韓国旅行「コネスト」 第60回~梅林富士夫さん ニコンイメージングコリア | 日韓わったがった ―韓国で、はたらく。 | 韓国文化と生活
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第60回~梅林富士夫さん ニコンイメージングコリア

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韓国人は写真好き、という話はよく耳にしますが、日本製のカメラは韓国でも親しまれています。その中のひとつがいわずとしれた、デジタル一眼レフカメラで有名なニコン(NIKON)。国内外メーカーがしのぎを削る韓国カメラ業界においてデジタル一眼レフカメラだけでなく、2011年下半期には「COOLPIX」がコンパクトカメラの占有率で2位となるなど確実な位置を固めつつあります。 同社の製品を韓国へ輸出、販売する「株式会社ニコンイメージングコリア」で、2010年より社長を務めるのが、梅林富士夫さん。初めての「海外生活」「社長業」への取組み、日韓写真文化の違いなどバラエティに富んだお話を、南大門(ナンデムン)近くのオフィスで伺いました。
名前 梅林富士夫(うめばやし ふじお)
勤務先 株式会社ニコンイメージングコリア 代表理事 社長
年齢 55歳(1956年生)
出身地 福岡県
在韓歴 2年
経歴 早稲田大学商学部卒、1979年に株式会社ニコン(旧社名:日本光学工業)入社。30年あまり営業に携わり、株式会社ニコンイメージングジャパン常務取締役に就任。2010年6月より韓国で現職に就く。ソウル博多会(ソウル在住の福岡県出身者の集まり)の会長も務める。
伝えたいことを直接形に。現地法人化の背景
韓国における、ニコンの現地法人は3社ありますが、カメラ等の販売とサービスを行なうニコンイメージングコリアが創立されたのは2006年。ちょうどフィルムからデジタルカメラに一気に変わってきた時期で、日本の競合社もほぼ同時期に現地法人を立ち上げていました。

もともと製品販売自体は数十年前から行なっていましたが、初期は製品をそのまま輸入できず韓国の工場で組立て・販売するノックダウン生産を実施し、輸入が可能になってからも現地の業者を経由して販売していました。

しかしそうなると、ブランド認知が韓国内の販売会社の力関係に左右されたり、自社の管理下にないことでマーケティングがぼやけてしまう問題があり、私たちの伝えたいことを直接反映させたいという意向から、韓国で現地法人が作られました。
「知っている」から「買う」への転換を
韓国での課題の一つに挙げられたのが「認知」から「購買」への転換です。それまではテレビCMやウェブでの宣伝に重点が置かれており、製品は納入さえしておけば業者が売ってくれるだろうと、販売の現場にまで目が届いていませんでした。

そのため「ニコンという名前は知っているが、購入は別メーカーに」と流れてしまう可能性がありました。消費者の興味を最後までひき、販売に至るまでの仕組みを整える、営業面での工夫が必要とされたのです。
一方、私は日本で営業を30年あまり行なっており、韓国の拠点と直接つながりのある「ニコンイメージングジャパン」で役員を務めていました。そのような関係があり、海外への転勤経験は一度もありませんでしたが、2010年の6月から韓国に赴任しました。
リアルなコミュニケーションで販売店の満足度アップ
製品の流れは日本とほぼ同じで、家電量販店や専門店あるいはオンライン店舗の各拠点へ当社から製品を納入し、販売という形です。日本ではこれら販売元との関係づくりとコミュニケーション強化がシェアナンバーワン達成につながった経験があり、それを生かした取組みを行なっています。

一つは現場の店員の専門知識を上げること。「韓国の店員はぶっきらぼう」とも言われるように、従来の販売現場では価格の交渉に終始しがちでしたが、きちんと製品について説明して納得させた上で購買に向ける仕組みを作っています。
取引先の巡回や製品の情報提供も積極的に行ないます。そうすることが店舗の質を高め取引先の信頼を築き、自社製品の販売促進につながるのです。
オンライン攻略は課題の一つ
ただし難しいのは日韓購買スタイルの違いです。韓国ではウェブやテレビショッピングを通じたオンライン販売の比率が大きく、カメラのように単価の高い商品でも、店頭で手にとることなく購入されます。

また韓国の消費者は周囲の情報やウェブサイトのクチコミを重視し、現場の店員やメーカー情報をなかなか信用しないともいわれます。実際、量販店系のシェアは徐々に上がってきているものの、日本と同様の方法が必ずしも効果に結びつくわけではありません。そこが苦労する点であり、今後の課題ともいえそうです。
風景の日本、人物の韓国─違いは被写体にあり
街角ではモデルさながらの

