ソウル路地裏案内(２) 西村一帯 インタビュー

「アシ古典衣装室」 キム・ポクジャ氏　韓屋でチマチョゴリ(韓服、ハンボッ)屋を営む。昌成洞の洞長も務めている

以前から韓屋で暮らしており、1986年から西村の韓屋に住んでいます。土壁は風の通りがいいですし、オンドルも昔ながらの練炭で、痛む腰に優しい。自然のよさが身近に感じられます。

旧・大統領府「青瓦台(チョンワデ)」があり、建築規制があるのも理由になりますが、街の雰囲気はひと昔前のよう。変化といえば、ずっと許可が下りなかった裏道がようやく広がったことくらいです(笑)。

店も家も古く、不便だという見方もありますが、最近では周りに｢新しいものが増える時代だからこそ、その古さを魅力にして｣と言われていますし、今のような生活を続けるのもいいかなと思います。

｢孝子洞ドットコム(※現「ソル班長のsee:real(シリアル)｣カッソルタン氏(ハンドルネーム、現ソル班長)
生まれて以来西村に在住。自らHP上でその魅力や歴史を発信

西村で長年暮らす中で得た思い出を、人々と共有し、街に返したいと思っていました。またいつの間にか街から古いものが消えて新しいものが入っていることに気づきましたが、これらを残さなければという気持ちもありました。

｢Weird Florida｣という、アメリカの町の住民自身が作った観光本からヒントを得て、自ら街の情報を発信する形のHPを始めました。日本の方にも西村を紹介しようと日本語を勉強して、専門ガイドになろうかと思ったことも(笑)。

カフェ｢mk2｣　イ・ジョンミョン氏　建築写真家。2008年より通義洞でヴィンテージ家具を用いたカフェを営む

西村に初めて来た際はほとんど店もありませんでしたが、穏やかな時間の流れ方に好感をもちました。商売というよりなにか生産的なことがしたいと思っていましたが、ここなら自分が好きなことを始められそうな気がしました。

例えるなら、新しいノートに初めて文字を書きこむときの感覚のように。西村には昔から創作家が住んでいたそうですが、カフェやアトリエが増えているのは、そうした背景ともつながりを感じます。

今後は西村が、三清洞(サムチョンドン)や弘大(ホンデ)の延長ではなく、この場所ならではの愛着を感じられるところになるといいと思います。このカフェも｢現代版舍廊房(サランバン。韓国の家屋で居間を兼ねた客間)｣として、街の人々や文化が集まる空間にしていきたいです。

鍾路区観光事業課　チョン・ヨンス氏　街の地理や歴史に詳しい、西村の水先案内人。地域の観光資源づくりをすすめている

西村はある意味、平凡な庶民の街です。北村(プッチョン)韓屋マウルのように、丁寧に保存された韓屋が固まっているわけではなく、近代芸術家の住宅などの歴史物も、実際に残っているものはあまりありません。

ですが重要なのは、目には見えなくても、この路地にはたくさんのストーリーが隠されているということです。

このところ新しい観光の形が注目されていますが、鍾路区でも徒歩観光の散策道づくりを進めています。迷路のような道を歩きながら、隠れた物語を体験できるような環境を作っているところです。