韓国の街を歩いているとあちらこちらで目にする屋台。リーズナブルで気軽に利用できることから、韓国人に馴染みの深い庶民の食文化のひとつと言えるでしょう。立って食べるタイプ、座って食べるタイプと屋台の形態もさまざまです。また、3食の食事をすべて屋台で解決できるほど、屋台によっておやつやお酒、食事類など売っているものも多彩です。
韓国社会においての屋台の現状
歩道に並ぶ屋台が多いですが、近年ではソウル市の「 歩きやすい街づくり」などの事業の一環で、一斉に別の場所に移転し新しい屋台通りを造成するという動きが見られます。以前は違法で営業する屋台が目立ちましたが、最近では違法屋台の取り締まりが厳しくなり、それぞれの区に届け出て区指定の屋台ブースで営業する屋台も多くなってきているようです。
また最近は野菜、小麦粉などの 価格高騰のため屋台フードの価格も値上がりし、以前に比べ屋台への客足が落ち打撃を受けているお店もあるとか。さらに、再開発にともなう移転や廃業などで、昔ながらの屋台が少しずつ消えつつあるようです。
子どものおやつにもぴったりの屋台フード
屋台の上には食べ物が並ぶ
大通り沿いの歩道に並ぶ屋台が多い中、ほこりや車の排気ガスなどによる影響で不衛生だと非難する声もあります。
また、夏場は熱い炎天下で長時間置かれた食べ物はいたみやすく、最近では各区で食べ物の安全検査を積極的に行なうなどして、衛生管理にも力を入れています。
屋台の形態
ビニールで冬の防寒対策を
朝から晩まで、暑くても寒くても雨が降っても雪が降っても季節・気候に問わず出ている屋台。冬になると寒気を防ぐため、屋台ごとビニールで覆いその中で食べられるようになっています。
屋台でよく目にするのがノーマルな立ち食いタイプで、韓国語ではノジョム/ノジョムサン(露店、露店商)と言います。主にすでに作ってあるものをその場で立ちながら食べるのが一般的。
また、韓国語でいうポジャンマチャ(布張馬車)は、夕方になると突如どこからか現れ、簡易テーブル、簡易イスが用意されている座って食べるタイプのこと。主に料理をつまみにお酒を飲む人が利用する、外で食べる居酒屋的存在です。
屋台では 焼酎(ソジュ)が好まれる傾向がありますが、ビールや マッコリなども置いているところもあります。最近では、室内ポジャンマチャという形態の居酒屋も流行しており、がらんとした店内に簡易テーブルと簡易イスが並び、入口はビニールで覆われた開放的でカジュアルな雰囲気です。気軽に利用できることから若者に人気。
立ち食いタイプのノジョム
座って食べるタイプのポジャンマチャ
室内ポジャンマチャ
代表的な屋台メニュー
<朝食編> 価格帯:1,000~3,000ウォン
鉄板でパンを焼き上げその中に薄焼き玉子、ハム、チーズなどを挟んだホットサンドイッチのトーストや、玉子、野菜、ハムなどが入った キムパッが立ち食いタイプの屋台で売られており、主に駅の入口や会社・学校前など、通勤・通学する人が多く通る場所で目にすることができます。時間に余裕のない場合はテイクアウトする人も。手ごろなため朝食として食べる人が目立ちます。
トースト
キムパッ
<昼食編> 価格帯:3,000ウォン~5,000ウォン
ビビンバ、お粥やクッス(韓国風うどん)など軽く食べられるメニューは時間のないときやあまりお腹が空いていないときの昼食にぴったり。主に市場の屋台などに行くと、このような食事メニューを味わうことができます。
野菜たっぷりのヘルシービビンバ
昼食時になると器にクッスをセッティング
屋台粥の定番はかぼちゃ粥(左)と小豆粥(右)
<おやつ編> 価格帯:500ウォン~3,000ウォン
リーズナブルな価格で気軽に食べることができるため、おやつ感覚で屋台フードを食べる人を多く目にします。 トッポッキや 天ぷら(ティギム)、 スンデなどは量が少し多いので屋台で立って(もしくは座って)食べることが多いですが、手に持って簡単に食べられる屋台フードは、歩きながら食べる人が目に付きます。安価で少量なため、あれもこれも食べえ比べたいという方にもおすすめです。
トッポッキ、天ぷら、スンデ
オデンは屋台の定番
