韓国旅行「コネスト」 第18回~富義之さん(日本大使館公報文化院) | 日韓わったがった ―韓国で、はたらく。 | 韓国文化と生活
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第18回~富義之さん(日本大使館公報文化院)

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日本に最も近い隣国、韓国。両国間を行き来する人は今や年間500万人に達し、様々な分野で盛んな交流が行われています。中でも韓流ブームに代表される文化面での交流は、お互いについての理解を一層促し、国と国との関係発展にも重要な意味を持つものです。今回は韓国現地において日本文化を発信し続けてきた公報文化院を訪ね、副院長の富義之さんに、韓国で働くようになったきっかけ、日韓文化交流にかける思いなどを伺ってきました。

名 前:富義之 (とみ よしゆき)
勤務先:在大韓民国日本国大使館 公報文化院(副院長)
年 齢:38歳(1970年生)
出身地:兵庫県神戸市
在韓歴:のべ7年4カ月
経 歴:立命館大学文学部西洋史学専攻卒業後、1992年外務省入省。在大韓民国日本国大使館研修員、公報文化院(97年まで)、外務省経済局、アジア大洋州局、北米局を経て2004年在大韓民国日本国大使館経済部、2007年7月より現職。
韓国ではたらくきっかけ
まずは韓国に来られたきっかけをお聞かせください。
外務省に入ると、「研修語学」といって外国語を1つ選択して専門的な研修を命じられます。その「研修語学」として韓国語を希望したのがきっかけですね。外務省の研修所では語学だけでなく、外交官として一般的に有しておくべき知識や、世界情勢、日本文化などについての講義を履修し、入省翌年の93年7月、研修員として韓国に赴任しました。ちなみに私にとってはそれが初めての海外渡航でした(笑)。
韓国に対する関心は以前からお持ちだったんですか?
私は生まれが神戸で育ちが京都なんです。関西出身なので、周囲に在日韓国・朝鮮人の友達がたくさんいました。そういう環境で育ちながら、日本人ではないけれども日本に住み、日本語を話す人たち、そして彼らの母国に対する関心は、幼い頃から漠然とありましたね。しかし、こと韓国語については学んだことがなく、大学でも韓国とはまったく関係のない分野を専攻しました。まさか自分が韓国で、韓国語を使って日韓の交流事業を生業にするとは想像もしていなかったですね。
語学学校は何級からスタートされたんですか?
これは言うも涙、語るも涙なんですが(笑)。クラス分け試験の直前に、韓国人の家庭教師をつけてマラギ(会話)の練習をするなど、思い切り準備勉強をしたんです。そうしたら非常に良い成績を取れたようで、いきなり5級に入れられたんです。ところが喜んだのも束の間、いざ授業がスタートすると難しすぎるんですよ。周りは在米韓国人2世や大学で韓国語を専攻してきた人たちばかりで、皆ネイティブ並みにデキるんです(笑)。そんな中にいきなり放り込まれたので、ついていくのに必死でした。
語学堂卒業後はソウル大学校哲学科に編入しされたそうですが、どんなキャンパスライフを送られたのでしょうか?
学部に編入したので、皆年下なんですよ。「ヒョン(兄貴)、ヒョン」と呼ばれながら、まだ軍隊に行く前のクラスメートたちとよく語り合い、韓国の新たな姿を発見していきましたね。テレビや本だけでは分からない、実際の人間を通じてしか知ることのできない韓国人の考え方、特に学生世代の考え方を知ることができたのは貴重でした。
具体的にはどのようなことですか?
