地方の風土や特産物を生かした郷土料理。「その土地に行かなければ食べられないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません!全国各地から多くの人が集まる首都ソウルには、現地の食材や調理法にこだわった料理を出す郷土料理店がたくさんあります。ソウルにいながらにして各地の名物料理を食べ歩く、味めぐりの旅に出かけてみませんか?
<基本的な味ポイント!>
1.北部地方は薄口で辛さ控えめ、南部地方は濃いめで辛めです。
2.山間部はきのこや山菜、平野部はお米や野菜、海岸部は海鮮料理が豊富です。
韓国の北東部に位置する 江原道(カンウォンド)。 雪岳山(ソラクサン)や 五台山(オデサン)など、白頭大幹(ペットゥデガン)と呼ばれる朝鮮半島を縦断している山脈(分水嶺)の西側を「嶺西(ヨンソ)地域」、東側を「嶺東(ヨンドン)地域」と呼び、同じ江原道でも東西で住環境・食文化が大きく異なります。
内陸部で標高が高く、高冷地が多い「嶺西地域」ではじゃがいも、とうもろこし、蕎麦(そば)、山菜などを使った料理が有名。一方、海沿いに平野が広がる「嶺東地域」の各都市では海鮮料理が豊富です。
タッカルビ(鶏肉の鉄板炒め):春川(チュンチョン)など
「 タッカルビ」とは「鶏カルビ」という韓国語で、ヤンニョム、コチュジャンで味付けした鶏肉を半日ほど寝かし、ざっくりと切ったキャベツ、サツマイモ、ニンジン、ネギなどの野菜と一緒に、ピリ辛く炒めた料理です。
春川(チュンチョン)一帯の郷土料理として知られ、「 ユガネタッカルビ」などのタッカルビ専門チェーン店もあり、全国各地で手軽に食べられる身近な韓国料理になりました。現在は鉄板が主流ですが、もともと炭火の網焼きだったので、老舗店の中には今でも尚、炭火で味わえる店舗も残っています。
同じ江原道の郷土料理で、そば粉で作る マッククスも食後のシメの一品におすすめです。
コンドゥレ(高麗アザミ)ご飯: 旌善(チョンソン)など
山間部の地域では田畑の確保が難しく、お米や野菜はとても貴重なものでした。そこで山で採れる山菜を ナムル(和え物)にして食べてきました。
旌善(チョンソン)にはコンドゥレと呼ばれる高麗アザミが豊富で、ごま油を足して釜でお米と一緒に炊いて、ナムルご飯にして味わって来ました。「懐かしい祖母の味」を彷彿させる、香ばしく素朴な味わいがソウルの都会っ子にも人気。韓国の昔ながらの家庭料理が味わえると、日本からの観光客にもファンが多い料理です。
ジャンカルグクス(味噌煮込み手打ち麺):江陵(カンヌン)など
<他の郷土料理>
・ サンチョノ(ヤマメ)の刺身:華川(ファチョン)
・メミルジョンビョン(そば粉クレープのキムチ巻き):平昌(ピョンチャン)など
・オンシミ(韓国版ニョッキ):平昌(ピョンチャン)など
・原州式 チュオタン(どじょうスープ):原州(ウォンジュ)
・ ファンテ(干したスケトウダラ)スープ:麟蹄(インジェ)など
・オジンオ スンデ(イカの詰め物):束草(ソクチョ)
・ 草堂(チョダン)スンドゥブ:江陵(カンヌン)
・ソンイ(松茸)ご飯:襄陽(ヤンヤン)など
・コムチ(ウツボ)スープ:三陟(サムチョク)
など
山間部の忠清北道(チュンチョンプット)では山菜料理や川魚料理が多く、平野や干潟が広がる忠清南道(チュンチョンナムド)では豊富な農産物・海産物を活かした料理が豊富です。どちらの地域も淡泊で素朴な味付けが多いのが特徴です。
カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け):唐津(タンジン)、瑞山(ソサン)など
