ソウルで出会う世界～ソウル外国人街

ソウルのなかで最も異国的な場所のひとつ梨泰院。在韓米軍関係者を相手にする飲食店や観光客向けのお土産屋が集まる繁華街で観光特区にも指定されており、昼夜を問わず多くの外国人が集まります。人種や言語を越えて文化がクロスオーバーする空間は美しく整っているとは言いがたい街並みとマッチし、どこか高揚した気分をもらたします。

最近になり米軍基地移転の関係で英語圏の人々が商圏から離れ始めると、韓国最初のイスラム寺院があることから、中東アジアの人々やナイジェリア人が流入するようになりました。イスラム寺院周辺には、インターナショナルマートやイスラム教徒が口にできるハラールフードを提供する飲食店、イスラム書店などが立ち並びます。１日に５回行なわれる礼拝時間にどこからともなく集まってくるイスラム教信者を目の当たりにすると、いやがおうでも国境意識が喚起されます。

1985年にフランス人学校が移転して来たことによって在韓フランス人の半数近くが住むようになったといわれるフランス人集住地区、西来(ソレ)マウル。江南(カンナム)エリアの瑞草区(ソチョグ)にあり高級ヴィラと一軒家が混在した閑静な住宅街です。特にフランス風の情緒が際立つわけではありませんが、その抑制的な色彩と清掃の行き届いた街並みは韓国の大衆的な街のそれとは大きく異なります。

縫製業などの工場が集まりソウルを代表する工業団地があった九老(クロ)エリアにあって、ソウルを環状運転する地下鉄２号線とデジタル団地を通る７号線が交差する大林駅。韓国系中国人、いわゆる朝鮮族が集住していて、仁川(インチョン)のチャイナタウンとはまた違った雰囲気が漂います。交通の便がいいだけでなく、古い集合住宅が密集していて家賃も安く、もとは九老工団の周辺に住んでいた朝鮮族の一部が、工団跡地の再開発に伴い大林駅周辺に移り住んできたことがチャイナタウン形成の背景です。

大林駅の周辺で営業している店の70％以上が朝鮮族経営だといわれていて漢字で書かれた看板が目につきます。両替商や中国食品のスーパー、羊の串焼き店などが並ぶ商店街を歩くと確かに中国語が聞こえて来ることも。風景色や街並みは韓国そのものでありながら、屋台で売られる食べ物などがやはり韓国一般のものと異なっているのを見るにつけ、その文化の差が逆説的に大きく感じられます。

立ち並ぶ高級マンションは築年数こそ浅くないものの、漢江(ハンガン)市民公園のすぐ近くにあって住環境は抜群。日本大使館や日本企業の駐在員が多く住み、「リトル・トーキョー」とも呼ばれています。日本の食品スーパーや日本食レストラン、サークル活動などを楽しむ在韓日本人コミュニティがあり日本人が集住しています。

在韓フィリピン人が毎週日曜日に集まるコミュニティ、フィリピン市場。小さな劇場が集まる街として知られる大学路(テハンノ)の最寄駅、地下鉄４号線恵化(へファ)駅付近の恵化ロータリーで開かれます。フィリピンはローマ・カトリックの信者が大半を占めますが、在韓フィリピン人もしかり。大学路にある恵化洞聖堂まで礼拝に通う在韓フィリピン人達は、行き帰りにフィリピン市場に立ち寄り、買い物や飲食をしながら話を分かち合います。

2015年には外国人住民が全人口の約４％、2020年には約５％になることが予想される韓国。「世界人とともに成長し活気あふれる国づくり」をビジョンに掲げ、外国人への社会開放と統合、内外国人の人権尊重と安全確保に試行錯誤しています。グローバルシティ・ソウルに広がる外国人コミュニティで世界に出会い、グローバル化のその先を見通してみてはいかがでしょうか。