港まち仁川(インチョン)は沿岸埠頭のほど近く、日本で高級食材として扱われるアンコウを使った料理で有名なうまいもん横丁があります。

「海のフォアグラ」といわれる濃厚な肝が珍味の代名詞ですが、その見た目の悪さから数十年前までは漁獲しても海に捨てられていたアンコウ。韓国語ではアグ(またはアグィ)といいますが、仁川ではムルトムボン(「水にドッボーン」という意味)とも呼ばれます。

韓国では蒸し煮(アグチム)や鍋(アグタン、アグチリ)にして食べることが多いアンコウ。蒸し煮は慶尚南道(キョンサンナムド)・昌原(チャンウォン)市の馬山(マサン)が元祖として有名ですが、鍋は仁川が有名です。

仁川のアンコウ鍋は朝鮮戦争休戦からまだ間もない時代、西海(ソヘ)の海産物が水揚げされる仁川港に集まった労働者が安く簡単に食べられる料理として始められたと言われています。1980年代頃から他の地域に噂が広まる中で、アンコウ専門店が１軒また１軒と集まってできたのが「龍峴洞(ヨンヒョンドン)アンコウ通り」です。

乾燥アンコウではない生アンコウを使った蒸し煮は身が必要以上にかたくならないため食べやすく、プリプリの皮からもみずみずしさが感じられます。水道水ではなく地下水で栽培することによりシャキシャキと育ったモヤシと一緒にほおばると口のなかで様々な食感が広がります。

わさび醤油につけて食べると味の変化も楽しめます。また辛さの調整も可能なので、辛いものが苦手な人は「トル メッケ ヘジュセヨ(あまり辛くしないでください)」と注文時に伝えましょう。