韓国の‘ミスター寿司王’アン・ヒョジュさんが本を出版-２

２０年の歳月は、寿司を握る指先に心までも載せる。 ‘アン・ヒョジュの寿司’にこだわる客が増え、朴泰俊（パク・テジュン）ポスコ名誉会長や崔泰源（チェ・テウォン）ＳＫ会長も常連だ。 「崔会長の息子が美食家です。 ‘ミスター寿司王’を読んだのか、日本の寿司学校に行ってみたいと話しているようです」。

日本で生まれて日本人の味覚を持つ朴会長は必ず「アン社長はいるか」と電話で確認してから店に来る。 「休む予定でも予約が入れば出なければいけないので疲れますが（笑）、そのおかげで遣り甲斐もあります。 生涯、私がもてなそうと思っています」

アンさんは味よりも真心を重視する。 どんなに良い食材を使っても、心を込めなければ味が落ちるということだ。 こういう考えからアンさんは寿司台を挟んで客と心の疎通を図る。 ‘スシヒョ’をオープンする頃、毎日乳業の金庭完（キム・ジョンワン）副会長が巨額を支援してくれたのこのためだ。

「ホテルにいた頃、‘資金は支援するから店を出してみなさい’と話してくれましたが、冗談なのか本当なのか分かりませんでした。 友人を紹介すると話すと、‘別に金儲けのためにするつもりはない。アンさんでなければしない’と言っていました。 年を取りながら悩んだ末、金副会長を訪ねました。 すぐに‘口座番号を知らせてくれ’と言われ、４億ウォン（約４０００万円）を送金してくれました」

金副会長は飲食店の経営には干渉せず、アンさんはもっと良い条件で一緒に店を出そうという人たちの誘いもすべて断った。

「スシヒョ」はこの秋、４店目をオープンする。 規模が大きくなっても‘アン・ヒョジュの味’は維持できるのか。

「検証されていない人は支店に送りません。 お金は今のままでも十分に儲けることができます。 フランチャイズの説明会を開くとなれば行列ができるほどです」

自信の根底には終わりのない研究心がある。

「酢コチュジャンをどうすればおいしく作れるか研究しています。 釜山（プサン）に有名な刺し身店がありますが、そこの酢コチュジャンは逸品だと聞いています。 寿司がすべてではありません。 フェトッパ（刺し身丼）も時々食べるとおいしいものです。 今日の店員のメニューはフェトッパなので食べていってください」

午後４時半、晩の営業のために早い夕食をとる時間だ。 寿司を握る姿を見せてほしいと頼んだ。

アンさんは真っ白な調理服に着替えた。 全神経を包丁に集中し、巧みに魚をさばく姿は写真と同じだった。 アンさんは右手で寿司桶から飯をとり、左手で魚をとって握る。 ワサビがさっとぬられ、あっという間に花が咲いたようなマグロの寿司が出来上がった。 歯と舌の間で飯が崩れるように散り、マグロが柔らかくとけていく。

「平凡な人生がつまらないように、味にもパノラマが必要です。 薄い味から濃い味に移りながら、いろんな味を楽しんでください。 寿司をおいしく食べる方法です」