日本には、ともすれば「韓国人は反日一辺倒じゃないか」などというステレオタイプ的なイメージがあるように感じます。しかし、彼らは私が日本人だと分かると、自分が日本に対して持っているあらゆる知識を総動員して質問攻めにしてくるんですよ。日本に対して本当に大きな興味や関心を持ってくれている人たちなんだな、と感じましたね。私が日本にいながら抱いていた韓国に対する関心よりも、彼らが抱いてくれている関心の方がはるかに大きいなと感じました。
韓国での業務内容
公報文化院について教えてください。
公報文化院は日本大使館の機関で、大きく分けて3つの事業を柱としています。日本の伝統文化やポップカルチャーを韓国で紹介する文化交流事業、留学やJETプログラム(外国青年招致事業)などを推進する青少年交流事業、そして印刷物やHPなど様々な媒体を通じて日本の社会状況や政府の施策を知らしめていく広報事業です。
院内の施設も充実していますね。
1階には日本の雑誌や書籍などが揃う図書室が、2階には様々な日本関連行事が行われる「シルクギャラリー(展示室)」があります。また3階には講演会やシンポジウム、日本映画上映会などが開催される「ニューセンチュリーホール」、CD・DVD鑑賞も可能な「日本音楽情報センター」などを備えています。日本の最新情報を提供していますので、在住者の方々にもぜひ利用していただければと思います。
シルクギャラリー(2階)
シルクギャラリー(2階)
ニューセンチュリーホール(3階)
ニューセンチュリーホール(3階)
留学相談室(3階)
留学相談室(3階)
日本音楽情報センター(3階)
日本音楽情報センター(3階)
職員の数と職場の雰囲気を教えてください。
日本人職員が院長含め7人、韓国人職員が19人です。職場の雰囲気は、全体的に士気が高いですね。日本人も韓国人も、自分たちが日韓交流の一翼を担っているということにやりがいを見出しながら仕事に取り組んでいて、非常に良い雰囲気で仕事をさせてもらっています。
一日の仕事の流れを教えてください。
朝は9時頃出勤し、9時半から業務がスタートします。週3回ほど定例会議に出席するほか、院長の業務をサポートしたり、院内で動いている様々な案件の総括補佐業務を行ったりしています。18時半が定時ですが、退勤は平均すると大体21時くらいでしょうか。
仕事のやりがいを感じる時はいつですか?
一つの大きな事業を成功裏に終えた時ですね。昨年10月に開催された、「日韓交流おまつり2007 in Seoul」では、前段階から相当な時間と労力を割いて準備に取り組んだだけに、無事に終わった時の達成感は格別のものがありました。また当院で行われる様々な文化行事に来ていただくお客様が、喜んで帰ってくださる姿を見る時にも大変な喜びとやりがいを感じます。
「日韓交流おまつり2007 in Seoul」の様子
「日韓交流おまつり2007 in Seoul」の様子
韓国生活を通して感じたこと
韓国人と仕事をしていてカルチャーショックは感じますか?
当院の韓国人職員は日本的な考え方、行動様式に慣れた方々が多いので、彼らとの関係において日韓の違いを感じることは少ないですね。ただ、韓国側カウンターパート(対応相手)の人たちと接する際には、時々感じます。例えば名刺の扱いに対する意識の違い。先方の名刺が切れていた場合、こちらは次回いただけることを期待してまた会うのですが、言うまでもらえないことが多いですね(笑)。日本と比べてワンポストに留まる期間が短く、肩書がよく変わるからでしょうか。それから、ある日突然、異動・出張されたり、ひどいケースになると退職されたりする人が多いんですよ。しかも、きちんと引継ぎもせずに(笑)。せめて事前に一言欲しいですよね。
では、生活面で文化の違いを感じることは?
「食」に対する認識が大きく違いますね。食べることに対する態度が寛容で、非常に重要視する傾向があると思います。昼食も、日本だと忙しければおにぎりなどで簡単に済ませて、昼休みも引き続き仕事したりするじゃないですか。韓国の人は何があっても食べる時は食べる(笑)。「食」というものに対する重きの置き方が全然違うなと感じます。
食つながりで、お好きな韓国料理は何ですか?
タッカルビ
タッカルビ
プデチゲタッカルビ、この2つは大好きですね。油が多く体に良さそうな感じはしないので、頻繁には食べませんが、たまに食べるとあんなに美味しい料理はないです。プデチゲは中に入っているラーメンが美味しいですね。普段ラーメンはあまり食べませんが、プデチゲだけはラーメンからまず食べます(笑)。
韓国で旅行などには行かれましたか?
家族で仁川(インチョン)群山(クンサン)木浦(モッポ)など地方を旅行しました。実は私、日本統治時代に日本人が建てた日本風建築を探し歩くのが趣味なんですよ。ソウル市内にも何カ所かありますが、最近の開発の波に飲まれてどんどん姿を消しています。その3都市は現在も日本風建築の家が数多く残っていて、街並みを見ていると思わずここは日本かと錯覚してしまうほどなんです。特に路地裏に入ると、自分が子供時代に味わったような雰囲気そのままなんですよ。家が違うと、周りの空気も違うんですね。実に懐かしく、不思議な体験をしてきました。
趣味を兼ねてのご旅行だったんですね。
妻にはオタクだと言われます(笑)。もちろん韓国の方々にとっては、植民地支配の暗い過去を思いだしかねない建物であることは十分承知していますが、個人的な立場から申し上げれば、今後とも末永く残っていてくれれば、と思います。
好きな韓国の歌手はいますか?
実はカラオケに行くのが大好きなんですよ。職場の忘年会で「マイクを持ったら離さないで賞」に選ばれたくらい(笑)。お恥ずかしい限りですが、韓国の歌が大好きです。でもここ数年は忙しくて、新しい歌はまったく知らないんです。だから、いつも研修員時代にヒットしていた歌を歌っては「古い」と笑われています。18番は「クデ サランアネ モムルロ(あなたの愛に包まれて)」という歌なんですが、冷やかし半分でこの歌で「SJC(ソウル・ジャパン・クラブ)日韓カラオケ大会」に出場したら、何と賞までもらってしまって(笑)。そういう意味で実に思い出深い一曲ですね。
好きな韓国の俳優はいますか?
男性だったらソル・ギョングさんですね。舞台俳優出身だけあって、その圧倒的な演技力にはいつも惚れ惚れします。映画「ペパーミントキャンディー」は言うまでもなく、「公共の敵」での鬼気迫る演技も素晴らしかったですね。女性ならキム・ヒエさん。研修員の頃にどっぷりはまったドラマ「嵐の季節」の主演女優さんで、今でもCMやドラマで元気な姿を見かけると、昔の友達に会ったような嬉しい気分になりますね(笑)。
韓国の魅力、今後の予定
富さんにとって、韓国の魅力は何でしょう?
四季がはっきりしているところですね。それぞれの季節がしっかりと自己主張していて、日本以上に四季の移り変わりを肌で感じられます。中でも一番好きなのは秋です。日本よりずっと水色が鮮やかで、雲ひとつない秋の高い空は、国歌にも歌われるだけあって本当に美しいですね。光化門(クァンファムン)の交差点から見る、秋の空を背景とした景福宮(キョンボックン)青瓦台(チョンワデ、大統領府のこと)北岳山(プガッサン)の風景は、私が一番好きな韓国の風景の一つです。
今後の夢や目標についてお聞かせください。
いつまでソウルで勤務させていただけるか分かりませんが、在任中に、より多くの事業に携わり、それらを通じて韓国の皆さんに日本をより正しく、そしてあるがままにお伝えすることで、満足と喜びを与えていきたいですね。今年9月末に開催予定の「日韓交流おまつり」にも、韓国の方々にたくさん来ていただき、日韓のお祭りのコラボレーションを楽しんでもらえればと思います。この「おまつり」を成功させることが、今年最大の目標です。
2008年は「日韓観光交流年」ですね。
今や日韓間には年間500万に達する人々が行き来しています。1日で換算すると約1万3千人がそれぞれの国を行き来している状況ですが、これを更に拡大していく必要があると思います。直接見て触ることが、相互に対する理解を深めていく第一歩だと思うんですよ。もちろん韓流ブームも追い風になっていますが、国内におけるブームだけに留まらず、今後両国の人が、一人でも多く実際に相手の国を知っていくという経験をしていただければと強く思います。
では最後に来韓予定の方、在住者の方へメッセージをお願いします。
韓国という国は、人の顔立ちや街並みなど日本と非常に近いですが、外国であることには変わりありません。ところが似ているあまり、つい全ての面で日本と同様のやり方を求めてしまう傾向があるように感じます。違ったやり方に遭遇したり、期待に満たなかったりして、不満やストレスを感じ、それらを溜め込んでしまうケースも少なくないのが実情でしょう。しかし、その前に「ここは外国なんだ」という事実に立ち返る必要があると思うんですよ。「外国だから、違うのはある程度仕方ないんだ」。このことは、私も常々自分自身に言い聞かせています。
在大韓民国日本国大使館 公報文化院
韓国における日本の文化・情報を紹介する拠点として1971年に開院。多目的ホール、ギャラリー、図書室、日本音楽情報センター、留学・JETプログラム相談室など充実した施設を備え、韓国の人々の日本理解を促進すべく様々な広報文化活動を行っている。
在大韓民国日本国大使館 公報文化院の情報を詳しく見る

・住所:ソウル市 鍾路区(チョンノグ) 雲泥洞(ウンニドン) 114-8
・電話番号:02-765-3011~3
・ホームページ:www.kr.emb-japan.go.jp/
・交通:地下鉄3号線安国(アングッ、Anguk)駅4番出口すぐ
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  最終更新日:08.03.31
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