<夕食・お酒編> 価格帯:5,000ウォン~20,000ウォン
お酒を飲みながら料理をたしなむ人が多く、主におつまみ系のメニューが揃います。立ち食い屋台同様、冬になると屋台全体がビニールで覆われ、温かいスープや鍋系のおつまみとともに焼酎などのお酒を飲みながら体を温める仕事帰りのサラリーマンも。おやつ類や一般の飲食店よりも価格は少し高めです。
夜になるとポジャンマチャが並ぶ
チャプチェや串もの、辛炒めはおつまみに
焼酎と相性抜群の豆腐キムチ
<季節メニュー>
季節ごとに顔ぶれが変わる屋台フード。暑いシーズンには冷たいものが、寒いシーズンには温かい屋台フードが並び、屋台フードのメニューの入れ替わりで季節の移り変わりを感じることができます。
春・夏
アイスコーヒー、フレッシュフルーツジュースでのどを潤す
ひんやり冷たいフルーツがおいしい
トルコアイスも屋台フードの仲間入り
※右上のレベルで拡大・縮小が可能です。地図上をドラッグすると、移動することができます。
おやつ・軽食
明洞(ミョンドン)の3本の通りをメインに、主に立ち食いタイプの屋台が多く並び、トッポッキなどの定番から若者が好みそうな変わりダネフードなど目白押し。
軽食・飲み
鍾路(チョンノ)一帯にあった屋台の一部が、2010年5月に街の整備事業の一環で「多文化通り」に移転。客層は学生から中高年まで多様。
軽食
東大門(トンデムン)のすぐそばにある屋台通りで、鍾路にあった屋台の一部が移転してできた新鋭屋台通り。主にトッポッキ、天ぷら、スンデ、トーストなどが揃う。
軽食
トッポッキ、スンデ、天ぷらなど、ノーマルな屋台フードが味わえ、 新村(シンチョン)の学生街にあることから、食事代わりに利用する学生の姿もよく見かける。
おやつ・軽食
若者が集う個性的な街の 弘大(ホンデ)エリアは、ワッフルアイスクリームなど屋台フードもユニーク。駅周辺には定番の屋台フードも充実。
おやつ・軽食・飲み
南大門(ナンデムン)市場の昼間は焼き餅、焼き栗、ホットッなどのおやつメニューの屋台が点在しており、夜になると居酒屋屋台が姿を現す。
屋台でのオーダーにチャレンジ!
トッポッキ、スンデ、天ぷら、オデンなどを売っているノーマルな立ち食い屋台でのオーダーの仕方をご紹介。基本的に立ち食いタイプは簡易イスがありませんが、イスがある場合は自由に席に座ればOK。
1.メニュー選び
目の前にできたメニューが並んでいることが多いので指差しでも○。基本的に韓国語オンリーで、メニュー表もなく価格表記されていないケースが多いので価格は注文する前に確認しておくのがベスト。何人分かも伝えること。1人分は「○○ ハナ(ひとつ)/イリンブン(1人分)」。
2.食べる
屋台フードは目分量でくれるお店も多いので、「マニジュセヨ~(たくさんください)」と愛嬌たっぷりに言えば多めにサービスしてくれることも。おやつ類はその場で食べず食べ歩きするケースが多く、皿で出されるタイプはその場で食べることが多い。テイクアウトも可能。
3.支払い
後払いが基本で、複数のメニューを注文した場合は申告制の場合も。また、カードやスピョ(小切手)は使えず現金支払いが常識。単品で頼むよりも、キムトッスン(キムパッ、トッポッキ、スンデ)やトッティ(トッ+ティギム)などのセットで頼む方がお得な場合も。
これだけはおさえておこう!屋台のキ・ホ・ン
天ぷら 2,000ウォン~2,500ウォン
お店によって、単品を1種類ずつ売っているお店もありますが、~ウォンで天ぷら~個という風に決まっているお店が一般的。
たいてい5つセットで売っているところが多く、好きな種類を選ぶことができるので、食べたい天ぷらを「イゴ ジュセヨ(これください)」と指差しで注文するのがベターでしょう。
テーブルの上にある醤油ダレにつけていただくのがノーマルな食べ方です。
天ぷらの種類
ヤキマンドゥ(揚げ餃子)
ヤチェ(野菜のかき揚げ)
コグマ(サツマイモ)
オジンオ(イカ)
キムマリ(韓国風春雨の海苔巻き)
オデン 500ウォン
ハケがなければ直づけOK、2度づけも○
何も言わず、だしに浸かっているオデンを取りそのまま食べればOK!
醤油ダレをつけていただきます。タレ用のはけがない場合はタレにオデンをそのままつけて食べるのが鉄則。
食べ終わったら、食べた数を数えるため串はテーブルの上にそのまま置いておきましょう。
オデンは醤油ダレをつけて
食べ終わった串は
台の上に
スンデ 2,000ウォン~3,000ウォン
スンデはスンデとレバー(カン)が一緒に出てくることが多く、「カンド トゥリョヨ(レバーも入れますか)?」などを聞かれることも。レバーが苦手な場合は「カン ペジュセヨ(レバーは入れないでください)」とお願いしましょう。
トッポッキ 2,000ウォン~3,000ウォン
お餅と一緒にオデン(練り物)やネギ、エゴマの葉が入っているところも。オデンスープで作っているところが多く、辛い中にもほんのりだしの味が広がります。
トッポッキのお餅は、米から作ったもの、小麦粉から作ったものと2種類があり、最近では米と小麦粉を混ぜて作ったお餅を使っているとろこも。米で作ったお餅は小麦粉のお餅よりも太いことが多く弾力があります。小麦粉のお餅はソースの吸収力がよく、味がなじんでおりやわらかい食感が特徴です。
米から作ったトッポッキ
小麦粉から作ったトッポッキ
ポイント1
真っ赤で甘辛いトッポッキソースは何にでも合う万能ソース!天ぷら、スンデ、キムパッをトッポッキソースに付けて食るのがツウな食べ方。特に、天ぷらをソースに絡めて食べる率が高く、「トッポッキソスエ ムチョジュセヨ(トッポッキソースに絡めてください)」とチャレンジしてみてくださいね。
また、トッポッキと天ぷらをミックスしてくてるところもあり、「ティギミラントッポッキ ソッコソチュセヨ(天ぷらとトッポキを混ぜてください)」とお願いしてみましょう。
スンデはトッポッキソースに
つけてもおいしい
トッポッキソースに絡めてもイケる
トッポッキと天ぷらは黄金コンビ
ポイント2
基本的に何かを注文すれば、オデンスープは飲み放題。最初の一杯はお店の人がついでくれることもありますが、おかわりも含め基本はセルフサービスです。お水やお茶などは言うとくれるところも(セルフサービスの場合も)。
また、メニューのお持ち帰りも可能で、袋などに詰めてくれます。ホテルに戻って食べたい、多すぎて食べきれないという場合は、「ポジャンヘジュセヨ(包んでください)」とお願いしましょう。
※一般的な屋台での食べ方を紹介しましたが、お店によって異なる場合もあります。
コネストスタッフに聞きました!韓国屋台あれこれ
韓国スタッフ:A、B 日本スタッフ:C、D
屋台では女性ひとり客も多い
C:屋台って日本から友達が来たときに行くくらいで、普段はあんまり利用しないな。
A:私は、ひとりで食事しないといけないときに食堂でひとりで食べるのは嫌だから、屋台で簡単に済ませたりするよ。急に焼酎が飲みたくなったとき、通りかかった屋台でひとり飲みも。
D:私は逆に食堂でひとりはOKだけど、屋台ではひとりは勇気が出ないな…。いまだに屋台ってちょっと敷居が高いよ。お客がいない屋台に入るのもちょっと怖いし、かといってお客と主人が仲良さそうに話しているところに入るのも緊張するし。
C:鯛焼き、焼き芋、ホットッとかのおやつ系の屋台は、先払いだし利用しやすいよね。
B:韓国では飲み会の2、3次会で行ったり、飲んだあとに小腹が空いたら屋台で軽く ラーメンやクッスを食べたりするよ。
ドラマでもよく登場する屋台飲み
A:テレビで屋台シーンが出てきたら無性に屋台で食べたくなる!そういうシーンに憧れて、学生時代に友達と真冬に屋台に行ったけど、寒すぎてほとんど手付けずでお店を出た苦い思い出が…。
D:私も韓国に来た当初は屋台にすごく憧れた。「韓国男性と屋台で焼酎飲むぞ!」って夢見てたもん。特に映画「 私の頭の中の消しゴム」で、チョルスとスジンが屋台で焼酎を飲むシーンが最高!テーブルの下で手を握ったりしてときめいちゃった。
女性同士だと男性グループからお誘いも!?
A:学生時代、隣に座った男性グループから一緒に飲もうと声をかけられて、その後何組かカップル誕生したことも。
C:以前、屋台の主人にいとこを紹介するから一度会ってみない?と真剣に言われ戸惑ったことあったっけ・・・。
D:主人がお店のお酒を飲んで泥酔していたり、お客が頼んだメニューを一緒に食べてたり、はじめは結構カルチャーショックだったな。(笑)
野菜スティックとスープはサービス
B:同じ屋台に通い続けたら顔を覚えられて、ラーメン、スンデ、トッポッキとかサービスでくれるよ。最近はお酒だけ頼んでもサービスのおつまみだけでお腹いっぱいになるな。
D:一回サービスでポンデギ(蚕)が出てきけど、 ポンデギ苦手だからちょっと困ったことが・・・。
A:セレブな街の 狎鴎亭(アックジョン)や清潭洞(チョンダンドン)のあたりの屋台も有名だよね。外車でやってきたお金持ちの若者やスターが、庶民的な屋台でお酒を楽しむっていうおもしろい光景が見られるとか。
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