カンジャンケジャンの「 カンジャン」は醤油、「ケジャン」はワタリガニを醤油やコチュジャン(唐辛子味噌)のタレに漬けたものを指します。
忠清南道から全羅北道にかけての西海岸・近海がワタリガニの産地で、メスの甲羅の中に詰まっているオレンジ色の卵が大きくなる春(3月から4月)に捕れたものが一年で最も美味しいと言われています。
日本からの観光客にも絶大な支持を集める人気メニュー。ソウルの専門店でも瑞山産のワタリガニを使用している店舗も少なくありません。
牡蠣:保寧(ポリョン)など
韓国の西海岸の保寧や、南海岸の 統営(トンヨン)が 牡蠣(カキ)の産地で有名で、韓国語で牡蠣はクルと発音します。日本同様に冬に好まれますが、メニューによっては1年中、味わえます。
韓国の牡蠣料理の代表格は、牡蠣入りスープご飯のクルクッパや、石焼牡蠣ビビンバ。朝食・昼食・夕食どの時間でも1年中味わえるので人気です。その他には牡蠣チヂミ、牡蠣と茹で豚肉を一緒に味わう 牡蠣ポッサムなどのおつまみメニューも人気の牡蠣グルメに挙がります。
蓮の葉ご飯:扶余(プヨ)など
韓国の三国時代・百済(くだら・ペクチェ)最後の都となったのが 扶余です。市内中心部にある「 宮南池(クンナムジ)」は蓮の花が咲く大きな池で、かつて貴族たちが船を浮かべて楽しんだと伝えられています。
そんな蓮の葉を活用したご飯が「蓮の葉ご飯」で、扶余市内には専門店が点在。たくさんのおかずと一緒に香ばしいご飯が味わえるので、扶余旅行の際に必ず食べたい料理の一つです。
<他の郷土料理>
・ クッパ:公州(コンジュ)
・塩辛:論山(ノンサン)
・並川(ピョンチョン)スンデ:天安(チョナン)
・ 参鶏湯(サムゲタン):錦山(クムサン)
・ソガリ(コウライケツギョ)の海鮮鍋:丹陽(タニャン)など
・キジ刺し:忠州(チュンジュ)
など
肥沃な湖南(ホナム)平野で採れる野菜や穀物、海岸沿いの海産物、そして内陸部の山菜など…朝鮮半島で最も食材が豊かな地方として知られています。材料を惜しみなく使い、丹精込めて作られる料理は、種類豊富で見た目も豪華。
気候が暖かい南部地方に位置するため、濃く塩辛い味付けが特徴。キムチ作りでは唐辛子粉に特産品の塩辛をたっぷり入れた濃い目の薬味(ヤンニョム)が欠かせず、他の地方に比べて味わい深いキムチになっているお店も少なくありません。
ビビンバ:全州(チョンジュ)など
ご飯の上に野菜や山菜のナムル(和え物)を彩りよく盛り付けた韓国を代表するご飯料理で、日本でも良く知られていますが、 全州が ビビンバ発祥の地として伝えられています。
「全州ビビンバ」は陰陽五行説に基づいて5色の鮮やかな食材がキレイに盛られていて写真映えもし、栄養も満点。全州の観光名所「 全州韓屋村」エリア内に老舗店が点在しているので、昼食や夕食として観光プランに良く組み込まれます。
南原式チュオタン:南原(ナモン)
チュオタンとは、どじょう(泥鰌)を葉野菜などと一緒に煮込んだスープ料理です。どじょうを丸ごと入れて煮込む店舗もありますが、一般的には、どじょうを骨ごとすり潰し、味噌で味付けしたスープで提供されるスタイルが有名です。
地域ごとに調理や具材が異なり、 南原式はどじょうと一緒に大根の干し菜や青菜を煮こんだ、コクのある濃厚な一品。ソウルの街中にも「南原チュオタン」と書かれた看板を目にすることができます。
ホンオ(ガンギエイ):木浦(モッポ)、珍島(チンド)など
ホンオ(洪魚)とは、ガンギエイを指す韓国語です。強烈なアンモニア臭と、独特な弾力が特徴の魚で、 マッコリのおつまみにピッタリ。