撮影もしばしば
街角ではモデルさながらの
撮影もしばしば
日本人の写真は風景が中心。一眼レフも、中高年が定年後に「旅先で写真でも…」と購入します。一方で韓国は若者が大きなカメラを抱えて恋人を撮影するなど、人物にレンズが向けられます。日韓の写真の大きな違いは、被写体にあるんです。

したがって日本では風景用の広角レンズが売れますが、韓国で需要があるのは後ろをぼかして撮れるようなポートレート用のレンズです。

韓国メーカーからは自分撮り用のモニターがついた製品まで出ていますが、写真文化の差は販売にも反映されています。

つまり、他の国では認知されている「ニコン製品が風景に強い」という点は、韓国の消費者にはなかなか響きません。もちろん人物もきれいに撮れるのですが、それを効果的に宣伝してきませんでした。

そこで今は少しマーケティングの方法を変えて、人物写真に適したレンズも多いということを韓国でも広めようとしています。
コリアン・サービスの持ち味は、スピードと「ケンチャナヨ」
本社にあるサービスセンター
本社にあるサービスセンター
韓国では機械製品のアフターサービスの水準は全般的に高いといわれ、特に対応スピードは早いです。日本は販売店で受付をした上で別の場所で修理するため時間がかかりますが、韓国は修理認定店に持って行けば、早いものはその場で戻ってきま。

また、日本はマニュアルを重視するため、一定レベルを超えるとサービスできない場合があります。そこを韓国は「ケンチャナヨ(韓国語で「大丈夫」の意味)」と対応する。例えば飲食店でも持ち込みができるなど、柔軟性があるという意味でよいと思います。
ニコンイメージングコリアも、積極的にサービス面の充実をはかろうとしています。ASは本社にあるサービスセンターと全国24店舗の修理認定店で受けつけているほか、少人数制の講習会や作品展示など、修理以外にも気軽に接してもらえるような取り組みを頻繁に行なっています。
軍隊の影響?「指示待ち」な社員にショック
ニコンイメージングコリアの社員は約70人。平均34歳と若い社員が多い会社ですが、実は就任すぐにカルチャーショックを受けた経験があります。社内の実態を知るために社員ひとりひとりと面談をした際、問題はないかと尋ねても意見がほとんどあがりませんでした。

私は会社の基盤を強くするためには個々人が考えて行動することが必要だと思っていますが、特に男性社員は軍隊の上下関係を経験しているからか、ほとんど文句を言わず、トップダウンを待っているような雰囲気がありました。飲み会でも最初は全員が横を向いて飲むので驚きましたが、韓国の縦社会のようなものに日本とのギャップを感じました。
積極的な意見交換と方向性の共有を
社員の意見が挙がらない理由については、会社の理念や方向性がきちんと示されていない点が指摘できました。また互いの仕事をカバーできる仕組みがなく、社員同士でつながりが薄いのも問題でした。それらの改善を意識して様々な活動を行いましたが、その一つが2011年1月の創立5周年に向けたプロジェクトです。

社員自らが会社を変えていこうという趣旨の取組みで、イベントやCSRなど組織を越えたチームを作って、社内のほぼ全員を参加させました。そういった経験を通じ、他部署のメンバーと意見交換ができるようになったり、自分の思いが現実化されることで積極的に意見が言えるようになりました。

また会社としての方向性も少しずつ明確に共有されるようになったと思います。ほかには韓国人スタッフが元来もつ発想力とプレゼン能力をうまく実践に生かせるようサポートしたり、個人の能力をよりよく知るため人事ローテーションを活発化させたりすることで、社内全体をプラスの方向にもっていこうとしています。
写真を飾るのも社内の意識を変える方法の一つ
写真を飾るのも社内の意識を変える方法の一つ
頼もしい社員たちと
頼もしい社員たちと
週末は自炊。スーパーのアジュンマとの交流も
時間がある日はスーパーでの

買い物も楽しむ
時間がある日はスーパーでの
買い物も楽しむ
週末は最近、料理をよく作ります。単身赴任で栄養が偏りがちなので始めたら意外に上達して、人に食べさせたいくらい。ネットでレシピを探したり、スーパーのアジュンマ(おばさん)に野菜の使い方を聞いたりというのも楽しいです。

