあたりでしょうか。ポッサムは茹でた豚肉をキムチや野菜で巻いて食べます。
サンパッはいろんな野菜でご飯、味噌、肉などを包んで食べます。どちらも女性におすすめのヘルシー料理だと思います。
韓国に来て感じた文化の差はどんなことですか?
これは韓国人の友人に言われて気づいたんですけど、「ありがとう」と「すみません」ですね。例えば誰かに何かをしてもらったとき、日本人は「すみません」って言うんですよね。
でも韓国人は「ありがとう」って言うんです。日本人は無意識に「申し訳ない」っていう気持ちが言葉に表れるみたいです。どちらがいい悪いではなくて、この違いは面白いなあ~って思いますね。
松本さんが感じる韓国の魅力って何ですか?
日本にいた頃から思っていたのはやっぱり人情が厚いってことですね。一度友達になるとものすごく絆が固いですよね。
逆に韓国の嫌いなところってありますか?
友達になると家族のようによくしてくれますが、逆にいうと友達以外にはけっこう冷たかったりもしますね。疎外感を感じるというか。あと、やはりマナーが悪い点も気になります。道で唾を吐いたり、我先にと行動する人が多いです。観光客の方には特に交通ルールに気をつけてほしいですね。道に工事の資材とかゴロゴロ転がってたりしますから。
韓国でお店を経営されながら感じた韓国はどうですか?
日本にいた時や留学生だった頃はただ韓国が好きという感じでした。商売を始めてからはあまりに日本とやり方が違うので困惑しましたが、それは私がまだ日本人の目線で物事を捉えていたからなんです。
「郷に入っては郷に従え」というか、ここは韓国なんだから韓国人の目線で仕事をしなければならないんだな、と今は思うようになりました
仕事をしていてやりがいを感じる時ってどんな時ですか?
日本人のお客さんが料理を食べて「懐かしくて涙がでる」「日本にいるみたいだ」と言ってくれた時は、私が泣きそうになりましたね。どんなにしんどくてもそれだけで何もかも吹っ飛びます。これからもそう言ってもらえるようにがんばりたいです。
ズバリ、松本さんのこれからの夢は?
今は1店舗のみですけど、後々2店舗、3店舗と出したいですね!
最後に日本から韓国に来られる方にメッセージをお願いします。
韓流で俳優や歌手が大人気ですが、それだけでない魅力が韓国にはまだまだあると思います。実際に韓国に来られて本当の韓国を感じて、もっともっと韓国を好きになってほしいですね。
インタビューを終えて・・・
インタビューの最初の方はまだまだ表情が硬かった松本さんですが、話が進むにつれてどんどん笑顔が増え、トークにも花が咲きました。何のつてもない韓国で女で一つで商売を始めるなんて、並大抵のことではないでしょうが、苦労話をしながらもなぜかその姿は輝いて見えました。
同じ在韓日本人として女性として、素直にステキだなと思えるし、励みにもなります。なんと第二の松本さんを目指して、日本からわざわざ訪ねてくる人が後を絶たないとか。そのたびに「大変やで~」と答えているそうです。
「韓国で働く日本人女性」の先駆者的存在の松本さん。これからもそのバイタリティで活躍してほしいですね。お店の準備で忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございました。