韓国酒場の描写が素晴らしい紀行作家の鄭銀淑先生が、WEBマガジンの中で、仕事場である忠清北道堤川市からソウルへ帰るのに「後ろ髪を引かれる思いでこの店を去る」と表現されたカルメギサル屋に行ってきました。

記事内容も写真も魅力的なのですが、場所柄行く機会はないだろうと思っていた堤川市に、たまたま出掛けることがあり、住所から店の場所の見当をつけて近くに宿も確保しました。

地図を頼りにいざ店の前に立つと写真の通りの店構え。店内にお客さんの姿はありませんが勇気をふり絞って入ってみました。店の奥の小上がりで横になっていたおばちゃんは、おひとり様と見るなり「うちは食事はないよ」と怪訝そう。焼肉を食べに来たこと、2人前を注文することを申し出ると、ようやく着席の許可が下りました。

メニューはカルメギサル（100g5,000ウォン）とソヨムトン（200g5,000ウォン）の2種類だけ。おばちゃんは注文も聞かずにカルメギサルを持ってきました。
コンロと鉄板をセットし、肉を焼き始めた頃にはようやく笑顔が。こちらも、インターネットで紹介されていて（スマホを見せながら）とても美味しそうだったから日本から来たことなどを話し打ち解けてきました。

カルメギサルが焼ける頃、ヨムトン（ハツ）も追加オーダーすると、おばちゃんは驚いた様子で調理場へ。（合計3人前を注文したから？）テーブルにはヨムトンも加わり、本日の役者が全て揃いました。

まずは、カルメギサルを一口。うわぁ～ジューシー！噛み応えもあり肉の味が口の中に拡がります！冷えたチャミスルとの相性もバッチリ！わざわざ鄭先生の後追いをして来た甲斐がありました。さて、ヨムトンにも期待が高まります。コリコリッ！ハツ特有の歯応えで、臭みは全くありません。これもまた美味しい！この店は、肉と一緒にタマネギと餅も焼くスタイルです。肉と野菜、ふっくら仕上がった餅は食べ飽きることがない絶妙の取り合わせです。

美味しい、美味しいと言って食べる私の横で、おばちゃんはニコニコしながら肉の世話をしてくれます（お客さんは私だけ）。焼き上がった肉を野菜にのせてくれたり、キムチを一緒に焼いてくれたり・・・言葉は通じませんが、愛情が伝わってくる感じがして、お腹と共に心も満たされる至福の時を過ごしました。

店は高齢のおばちゃんがひとりで切り盛りしている様子。店の奥には布団が敷かれ、お客のいないときは横になっているようです。次に行くまで、元気で店を続けていてくださいね。