木浦から船で3~4時間の位置にある 黒山島(フッサンド)産のホンオが有名で、「 木浦総合水産市場」で土産に購入できるほか、お隣の羅州(ナジュ)市の栄山浦(ヨンサンポ)にはホンオ料理専門店街があり、ホンオ愛好家なら知らない人はいません。
<他の郷土料理>
・カンジャンケジャン:群山(グンサン)
・チーズ:任実(イムシル)
・ クルビ(いしもち):霊光(ヨングァン)
・ ユッケビビンバ:咸平(ハムピョン)
・ アワビ:莞島(ワンド)
・ トッカルビ(韓国式ハンバーグ):潭陽(タミャン)
・光陽式 プルコギ:光陽(クァンヤン)
・ムツゴロウ鍋:順天(スンチョン)
・ソデフェ(シタビラメの刺身)のピリ辛和え:麗水(ヨス)
・コマッ(ハイガイ)料理:宝城(ポソン)
など
韓国の東南部に位置し、東海岸と南海岸に面しているので海側の都市では海鮮料理が豊富で、特に魚料理が多く料理には塩味をきかせ、やや辛めに仕上げるものが多いです。内陸部では、キノコや山菜など旬の素材の旨味をそのまま活かす味付けが多いです。
チムタク(鶏の甘辛煮):安東(アンドン)など
チムタクとは鶏肉を甘辛く蒸し煮にした料理で、大皿で出されるのでボリューム満点です。もともと 安東(アンドン)の郷土料理でしたが、2000年頃に韓国国内でブームが起こって全国区に。チムタク専門の全国チェーン店もあり、手軽に食べられるようになりました。
アグチム(アンコウのピリ辛蒸し煮):昌原(チャンウォン)など
アグチムは、食べやすい大きさにカットしたアンコウと、大量の豆もやしをコチュジャンベースの辛い調味料で蒸し煮にした辛目の料理です。
昌原(チャンウォン)市の馬山(マサン)地区の郷土料理として知られています。ソウルの 仁寺洞(インサドン)エリアには、アグチム専門店が集まる アグチム通りがあり、どの店舗も人気です。
テジクッパ:釜山(プサン)、密陽(ミリャン)など
豚肉の各部位を煮込んだスープにご飯と肉を入れた「 テジクッパ」は、とても素朴な味わいです。
一人前の土鍋で運ばれてくるので、グループでも、おひとりさまでも比較的リーズナブルな価格で気軽に食べられ、日本からの観光客の間でも釜山旅行中のマストグルメとして良く知られています。
<他の郷土料理>
・ズワイガニの蒸し煮:盈徳(ヨンドッ)、蔚珍(ウルチン)など
・トコロテンご飯:栄州(ヨンジュ)
・クァメギ(サンマの干物):浦項(ポハン)
・ユッケビビンバ:晋州(チンジュ)
・シジミ汁:河東(ハドン)
・ ミルミョン:釜山(プサン)
・ ナッコプセ:釜山(プサン)
など
美しい大自然と清らかな空気を誇る 済州道(チェジュド)。
海で採れる魚介類や海草、陸地で収穫される野菜が主な食材として用いられ、素材の持ち味を生かしたシンプルで素朴な料理が多く、済州黒豚をはじめ、キジ肉、粥・刺身・蒸し物などにして食べられるアワビが有名です。
黒豚
韓国では 済州島(チェジュド)や 智異山(チリサン)などが黒豚の産地として有名で、通常の豚肉よりも肉質が良く、うまみがあります。
網の上で熱する、ミョルチジョッ(カタクチイワシの塩辛)を使った特製ソースも本場済州島の味。塩辛独特の風味が唐辛子の辛みやニンニクの香りで中和され、豚肉との不思議な調和を生み出してくれます。
クッパ・ヘジャングッ
クッパやヘジャングッといったスープご飯は、どの地域でも食べられる韓国料理ですが、済州島式は、じっくり煮込んだ牛骨スープに、たくさんのお肉や野菜に、済州島産の唐辛子や調味料が味の決め手です。
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