ほかにはゴルフや、体のことを考えて運動もしています。韓国語は仕事に余裕ができてから学ぼうとしていたらいつのまにか時間が過ぎてしまいました。職員も半数くらいは日本語が話せるので、生活の最低限のことは話せますがなかなかうまくなりませんね。
自分のもっているものを共有しながら輪を広げる
早稲田大学出身者の「ソウル稲門会」にも参加
早稲田大学出身者の「ソウル稲門会」にも参加
韓国で残念なのはネットなどの情報を鵜呑みにしやすいことと、汗を流してものづくりをする職人があまり尊敬されないこと。逆にお年寄りを大切にするところ、なにより人間関係が濃密なのがよい点です。

私はソウル博多会(ソウル在住の福岡県出身者の集まり)で会長を務めていますが、日本人・韓国人問わずネットワークをもっていると視野が広がり新しいチャンスも生まれるので、人見知りせずに友人を作るのが大切だと思います。
私の場合は積極的に写真を撮ったり、カメラを媒介にコミュニケーションをすることがありますが、自分の持っているものを相手と共有しながら関係を広げていけたらいいですね。
よりカジュアルなカメラライフを提案
これまでの取組みの成果もあり、シェアが拡大しつつあった折に2011年は東日本大震災、そしてタイの浸水と災害が続きました。特に、まだのびしろがあると見られていたデジタル一眼レフの部品の多くが生産中断され、苦しい時期でした。

しかし一方でコンパクトカメラの売り上げに関しては、 特色のある製品の展開によりスマートフォンが台頭する中でもシェアをコンスタントにのばしています。

現在はよりカジュアルにカメラを持ってもらえるよう提案を進めており、2011年からはBIGBANG2NE1などを広告モデルに、若者に向けたマーケティングも展開しています。中でも重視したいのが、女性。

これまでは被写体になりがちでしたが今後は積極的に使ってもらえるよう、女性向けマーケティングチームを作りました。シールで装飾できる製品やカメラバッグの販売、女性向けの写真講座などで、購買の拡大を狙っています。
モデルとなったYGエンターテイメントの歌手とともに
モデルとなったYGエンターテイメントの歌手とともに
シールでデコレーションできる「Nikon1J1」。

 実は梅林さんも愛用
シールでデコレーションできる「Nikon1J1」。
実は梅林さんも愛用
「感動創造」し、目指すはナンバーワン
海外生活以外にもう一つ「初めて」なのが、社長業です。社長とは自分の言ったことがそのまま現実になるので、厳しい反面、やりがいがあります。企業は社長の力以上にはなれないといわれますが、日々勉強をして、常に社員にアドバイスできる立場にいたいです。

会社とは、基本的には企業理念の実現です。ニコンイメージングコリアの企業理念である「感動創造」は、従業員が提案した言葉です。相手の期待通りのことをしても感動はおきないので、それ以上の営業やサービスを目指したいと彼ら自身が気づいてくれたのが嬉しいです。
営業は韓国企業の中で最も厳しいとされるサムスン以上に努力を、サービスは一流ホテルに勝るほどの水準で提供し、最終的には売り上げ・シェアから従業員の満足度まで全てナンバーワンになりたい。日本でシェアナンバーワンを実現したときは社内全体が盛り上がりましたし、今後はそのときの気持ちをニコンイメージングコリアのメンバーに経験させてあげたいと思っています。
インタビューを終えて・・・
韓国で最も印象的だったことは?という質問に「震災と洪水で苦しい時期に、社員ひとりひとりがなにをすべきか理解し努力してくれたこと」と語る梅林さん。 長年営業の第一線で活躍し、社員を率いる社長という立場に立たれる梅林さんならではの確固とした洞察と考え方で、カメラという「モノ」はもちろん、その裏にある「人」や「コミュニケーション」の深さについて知ることができました。今後も写真を通した文化は広がりを見せてくれそうですが、韓国での新たな展開と梅林さんのご活躍を期待しています。
株式会社ニコンイメージングコリア
株式会社ニコンの海外グループ会社として2006年に設立。コンパクトデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラをはじめとするニコンの映像関連製品の輸入、販売およびサービス事業を展開。同グループの韓国現地法人にはニコンプレシジョンコリア(半導体や液晶に関わるサービス)、ニコンインストルメンツコリア(顕微鏡等の販売)がある。
住所:ソウル市 中区(チュング) 南大門路4街(ナンデムンノサーガ) 45 ソウル商工会議所ビル 12F
電話:080-800-6600
ホームページ:www.nikon-image.co.kr
韓国旅行おトク情報
  最終更新日:12.05.04
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